ダライ・ラマがパリ名誉市民に

〜 強気なフランスに拍手 〜



北京オリンピックの聖火リレーが欧米で末期的様相を呈している事については、既に論評したところだが、この世界的な中国批判に対して、そもそもの根本原因がチベット民族に対する中国の長年の弾圧であることを忘れて、と言うか棚に上げて、まるで自分たちが被害者のごとく、中国では反欧米のデモが荒れ狂っている
中国人は何千年も前から自分たちが世界で一番偉いと信じ、自分たちが占領した土地に住む少数民族を蔑視して徹底的に弾圧し、奴隷のように扱ってきたのだが、それについて何の反省も違和感も抱いていない。

(石材店)「中国に対する非難が爆裂ですね」
(幹事長)「でも、これは中国だけの問題ではないのよね」


似たような状況は世界各地にある。例えばクルド人に対しては、トルコもイラクもイランも徹底的に弾圧を続けてきた。トルコは「トルコという国は多くの民族が融和して暮らす多民族国家だ。トルコ人というのは人種ではなく、トルコに住んでいる国民を指すのだ。クルド人もみんなトルコ人だ。て言うか、クルド人なんて人種はいないのだ」などと強弁しているが、イラクもイランも同じような状況だ。コソボに対するセルビアの態度も同じだったし、逆に強引に独立してしまったコソボ内に住むセルビア人に対するコソボの態度も同じだ。日本も第二次世界大戦なんかに首を突っ込まずに、そのまま朝鮮半島や台湾を占領し続けていれば「みんな大和民族だ」なんて言い続けていただろう。て言うか、たぶん、本当に混血が進んで融合してしまった可能性も高いけど。
民族の優位性についても、ドイツだって日本だって敗戦までは自分たちが一番偉いと言ってたし、どこの国も似たようなものだ。違う点は、多くの国や民族がそういう優越的な意識をとっくに捨て去っているのに対し、中国では今でも中国人が一番偉いという中華思想が強固に残っていることだ。これは実際に中国が偉いからではなく、むしろ中国の後進性に起因するものだ。最近でこそ発展著しいが、それでもなお貧しい人が大半だし、様々な分野で先進国との差がまだまだ大きい状況にあって、自分たちの精神的な大きな拠り所として中華思想を堅持しているのだろう。

(石材店)「妙に中国に理解を示しますねえ」
(幹事長)「彼らの発想も、理解できないことはない、という程度だけどね」


もちろん、だからと言って中国を擁護する訳ではない。野蛮で粗野な中国人の独善的で攻撃的な言動を見るにつけ、本当に腹立たしい。
しかし、日本の政治家は、中国に対して屈辱的な弱腰を続けている。特に、売国奴のチャンピオンとして名高い河野洋平衆院議長なんかは、中国の外相と会談して、恥ずかしげもなく北京オリンピックの成功に期待感を表明し、一方でチベット問題に対しては「中国の主権の範囲で問題が解決されることを望む」なーんてほざき、チベット問題を内政問題として処理したい中国側の意向にベッタリと擦り寄る姿勢を強く打ち出した。全く、国際政治オンチのアホだ。しかし、これは河野に限らず、日本の政治家に広く共通する姿勢だ。
もちろん、朝日新聞を始めとする売国奴マスコミも、中国に対する非難はほとんどしていない。昔から中国ベッタリだったこともあるし、オリンピックを前にして中国当局から睨まれたくないという思惑もあるだろう。

これは日本に限らないことで、多くの国の政治家が似たような日和見主義的言動をとっている。日本が嫌いで中国ベッタリのオーストラリア首相なんかもそうだし、ブッシュ大統領も国内世論を無視して北京オリンピックの開会式に出席すると言い張っている。「政治とスポーツは別」なーんて言ってるのだが、かつてソ連のアフガン侵攻を非難してモスクワオリンピックを先頭を切ってボイコットしたのはアメリカだったんだけどなあ。
威勢が良さそうなヨーロッパの政治家連中も、国内世論を見極めながら口先では中国非難を言いながら、本音では中国と険悪な関係に陥りたくないため、いまいちスッキリした態度を取っていない。近年の高度経済成長を背景に、国際社会における中国の経済的、政治的影響力が大きくなり、欧米諸国は本気で中国と対立できないからだ。これが国際政治の現実だ。

しかし、このような中にあって、中国がチベット騒乱の首謀者として非難を繰り返しているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世に対し、なんとパリ市名誉市民にしたのだ。さすがにこれにはびっくりして、ひっくり返った。
ただでさえパリで聖火リレーが市民の激しい妨害にあい、名誉と自尊心を大いに傷つけられた中国人の間では反フランス世論が爆発し、フランス資本のカルフールに対する非買運動が中国全土で盛り上がっているのだ。それなのに、なんとか事を鎮めようとフランス政府が躍起になっている最中に、あえて火に油を注ぎまくるような事をするなんて、パリ市の肝っ玉にびっくり。もう、完全に中国の猛反発を予想した確信犯だわな。

ダライ・ラマに関しては、世界各国の政治家が、中国に対して対話を促してきたが、ダライ・ラマをチベット独立を画策する反乱分子として強い非難を繰り返してきた中国は聞く耳を持たない。このような中国の頑なな態度を改めさせるために、パリ市長はダライ・ラマを「平和と対話のチャンピオンだ」として、パリ名誉市民の称号を与えたのだ。
なんで、わざわざこのタイミングで中国に喧嘩を売っているのかと言えば、パリ市長の「パリは基本的な権利の尊厳と、自由と、生活を守ろうとするチベットの人々への支援を示したい。パリは連帯している」とする声明を額面どおりに受け取れば、あくまでも純粋に人権擁護の思想からのようだ。パリ市長は、聖火リレーが通過した際も市庁舎に「パリは世界中のどこの問題でも人権を擁護する」と記した横断幕を掲示していた。
さらに、実はダライ・ラマだけでなく、中国で表現の自由などの運動を展開し、今月、懲役3年6月の実刑判決を受けた人権活動家にも名誉市民の称号を贈っている。北京オリンピックの開会式に出るとか出ないとか態度が曖昧なサルコジ首相に対して、非常に明快なパリ市の態度だが、国家レベルでの多くの課題を抱える政府と違って、市レベルでは外交の責任も無いし、直接的な利害も少ないから、好きな事が言えるのだろう。逆に言えば、市民レベルの視線に立たざるを得ないとも言えよう。

もともとフランスと中国は政府レベルでは歴史的に良好な関係を維持してきた。日本が不安視しているEUから中国への武器輸出解禁についても、フランスは熱心だった。フランスは口では平和の尊さを訴えながら、裏では膨大な量の武器を世界中に売りまくる死の商人国家なので、武器をガバガバ買ってくれる中国を狙っているのだ。
しかし、今回の事件で、ますます中国の反フランス感情が高まれば、それに対してフランス国民の反中国感情が高まるのも必至だし、そうなるとフランス政府も中国政府に対して甘い顔はできなくなる。日本にとっては、とても好ましい状況になってきたぞ。
がんばれ、フランス!

(2008.4.24)



〜おしまい〜





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