パチンコ店放火殺人事件

大阪市のパチンコ店が放火され、４人が死亡し、１９人が重軽傷を負った。
犯人は、あっさり警察に出頭してきたが、放火の理由は「人生に嫌気がさしたため、誰でもいいから人を殺したかった」ということで、あまりにも理不尽な大量殺人事件だ。

僕はこれまで、このような事件を防ぐためには、死刑の積極的執行しかないと思っていたが、今回の事件を考えると、死刑が抑止力になるとも思えなくなった。

（石材店）「おっ、幹事長も遂に死刑反対に転向するんですか！？」
（幹事長）「アホな。死刑はバンバン執行してもらわんと社会秩序が崩壊するぞ。ただし、それだけでは駄目かなって感じ」

なぜ死刑が通用しないかと言うと、今回の犯人は最初から死刑を覚悟していたように思えるからだ。犯行直後はいったん逃走しているが、逃亡先の山口県は、広島県出身で福岡県にも住んだことがある犯人としては、なんとなく馴染みのある山陽道を逃げたっていうくらいの事であり、あんまり計画的な行動とは思えない。逃げ切れないと思って出頭したとのことだけど、最初から逃げ切れると考えていた訳ではないだろう。逃げ切るのなら、それなりの準備をしたはずだ。そもそも、動機が「人生に嫌気がさしたため、誰でもいいから人を殺したかった」なんちゅうものなんだから、真剣に逃げても仕方ない。

（石材店）「でも、これまでも、誰でもいいから人を殺したかっただけ、なんていう殺人事件はありましたよ。
　　　　　　　なんで今回は深刻に捉えてるんですか？」
（幹事長）「今回の犯行は、なんとか防げたんじゃないか、って思えてなあ」

確かに、これまでも、理不尽な殺人事件はあった。自分が死刑になりたいから殺人事件をおこした、なんていう、これ以上は有りえないっていうくらい究極の理不尽な殺人事件も、時々発生している。それらの犯人は、程度の差はあるけど、たいていは頭がおかしい。生まれつきのキチガイでなくても、生まれつき性格がゆがんでいた奴が、環境のせいで完全なキチガイになってしまった、とか。
こういう奴らは、もちろん、即刻死刑にしなければならないが、こいつらはキチガイだから、いくら死刑にしたって、新たな事件を防ぐ抑止力にはならない。キチガイどもは、捕まったら死刑になるかもしれない、なんていう事で犯行を止めたりはしない。ただ、他に防ぐ手段があるか、と言えば、何も無い。どんな社会でもキチガイは一定の確率で発生するものであり、防ぎようが無い。防ぎようが無いから悩まない。悩んでも仕方ないから、悩む必要が無い。

しかし、今回の犯行は、キチガイの仕業ではなく、社会環境が原因となっている。
犯人は、広島県で高校を卒業した後、地元の運送会社でトラック運転手などをし、福岡県でも仕事した後、大阪にやってきた。そして２年半前から、大阪の石油製品販売会社でタンクローリーの運転手をしていたのだ。仕事はまじめで、勤務先や同僚からの信頼は厚かった。
ところが、去年あたりから原油高などの影響もあって勤務先の経営が悪化し、運転手の仕事も多いときの１割程度に激減し、資金繰りの悪化から給料の遅配なんかもあって、ついに１年前、自主退職したのだ。ハローワークで仕事を探したりしたけど、折からの世界的な大不況のため、失業保険が切れても仕事が簡単に見つかるはずもない。消費者金融からの借金もふくらみ、経済的に追い詰められた末に、ヤケクソになって放火殺人に及んだということだ。
本人は「仕事も金もなく、人生に嫌気がさした。自分だけが苦しい思いをしており、八つ当たりしたくなった。通り魔みたいに誰でもいいから人を殺したいと思って人が大勢いるところに火をつけた」なんて言ってる。

もちろん、全国には何十万人、何百万人という人が不況で生活に困っているが、ほとんどの人は、こんな身勝手な凶悪犯罪を犯すわけではないから、やはり、あくまでも今回の犯人の特異な性格によるものだろう。
しかし、そうは言っても、自分としては真面目に仕事をしていたのに、会社が潰れかけて給料を貰えなくなり、新しい仕事も全然見つからない状態になったら、ヤケクソになる気持ちも理解できる。僕だって、そういう立場に置かれたら、殺人はしないだろうけど、器物破損くらいはやりそうな気がする。

（石材店）「幹事長なら、爆弾しかけるくらいは、やりかねませんねえ」

なので、なんとかすれば防げたような犯罪のような気がする。このように真面目に働こうという意志があるのに不遇をかこっている人を救済する政策が必要なんじゃないかなあ。

（石材店）「おおう、これまで派遣村とかに非常に冷たい態度を取っていた幹事長とは思えないお言葉！」
（幹事長）「もちろん、派遣村でタダ飯を食い散らかしていた浮浪者どもを擁護する気は更々ないぞ」

派遣村にうじゃうじゃと群がっていたホームレスの大半は、今回の不況とは無関係の、以前からの確信犯的浮浪者どもだ。騙されてはいけない。あいつら自分勝手にやってるだけだ。それから、バブル経済に調子に乗って、「これからの世の中で、人間らしい生き方は、好きな時に好きな仕事ができるフリーターだ！」なんて浅薄に叫んで、まっとうな仕事につこうともせずにフリーターになったアホどもにも、全く同情の余地は無い。世の中、そんな甘いはずはない。完全な自業自得だ。

（幹事長）「そんな自分勝手なバカどもを救済するのだったら、情報化とグローバル化がこれだけ進展したのだから、
　　　　　　　もう好不況の波は無くなり、株式相場が暴落することなんて有りえない、なんて勝手に信じて大損こいた
　　　　　　　僕らも救済してよ」
（石材店）「自分のアホさ加減を宣伝するのは止めてください」

考えの甘かった僕を救済してとは言わないし、アホなフリーターどもを救済すべきとも思わないが、今回の犯人のように、欲深でもなく、自分勝手でもなく、真面目に働いていたのに、自分のせいでない原因で職を失い、経済的に困っている人を助ける必要はあると思う。今回の凶悪犯罪で亡くなった人たちにとっては、犯人の行動はものすごく理不尽だろうけど、犯人にとっては、そこまで追い詰められた社会も理不尽だろう。
もちろん、何度も繰り返すように、だからと言って、このような凶悪犯罪を起こすのはごく限られた人間であり、この犯人も即刻、死刑にしなければならないのは当然だが、このような事件を防ぐためには、なんらかの社会政策が有効なのではないだろうか、と思うのであるよ。みんなのために。

（２００９．７．９）

〜おしまい〜

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