広島・長崎のオリンピック招致

〜 画期的な取り組み 〜



広島市長崎市が、突然、2020年夏季オリンピックの招致を言い出した。なかなか画期的な事だ。

もちろん、この2市の共通項は被爆都市ということだ。その過去を活かして、「平和の祭典」であるオリンピックを招致しようと言うのだ。「広島と長崎なら世界的にアピールできる」ということだが、確かに、それは間違いなく、とても面白い取り組みだと思う。

オリンピックの招致と言えば、つい先日、東京がリオデジャネイロに負けたばかりだ。リオデジャネイロに負けた、と言うか、その前の段階で落伍してマドリードにまで負けたんだから、とにかく惨敗だ。
東京が負けた理由としては、石原都知事が嘆いているように、政治力の問題が大きかった。石原都知事は「誰に聞いても東京のプレゼンテーションは圧倒的に良かったと言う。だけどリオに決まった。そういうIOCの力学をもっと勉強しなければならない」なんて言ってたが、確かに、招致演説や開催計画がどんなに良くても、IOC委員106人に対するロビー活動を展開しなければ票には結びつかない。リオデジャネイロの招致委会長のヌズマン氏はIOC委員でもあり、その肩書を生かして人脈をフル活用したわけだ。
しかし、そんな事は、最初から分かっていた事じゃないか?まさか、そんな事も知らずに100億円以上の税金をつぎ込んでいたというのか?もしそうなら、それこそ政治家として失格だ。政治力がどうのこうのと嘆くのは、自分はアホでした、って宣伝しているようなものだ。

しかし、実態としては政治力の問題だったとしても、普通に素直に考えれば、東京かリオデジャネイロか、って言われれば、やっぱりリオデジャネイロを選ぶんじゃないだろうか。だって、東京は過去、一回、開催した事があるのに比べて、リオデジャネイロは南米大陸初の開催だ。以前のように、あるいは今のアフリカのように、経済的、社会的に開催できないってのなら仕方ないけど、今のブラジルには、なんとか開催するだけの力もあるだろう。だから、二回目の東京よりは南米初のリオデジャネイロの方がアピール度が大きいだろう。
それに、そもそも東京へのオリンピック招致って、一体誰が言い出して誰が熱心にやってたの?って聞かれると、みんな返事に困るくらい、無関心な人が多かったんじゃないか?テレビなんかも騒ぎ出したのは、ほんのつい最近だし、一般市民の盛り上がりは、最後まで乏しかったように思える。東京でも盛り上がってたような雰囲気は無かったぞ。結局は、石原都知事が政治家としての花道を飾りたかっただけだろう。それが証拠に、落選した後だって、悔しがっているのは石原都知事の周辺やJOCの関係者くらいだ。

これまでも、日本のオリンピック招致はうまくいってない。冬季オリンピックは、開催できる国が限られていることもあり、また、そんなに競争率も高くないこともあり、札幌と長野で2回開催されたが、夏季は40年以上前の東京以来、負けが続いている。

1988年大会には、名古屋が立候補し、ソウルとの一騎打ちになった。なぜだか、投票直前には名古屋が圧倒的に優位なんて楽観ムードが漂ったが、実際には韓国側の巻き返しが猛烈で、IOC委員への接待攻勢で情勢は一変し、結局、27対52で大敗した。日本の政治音痴の典型だ。ただ、冷静に考えれば、2回目の日本と、朝鮮半島での初開催というのと比べると、そりゃやっぱりソウルの方が意義がある。それに、この時も、日本では世論は全く盛り上がってなかった。

次に2008年大会の大阪だが、この時は、ソルトレークシティー冬季オリンピック招致をめぐるスキャンダルの反省から、IOCは委員の候補地訪問を禁止するなど、大幅に規制を強化した。これをバカ正直に受け取った大阪は、クリーンな招致に徹してしまい、積極外交の北京なんかと勝負にならなかった。しかも、バカ正直に「ありのまま」の大阪を見せようなんて勘違いして、会場までの輸送で、評価委員を乗せたバスが何度も渋滞に巻き込まれるような大失態を演じた。こんなことしてたんじゃあ、パトカー先導で赤信号を突っ切るような北京に勝てるはずがない。北京なんて、はげ山を緑色のペンキで塗って誤魔化していたくらい熱心にやっていたんだぞ。て言うか、このときは、北京どころか、最初の投票で最低の6票しか得られずに惨敗した
ただ、このときも、誰がどう考えたって、中国で初の開催となる北京の方が、はるかに意義は大きいだろう。

そして、今回の東京だ。政治力の無さは相変わらずだけど、アピールできるような意義が無かったのも事実だ。また、市民の盛り上がりが無かったのも隠しようのない事実だ。

これに対して、広島・長崎の被爆都市における開催ってのは、大いにアピールできる。非常に面白い取り組みだと思う。南米初というリオデジャネイロに負けない大義名分があり、世界的にアピールできるストーリーが作れる。

もちろん、実現性は高いとは言えない。
例えば、いくらアピール度が高くても、政治力が無ければ投票にすら持ち込めないだろうが、東京や大阪でも駄目だったのに、広島や長崎に国際的な政治力があるとは思えない。また、都市の規模も小さいし、経済力も乏しい。現時点では、競技施設も足りなければ宿泊施設も圧倒的に足りない。
しかし、いくら実現性が少なくても、東京や大阪と違い、仮に負けたとしても、招致活動を展開するだけでも、何かしら大いに意義があるように思う。頑張れ、広島・長崎!

(2009.10.12)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ