高速道路4車線化の凍結

〜 現地を無視するな! 〜



無駄な公共事業の整理を目指す民主党が、突然、高速道路4車線化の事業凍結を言い出した。

凍結されるのは、四国横断自動車道の香川県高松市〜徳島県鳴門市のほか、関越道上越線の長野県信濃町〜新潟県上越ジャンクション、東関東道館山線の千葉県木更津南ジャンクション〜富津竹岡、東海北陸道の岐阜県白鳥〜飛騨清見、近畿道紀勢線の和歌山県御坊〜南紀田辺、九州横断道長崎大分線の長崎県長崎〜長崎多良見、の6区間だ。これら6区間は、現在、いずれも暫定2車線で運用されているが、4月に開かれた国土開発幹線自動車道建設会議で4車線化が決定し、補正予算に総事業費3255億円が計上されていた。それが、民主党が政権をとったもんだから、突然の方針転換だ。

政権が交代したんだから、政策が突然、変更になるのは分かる。当り前だ。

(石材店)「おっ、物分りがええじゃないですか」
(幹事長)「基本的には、ね」


そりゃあ、いくら政権が代わったって、それまでの約束が全部反故にされてしまっては、国の信用を失ってしまう。政権が代わったら、それまでの事は知らん顔していいんなら、そんな楽なことはないけど、それじゃあ誰も相手にしてくれなくなる。しかし、だからと言って、政権が交代したのに、前政権からの約束だからというだけの理由で全ての政策がそのまま継続されるとしたら、政権交代の意義が半減してしまう。アメリカだって、ブッシュからオバマに代わったため、ブッシュ政権が進めていた政策が軒並み中止になった。内政問題だけでなく、国際的な政策だって平気でひっくり返すもんだから、日本のようなアメリカの属国はテンテコ舞いだ。

自民党の政策は、古くからの利権によってがんじがらめになっていて、大きな問題が山積していても、抜本的な解決が困難になっていた。それを打破させるために国民は民主党を選んだのだから、自民党政権が決めた事を片っ端からひっくり返したって構わない。というか、そうしなければならない。一般論としては、そうだ。

なので、その象徴として八ツ場ダム建設中止を打ち出したのは、間違ってはいない。中止するより、このまま工事を継続した方が安上がりだ、という反論もあるけど、ま、これは、いわゆる1つの象徴だから。それに、工事を継続した方が安上がりってのも、実は、とても怪しい。現時点ですら、当初の予定費用から工事費が何倍も膨らんでいる。この先、どこまで膨らむか、本当のところは誰も分かってないからだ。

ダムと言えば、先日、白神山地へ遊びに行った時に、津軽ダムというのを見学した。前からある目屋ダムというのが土砂でかなり埋まってしまったので、その目屋ダムのすぐ下流側に巨大な津軽ダムを建設して、目屋ダムごと新しい大きなダム湖の中にすっぽり入れてしまおう、という大胆不敵というか、誠にお粗末な計画だ。
津軽ダムが建設されている白神山地とは、もちろん、ブナの原生林が広がる世界遺産だ。ま、世界遺産に指定された今でこそ、みんなブナの原生林をありがたがっているけど、以前は、その貴重さが理解されてなかったから、スーパー林道でぶち抜こうという計画もあった。いかにも役人が考えそうなことだ。この青秋スーパー林道が反対運動の結果、建設阻止されたおかげで、ブナの原生林が保存され、世界遺産に指定されたのだ。役所の計画を止めたくらいだから、反対運動はすごかったらしく、その声に押された青森県知事が建設中止を決定した。秋田県では反対運動が無かったため、秋田県側では舗装道路が延びてきているんだけど、そこで止まってよかった。そのせいもあって、白神山地の世界遺産登録地域は4分の3が青森県側で、秋田県側は4分の1にすぎない。その青森県側の白神山地に作られているのが津軽ダムだ。
そもそも、なぜ既存の目屋ダムが土砂に埋まってしまったのかと言えば、目屋ダムの上流の白神山地でかなりの森林破壊が起きていて、その結果として土砂が流出してダム湖が埋まっているのだ。てことは、上流の森林破壊が止まないままにダム湖を建設すれば、どんなに大きなダムを作ったって、新しいダム湖が再び土砂で埋まってしまうのは時間の問題だ。そうなると、次はさらに大きなダムを作って大きなダム湖が出来上がり、永遠にそれを繰り返すわけだ。よく、コストと便益を比較して、ダム建設にメリットがある、なんて推進側は言うけれど、それは永久に使えるという事を前提にしている試算だ。実は、2〜30年しかもたない、ってことになれば、巨額の税金を投入するだけのメリットは無いのだ。
で、白神山地について言えば、世界遺産に登録されたことにより、森林破壊は食い止められると思う。そうなれば、逆に、もう新しいダムも不要と言える。

このように、全国で工事が進められているダムは、個別に検討していくと、単に土建業者に仕事を出すだけの目的であることが多い。失業対策とも言えるが、どうせ失業対策するのなら、自然破壊する失業対策じゃなくて、保育園を増やすとか、他にやることはあるだろう。北朝鮮に攻め込んでいってもいいし。

て事で、巨額の公共事業を凍結するという民主党の方針は、必ずしも間違ってはいない
間違っているのは、四国横断自動車道の香川県高松市〜徳島県鳴門市の4車線化工事凍結だ。

(石材店)「やっと出ましたね。妙に物分りがいいと思ってたんですけど、やっぱり総論賛成各論反対ですよね」
(幹事長)「地域あっての日本じゃぞ」


なぜ四国横断自動車道の香川県高松市〜徳島県鳴門市の4車線化工事凍結が間違っているかと言えば、現在、片側1車線のため、渋滞がひどいからだ。渋滞がひどくなったのは、高速道路が休日1000円になってからだ。休日ともなると京阪神を始めとする本州側からおびただしい数の車が淡路島を通って徳島経由で香川県に来るようになったのだ。そのため、片側1車線しかない鳴門〜高松間が恒常的に渋滞するようになったのだ。地球温暖化防止のためと称して高速道路の料金を今の10倍くらいにするなんていう暴挙にでるのなら、4車線化工事は不要だろう。しかし、1000円でさえ渋滞になっているのに、民主党は、さらに高速道路無料化を打ち出しているのだから、それなら4車線化は必須だ。余りにも矛盾している。

て言うか、高松と徳島のような県庁所在地を結ぶ幹線の高速道路が今だに片側1車線しかないってのが、そもそも間違っている。高松〜高知なんて、山をくり抜いて谷に橋を架けて、とんでもない大工事だったろうけど、とっくに4車線化している。それなのに、山も無く平坦な高松〜徳島が今だに片側1車線ってのが、不思議だ。納得できない。
他の関越道やら東海北陸道やら近畿道やら九州横断道なんかは、勝手に想像しちゃうと、あまり交通量が多くなさそうな区間のような気もするけど、少なくとも四国横断自動車道の高松〜徳島は交通量が多い区間だぞ。

(石材店)「地域エゴが爆発してますねえ」
(幹事長)「他の区間の事は知らん。ごめんね。しかし、ダムよりは費用対効果が圧倒的にあると思うぞ」


それに、怒り心頭なのは、必要不可欠な高速道路4車線化が事業凍結されるというのに対し、なんと新幹線については、全く減額されることなく、推進路線一直線だ。これは一体、どうなってるんだっ!?
この理由は簡単だ。民主党には、新幹線の推進派の支持者や議員が多からだ。新幹線建設推進については、なぜかみんな一致団結して「整備新幹線を推進する議員の会」なんてものを結成しており、これには民主党の衆参議員78人が参加している。そして、その顧問は、なんと鳩山首相だ。鳩山バカボンの選挙地盤は北海道新幹線を抱える北海道だ。当然、新幹線建設の凍結なんて言い出せない。
これに比べて、高速道路の4車線化については、声が分散してしまってて、迫力が無い。これじゃあ、新幹線に負けるわなあ。

でも、冷静に考えてみてよ。北海道から新幹線に乗って、どこへ行くと言うのだ?まさか東京まで延々と新幹線で行く人がいるのか。普通、北海道の人なら飛行機を使うだろう。もちろん、北海道から東北へ行くのに新幹線を使う人はいるだろう。その逆もいるだろう。でも、その数は、そんなに大したもんじゃないぞ。



ところで、話はそれるけど、今年の年末年始だけど、12月26日、27日は土日なのに高速道路が1000円にならないらしい。僕はてっきり夏のお盆の時のように、土日でなくても29日あたりからずっと1000円になると思っていたら、逆に年末は土日でも平日扱いとのことだ。その理由は、企業活動が続いている年末の26〜27日を1000円にしちゃうと、激しい渋滞が発生して物流に影響が出る恐れがあるからだそうだ。そりゃそうだ。そんなん分かりきっている。ゴールデンウィークだってお盆休みだってシルバーウィークだって、全国で渋滞の嵐が巻き起こった。そんなん、分かりきったことだ。アホでも分かることだ。
だから、年末は土日でも1000円にしない、ってのは理解できなくない。ところが、それなのに、民主党は1000円どころか高速道路を無料にするなんて言ってるんだ。これは一体どういう事だ?むちゃくちゃ矛盾してないか?

(2009.10.25)



〜おしまい〜





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