スーパーコンピューターの開発凍結

〜 民主党は国家を滅ぼす気が? 〜



政権を獲ったとたん、野党の時に言ってた事と正反対の事ばかりしている民主党だが、その中で、唯一、まともに頑張っているのが無駄な事業の中止。特に、無駄な巨大公共事業の中止だ。政権が発足して早々に八ツ場ダム建設中止を打ち出したのは、この象徴だ。必要性を十分に吟味しないまま、この巨大な公共事業を、とにもかくにも拙速に中止にしたのは、政権の意気込みを示すものだった。中止するより、このまま工事を継続した方が安上がりだ、という反論もあるけど、これは1つの象徴だから拙速でも良いのだ。

ただ、公共事業の中止にも善し悪しがあり、本当に必要なものまで中止にしたのは許されない。何が問題かと言えば、四国横断自動車道の香川県高松市〜徳島県鳴門市の4車線化の凍結だ。この決定は100%間違っている。なぜかと言えば、現在、片側1車線のため、渋滞がひどいからだ。渋滞がひどくなったのは、高速道路が休日1000円になってからだ。休日ともなると京阪神を始めとする本州側からおびただしい数の車が淡路島を通って徳島経由で香川県に来るようになったのだ。そのため、片側1車線しかない鳴門〜高松間が恒常的に渋滞するようになったのだ。1000円でさえ渋滞になっているのに、民主党は、さらに高速道路無料化を打ち出しているのだから、それなら4車線化は必須だ。余りにも矛盾している。て言うか、高松と徳島のような県庁所在地を結ぶ幹線の高速道路が今だに片側1車線しかないってのが、そもそも間違っている。

このように、公共事業の中止は、基本的には大いに推進すべき政策だが、中には本当に必要なものがあるのに、バカみたいに機械的に一律に中止にするのは良くない

これは、今はやりの事業仕分けについても言えるのだ。
事業仕分けは、公衆の面前で予算のムダを洗い直すという触れ込みで、今、世間を大いに賑わわせているが、この容赦ない切り捨て方は、痛快というか、本当に気持ちが良い明快さだ。これを見ていると、いかに今まで無駄が多かったかがよく分かる。無駄というより、役人が税金を食い物にして甘い汁を吸っていたかがよく分かる。

例えば、農道だ。農道ったって、耕耘機が通るような田んぼの間の狭い道じゃない。田園地帯のど真ん中を突っ切る大規模で立派な道路だ。日本中、田舎へ行けばどこにでもある。なんで国道や県道じゃなくて農道なのかと言えば、農林水産省の金で作っているからだ。名目は農業振興だが、実態は、農業とは何の関係もない。ただの立派な道路だ。特別に農家の利用頻度が高いわけでもなければ、農家は農道しか使わない訳でもない。はるか昔は、まだ道路整備が不十分で、農業の近代化にも差し障りがあったため、農道整備事業にも一定の意味があったのだろうけど、今のように、全国津々浦々まで道路が整備され尽くしている状況では、単なる農水省の既得権益というか、農水省の役人と、それに群がる土建屋が税金を食い散らかしているだけの構図だ。で、事業仕分けでは農道整備事業はあっさり切り捨てられた。当然だ。こんな税金の無駄遣いは即刻止めて欲しい。
それから、外務省の在外公館の維持・運営に関する経費も、ひどいものだ。海外に勤務した場合の給料とか外務省の報償費について具体的な数字を挙げて検証が行われたが、国民を愚弄するかのような無駄遣い振りだ。

もちろん、切り捨てられた事業の関係者からは批判が渦巻いている。僕が四国横断自動車道の4車線化凍結に怒っているのと同じ構図だ。ただ、僕は実際に国民と言うか利用者として怒っているのだけど、事業の関係者は、今まで自分たちが吸ってきた甘い汁が吸えなくなるから怒っているケースが大半なので、無視すればいい。
医者の診療報酬についても、開業医と勤務医の収入格差の是正や収入の高い診療科の診療報酬見直しなどの方向性が決定されたことに対して批判しているのは、今まで金儲けに邁進してきた医療関係者だ。

このように、民主党の政策の中では、唯一、基本的には素晴らしい成果を上げている事業仕分けだが、各論で言えば、極めて大きな間違いも犯している。その代表的な間違いが科学技術予算の機械的な切り捨てだ。その象徴がスーパーコンピューターの開発凍結だ。

スーパーコンピューターとしては地球シミュレータが有名で、これは2002年のデビュー時には世界トップの性能だったが、その後、アメリカに抜かれ、今では世界数十位にまで落ちぶれている。これを挽回すべく、現在、新しいスーパーコンピューターが神戸市のポートアイランド地区に建設中だ。第3期科学技術基本計画で国家基幹技術と位置づけられ、2010年度の一部稼働、2012年の完成を目指している。地球規模の大気や海洋の循環、新薬や半導体の設計など、さまざまな分野に使える汎用型で、世界最速の演算性能を持つコンピューターなのだ。で、今回の事業仕分けで開発が凍結されたのが、この新しいスーパーコンピューターだ。

事業仕分けをしている理科オンチが言うには、「なぜ世界一を目指すのか。世界二位でいいじゃないか」なのだが、根本的に間違っている。と言うか、余りにも世間知らずだ。端的に言えばアホだ。
スパコンは米中などとの間で開発競争が激化しており、よほど必死でやらないと世界一なんてなれる訳がない。どれだけ金をかけても、何がなんでも世界一になる、なんて事を言ってるのではない。世界一を目指して一生懸命やったって、世界一になれるかどうかなんて分からない世界だ。「世界二位でいいじゃないか」などとアホな事を言ってるが、世界二位を目指せば世界二位になれるようなものではない。世界一を目指して必死でやって、かなりうまくいってようやく世界二位になれるかどうか、くらいのものだ。オリンピックと一緒で、世界中に世界一を目指している連中がいっぱいいて、その中で一位になれるのは当然ながら1人だけだ。しかし、だからと言って、一位になれなかった人の努力が無駄になる訳ではなく、それぞれ大きな成果を各方面に残すのだ。
そして、スパコンの開発は、先進各国が国の威信をかけて開発にしのぎを削っており、いったん凍結すれば瞬く間に他国に追い抜かれてしまい、二度と追いつくことはできなくなる

理科オンチの事業仕分け人たちは、「巨艦主義のスパコンの必要性を見直せ」なんて言ってるが、スパコンは巨艦主義じゃないんだってば。巨艦主義ってのは、戦艦大和のような時代遅れで身動きの取れない巨大装置だが、スパコンはあらゆる方面で大活躍する柔軟なマシンなのだ。また、「将来生まれる成果を明確にすべきだ」なんてアホな事を言ってるが、そんな近視眼的な頭の悪い考えでは、日本は早晩、没落していくだろう。基礎的な科学というものは、想像も付かなかったような分野で成果が出てくるものだ

このスパコン凍結には、当然ながら、日本中の科学者が怒りの声を上げた。ノーベル化学賞受賞者で理化学研究所理事長の野依良治氏は「科学技術は生命線。コストと将来への投資をごっちゃにするのは見識に欠ける。世界水準をしのぐ科学技術なくして我が国の存在はない。小手先の政策では、国は存続しない」と厳しく批判し、最後は「歴史の法廷に立つ覚悟があって言っているのか」とまで言っている。よっぽど腹が立ったんだろうなあ。
実はスパコン凍結以外にも、日本の国力を駄目にするような科学技術予算の削減が打ち出されている。文系、理系を問わず幅広く研究費を支援する科学研究費補助金や、研究者育成のための科学技術振興調整費など、先端研究を助成する「競争的資金」も削減対象だ。そもそも、日本の研究費は欧米と比べて格段に低く、その中で必死で頑張って何とか研究者が成果を上げているのに、これじゃあ、日本の科学の息の根を止める事になってしまう。

最初に書いたが、事業仕分けは大きな成果を上げている。しかし、こと科学技術予算に限っては、理科オンチのアホどもは、勝手な事をするな。中身が理解できないアホは口を挟むな、と言いたい
民主党は、東京大学工学部を出た鳩山バカボンにしても、東京工業大学理学部を出た菅直人副総理にしても理系なので、もっと科学技術に理解があると期待していたのだけど、こんな事じゃ困るよ。

(2009.11.26)



〜おしまい〜





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