相撲協会の理事に貴乃花が当選

〜 新しい風を期待する 〜



日本相撲協会の役員改選が行われ、定員10人に対して11人が立候補した理事選挙で、元横綱の貴乃花親方が当選した。貴乃花は、破門に近い形で二所ノ関一門を離脱して初出馬したもので、苦戦の予想を覆して当選したものだ。誠に画期的というか快挙だ。

(石材店)「その口調は、当然ながら貴乃花を応援してる訳ですね」
(幹事長)「実は、個人的には、別に貴乃花は好きでもなんでもないんだけどね」


僕が一番好きな力士は、なんと言っても、貴乃花の父親の大関貴ノ花だ。貴ノ花は弱かったけど、名大関だった。兄の初代若乃花のような強さは無かったけど、小さい体で長年、大関で頑張り、その悲壮感漂う土俵は、まさにロマンそものもだった。同じように弱い大関と言っても、千代大海なんかの不甲斐なさとは次元の違う弱さだった。
貴ノ花は、特に人格者という訳でもなかったけど、人間的魅力があったなあ。親方になってからは、息子の若乃花、貴乃花兄弟が揃って横綱になるという快挙を成し遂げたにも関わらず、いまいち彼らの扱いに手際が良くなかったし、奥さんとの関係も微妙だったこともあり、あんまりパッとしなかった。しかし、その総合的な弱さが魅力でもあった。
それに比べて、息子の貴乃花は、芯が強すぎるというか純粋すぎるというか強すぎるというか融通が利かなさすぎるというか偏屈というか冷たいというか怖いというか近寄りがたいというか、ちょっと人間的魅力に乏しい。個人的には付き合いたくないタイプだ。友達が出来にくいタイプだ。

(石材店)「それでも応援するんですか?」
(幹事長)「相撲協会の古い体質を打ち破って欲しいもんな」


これまで理事の選び方は、選挙と言いながら、実質的には5つある各一門内で候補者を事前調整するのが慣例だった。だいたい10票が当選ラインなので、各一門は所属する親方の数で当選者数が決まってくる。そのため、事前に候補者を調整するのだ。それをやらないで候補者が乱立した場合、下手したら票が割れて当選者がいなくなったりするので、事前に調整するのだ。今回も、一門によっては、持ち票から想定される当選確実者数を上回る立候補希望者がいたため、事前に一門内で予備選挙をして候補者を選定したりしている。これは完全な談合の世界だ。こんなんが許されて良いのか?

貴乃花も、所属する二所ノ関一門内での事前調整で、立候補を思いとどまるように説得されたが、角界改革を目指して立候補辞退を受け入れず、あくまでも立候補する態度を示した。そのため、二所ノ関一門から出て行けと言われ、そのまま出て行ったのだ。そして、貴乃花を支持する6人の親方も行動を共にして、破門同然で二所ノ関一門から出た
彼らの多くは、貴乃花の父親の大関貴ノ花が師匠だった二子山部屋で貴乃花と一緒に釜のメシを食った同士だ。これだけの固い結束を生み出した大関貴ノ花は、やはり師匠としても良かったのかもしれない。八百長全盛の大相撲にあって、二子山部屋の力士だけは、絶対に八百長をせず、真剣にやってたもんなあ。

それはともかく、理事に当選するには一門の票が無いと不可能だったので、今回のように一門を離れてまで立候補するという異例の行動に出た場合、当選はおぼつかない。一緒に一門を飛び出した親方が自分を含めて7人いたとは言え、それでも当選ラインの10票には届かない。

とは言え、あと3票だ。貴乃花くらい素晴らしい現役時代の成績を残し、また真摯な態度が評価され、しかも他の候補者に比べて群を抜いて若いということで、多くの若手親方から支持を集めても不思議はない。100人以上いる親方の中から僅か3票が寝返れば当選できる。そう考えれば、当選も不思議ではない。当初は、そういう予想も多かった。
しかし、そういう事態を恐れた各一門の締め付けが異常なほど厳しくなり、身内の7票以外に票が集まる可能性は、選挙が近づくに連れ悲観的になってきた。そのため、行動を共にした6人を含め、悲壮感が漂っていた。ここまで過激な行動をしたからには、当選できなければ、7人全員が相撲協会の除け者になってしまう。

しかし、結果的には、他の一門から寝返った親方が3人も出て、見事、貴乃花は理事に当選したのだ。この3票がどういう意味かは分からない。素直に、貴乃花の改革に期待する若手親方の票なのか、あるいは、そんなのとは無関係に、一門内での事前の候補者調整に不満を持つ親方のテロリズムなのか、それは分からない。
票が流出して落選してしまった大島親方(元大関旭国)は、候補者では最年長だった。なかなか象徴的だが、しかし、大島親方が落選したのは最年長だからではなく、一門内での事前の候補者調整でしこりが残っていたせいだと思われる。
ただ、理由はどうであれ、これまでも一門の締め付けが一部、破綻しかかっている事だけは確かだ。そして、それにより、相撲協会の古い体質が改善されていく可能性が出てきたことが喜ばしい。

もちろん、理事に当選したからと言って、これから思うように改革が実現できる訳ではない。むしろ、これまで以上に、貴乃花には厳しいイバラの道が待っているだろう。10人の理事の中で、積極的に賛同してくれる理事は皆無だ。て言うか、むしろみんな敵のようなものだ。
だがしかし、票を入れた9人の親方だけでなく、貴乃花の方針に共感を覚える若手親方は他にもいるだろう。彼らの声や、また世論を味方にして、どこまで発言し行動できるのかが注目される。

これまで、貴乃花は「改革、改革と言いながら、実際に何をやりたいのか見えてこない」とか「これまでも若手なのに役員待遇という厚遇を与えられながら、相撲協会の仕事を何もやってこなかった」などという批判が多い。ただ、相撲協会の旧態依然とした体質を考えると、体制側から聞こえてくる批判を鵜呑みにすることもできない。
そもそも、日本相撲協会の武蔵川理事長の態度からして呆れかえる。彼は貴乃花の強行立候補に対して激怒したというのだ。選挙ってのは、誰が立候補しようが自由なのに、事前に談合で調整しろと堂々と言うのだ。一連の騒動に対し、「あってはいけないこと。残念だ。理事にふさわしいのならば、一門内でも多くの人が推薦してくれるのではないか。一門の総意があるのだから、先輩の話を聞かなければいけない。改革、改革といったって何をやるわけ?今も変えるべきものは変えている。何でもかんでも変えてはいけない」と述べているが、古い自民党の長老と同じような事を言ってる。あくまでも自分たちの発想の中でしか物事を見ないというか考えていない。こんなじいさん達に改革なんて出来るはずがない。
改革なんて不要だというのなら話は別だ。しかし、これだけ不祥事が頻発し、また上位陣が外国人力士に独占されている現状で、改革が不要なのだろうか。誰が見たって、このままだと日本の国技という地位から滑り落ちていくのは明らかだ。自分たちの世代は逃げ切れると思っているのかもしれないけど、まさに長老政治家と同じ発想で、将来は絶望的だ。

(石材店)「貴乃花は好きでもないけど、旧態依然とした体制に風穴を開ける事を期待している、と?」
(幹事長)「おバカな政策ばかり羅列する幼稚な民主党には、何の成果も期待してないけど、
       自民党の古い体質を打破してくれる事を願って応援するのと同じだわな」
(石材店)「なんだ。しょせんは民主党レベルなんですね」
(幹事長)「失言失言。単に政界に刺激を与えるだけの存在価値しか無い民主党と違って、
       貴乃花には実質的な大変革を期待しております」


(2010.2.2)



〜おしまい〜





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