大相撲の座布団乱舞

〜 座布団の乱舞は不可欠だ 〜



大相撲初場所11日目で10連勝で単独トップだった横綱白鵬が、昨年11月の九州場所に続いて、またも関脇稀勢の里に押し出されて黒星を喫した。九州場所2日目で稀勢の里に敗れたあと続いていた連勝も23で止まった。九州場所では、白鵬は大横綱双葉山の偉大な記録69連勝にあと少しというところまで来ていたのに、稀勢の里に敗れて、連勝を63でストップさせられているが、白鵬としては、2場所連続で稀勢の里に敗れ、苦手をつくってしまったと言えよう。

今回の相撲内容を言えば、立ち合いから攻められっ放しで押し出されたもので、全く白鵬らしくない内容だ。他の力士と取るときの磐石の余裕と言うものが感じられない。風邪をひいているとか、年末年始の過密スケジュールで稽古不足のため動きのキレに精彩をかくとか、色々言われているが、それでも、他の力士に対しては、ここまで10連勝しているのだ。他の力士がよっぽどだらしないのかもしれないが、先場所、連勝を止められた稀勢の里に対しては、精神的な問題というか、過剰に意識しすぎているのではないだろうか。
もちろん、稀勢の里の力も褒め称えねばならない。なんちゅうても、去年3月の大阪場所から今場所までの1年間で白鵬に勝ったのは稀勢の里だけだ。他の力士は一体何をしてるんだ、と言いたくもなるが、稀勢の里が立派なことに変わりはない。ただし、稀勢の里は前日は、引退寸前のボロボロの魁皇に惨敗してるし、あてにならないというか、波が大き過ぎる。これがなかなか昇進できない大きな理由だ。

ところで、今回の大一番の後、当然の事ながら、座布団が乱舞した。当たり前だ。横綱が負けた場合は、基本的に座布団は乱舞するものである。しかも、今場所10連勝中の白鵬が負けたんだ。さらに言えば、先場所3日目から23連勝中の白鵬が負けたんだ。しかも、負けた相手は、先場所、連勝を63でストップさせられた憎き稀勢の里だ。これで座布団が乱舞しなけりゃ、乱舞するときはない。

ところが、先場所、白鵬が稀勢の里に負けて連勝を63でストップさせられた大一番の後は、なんと、座布団が乱舞しなかった。なぜかと言うと、九州場所では、座布団を投げられないように固定してしまったからだ。なので、よっぽど根性ある人が強引に解体しない限り座布団を投げられなくなってしまったのだ。もちろん、そこまで強引な人はいなかったので、せっかくの大一番の番狂わせなのに、座布団が1枚も舞わないという寂しい結果に終わった。寂しいというより、むしろ不気味で異様な光景だった

九州場所で座布団が固定された理由は、土俵の近くに座っている観客に当たって危険だから、ということだ。それと、近年、やたら何でもかんでも座布団を投げる風潮が顰蹙を買っていたのも事実だ。横綱が平幕に負けたりしたら、こら、もう大騒ぎしていいけど、弱い大関が負けただけなのに座布団が飛んだりするのを見ると、かえって興醒めだ。観客のマナーの悪化とも言えるし、それだけふがいない相撲を見せられて観客がイライラしているのかもしれない。座布団投げると気持ち良いだろうから、鬱憤晴らしだろう。

だがしかし、大一番の番狂わせでの座布団の乱舞は、相撲風景の真骨頂であり、大相撲の華であり、必要不可欠な要素ではないだろうか。座布団が乱れ飛ぶと、すかさず「大変危険ですので座布団を投げないでください」なんていう館内放送が流れるが、あれも真剣に言っているというより、儀式の一種だろう。電車に乗ると「優先席付近では携帯電話の電源を切ってください」なんていう放送が流れるが、あれは全く何の科学的根拠も無ければ、実際に実行している人もいないのに、いつまで経ってもダラダラと流し続けている意味不明の不思議な放送だが、似たようなものか。違うか。
いずれにしても、座布団が乱舞することによって、ああ大番狂わせが起きたんだなあ、という雰囲気を満喫できる。ショーの一部なのだ。
そもそも、あんな柔らかい座布団が当たったくらいで怪我はしないだろう。セットした髪は乱れるかもしれないが、高い金出して前の方に座っている人は、相撲観戦の玄人だろうから、座布団が飛んでくるくらいは織り込み済みのはずだ。て言うか、むしろ、それもショーの一部として喜ぶことはあっても、座布団が当たったからと言って怒る人はいないだろう。シーワールドで最前列に座っている観客が水浸しになるのを喜ぶのと同じだ。それより、力士が土俵から転げ落ちてきて下敷きになる方が、はるかに危険だぞ。

なぜ九州場所だけ座布団が固定されたのかは知らない。もしかして、改造が容易な場所から始めて、観客の反応なんかを見ながら拡げていくつもりかもしれない。でも、先場所と今場所とを比べてみると、やっぱり座布団は投げられる方がいい。東京の国技館や大阪や名古屋の座布団が固定されないことを願うぞ

(2011.1.19)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ