大相撲八百長事件

〜 ちょっと安易で露骨すぎ 〜



去年、野球賭博問題で大揺れに揺れた大相撲が、今度は本丸の八百長問題に直撃された。野球賭博問題で警視庁が押収した携帯電話に、八百長についてやり取りしたメールの記録があったのだ。警察から出た情報だけに、もう否定のしようがないわな。

(石材店)「遂に出ましたね」
(幹事長)「大相撲に八百長があるってのは、ちょっとでも大相撲に関心がある人なら、誰でも分かっている事だけどね」


だって「7勝7敗で千秋楽を迎えた力士は必ず勝つ」という法則があるんだから、八百長は絶対に存在する。昔から存在する。どんなに言い訳したって、明らかに存在する。

(石材店)「野球賭博の時も擁護してましたけど、今回も、その口調は、擁護してるんですか?」
(幹事長)「いやいや、賭博と違って、スポーツは真剣勝負であるべきだと思うから、決して擁護はしないぞ。
       て言うか、賭博は真剣勝負だぞ。その賭博の対象が八百長だったら、もう滅茶苦茶やんか。
       真剣勝負のスポーツだからこそ真剣勝負の賭博が成り立つんじゃないか!」
(石材店)「意味不明ですが、八百長は許せない、と?」
(幹事長)「許せないんだけど、仕方ないと言うか、止むを得ないと言うか、根絶は難しいんじゃないかなあ」


NHKの相撲中継のアナウンサーや解説者だって、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士が安易な相撲で勝っても、まともに論評せず、すぐに他の話題に移ろうとする。テレビを見てる我々だって、見なかったフリをする。みんな暗黙の了解だ。
例によって、偽善主義の塊のマスコミは、まあ驚いたびっくりしたわ、てな見え透いたバカバカしいリアクションだし、マスコミにインタビューされた人も、関係者から一般人まで揃いも揃って、まあ驚いたとんでもない呆れた相撲はもう見ない、なんてわざとらしいリアクションだが、こいつら本当のアホか偽善主義者だな。

大相撲に八百長が存在するのは、当然ながら理由がある
今のところ、今回の事件で名前があがった力士は、下位で陥落か昇進に近い微妙な位置の力士が多い。なぜ下位力士が八百長するのかと言えば、十両から幕下に落ちれば、給料が無くなってしまうからだ。十両の給料は103万円もあるが、それが幕下になると一気にゼロになってしまうのだ。力士の給料ってのは、上から横綱が282万円、大関が234万円、三役が169万円、平幕が130万円、十両が103万円と、ここまでは割りとなだらかに差が付いている。これにゼロを1個つけると、社長、副社長、取締役、部長、課長の年収ってとこか。横綱でも平幕の2倍ちょっとか、と思うと、意外に差は小さい。
ところが幕下になると、いきなりゼロだ。これは極端だよ。2場所連続で負け越して大関から関脇に陥落するのは、面子上は辛いだろうけど、給料の面から言えば、十両から幕下に落ちる方が天国から地獄への大問題だ。100万円を超える高給が一気にゼロになるのに加え、十両に昇進すると付け人が付くが、幕下に落ちると、逆に上位力士の付け人をしなければならない。十両だと取組前に塩まきや力水があるし、絹の締め込みで相撲を取ることができるけど、幕下だと黒いマワシで、まことにショボイ。このため、十両下位の力士は、幕下に落ちるのを避けるために必死になる。必死になって稽古を積むのではなく、必死になって八百長する。なので、十両の力士同士が勝敗を調整してお互いに幕下に落ちないようにするのは、ごく普通の発想だ。八百長の相場は、星1つが数十万円のようだから、十両から落ちるのに比べれば安いものだ。
もちろん、十両なんか単なる通過点で、もっと上を目指して驀進していく力士は、この時点では八百長はせず、できるだけ勝ち星を増やそうとするだろうが、みんながみんな、どこまでも上位を目指している訳ではなく、十両の地位を守るのが精いっぱいの力士にとっては、なによりも大事なのは幕下に陥落しないことだ。だから、相手が厳しい星勘定の時に貸しを作り、逆に自分が苦しい時には助けてもらう互助関係が出来上がるのだ
それに、同じ部屋の力士は家族同然だから本割では当たらないことになっているが、他の部屋の力士同士だって、地方巡業を始め常に一緒に行動する大相撲という大家族の一員なんだから、私生活で仲良くなることは珍しくないので、情も絡んでくる。仲良しが困っていれば、助けてあげるのが人情というものだ。

と、まあ、下位力士の八百長の理由を勝手に推測したが、じゃあ上位力士はどうか、と言えば、上位力士があんまり八百長してないのか、それとも上位力士はもっとうまくやっててバレてないだけなのか、分からない。でも、7勝7敗で千秋楽を迎えた大関が絶対に勝つ事を考えれば、上位力士だって八百長の常習犯のはずだ。しかし、千秋楽で大関が当たる相手は、やはり大関が多く、彼らはお互い様の持ちつ持たれつの関係だから、そんな露骨なやり取りをしなくても阿吽の呼吸で星の貸し借りをやっているのだろう。既に勝ち越している大関にとっては、横綱を目指すのでない限り、9勝6敗が8勝7敗になったって、別に痛くも痒くもないが、カド番で7勝8敗になると大関から陥落してしまい大問題だもんな。こういう貸し借りは証拠が残らないから、なかなか発覚しないだろう。
以前から、上位力士でも黒い噂が絶えない人は多い。貴乃花や若乃花がいた二子山部屋は昔から八百長をしないので有名だったが、これは裏を返せば、二子山部屋以外の力士は日常的に八百長をしているという事だ

(幹事長)「僕が昔、大好きだった大関大麒麟なんかは無気力相撲が多かったなあ」
(石材店)「あんまり知らない力士ですけど、八百長やってても好きだったんですか?」
(幹事長)「清濁併せ呑んで、かつ中途半端に弱かったからなあ」


名横綱の誉れが高い千代の富士も八百長の噂が多かった。名横綱で八百長やってなかったと思われるのは北の湖くらいかなあ。今の力士で言えば、稀勢の里はあんまり八百長はやってないような気がする。そうでなけりゃ白鵬に2連勝しながら勝ち星が少ないなんて事にはならないだろう。
上位力士についての八百長の噂は古くから絶えないし、週刊誌なんかでは何度も報道されてきた。しかし、日本相撲協会は、その存在を認めたことはなかった。
最近の訴訟例では、

・2000年に、元小結の板井が日本外国特派員協会の講演で「関脇の曙(その後、横綱)に40万円で僕の方から星を売りにいって、故意に負けた」と発言して、八百長の存在を主張した。これに対し、日本相撲協会は板井に抗議文を送った。

・2007年に、週刊現代が「力士間で八百長の合意や金銭授受があり、協会は放置、黙認していた」と八百長疑惑を報じたのに対し、横綱朝青龍ら力士30人と協会は講談社や記事の筆者に約6億円の賠償などを求めて東京地裁に提訴した。1審は原告が勝訴し、2審も「真実と認めるに足る証拠はない」として計3960万円の賠償を命じ、最高裁は講談社側の上告を棄却して高裁判決が確定した。

・2007年に、週刊現代が、元十両・金親の宮城野親方が「2006年名古屋場所で白鵬が朝青龍に勝った取組は八百長だった」と知人女性に告白した、と報じたのに対し、協会が損害賠償訴訟を起こし、協会の勝訴が確定している。


このように訴訟で協会側が勝訴しているのは、はっきりした証拠が無かったからだ。いくら明らかに八百長だと思われる取り組みでも、証拠が無ければ裁判では勝てない。しかし、今回のは携帯電話のメールに残っていたわけだから、もう、こら否定のしようがないわな。

(幹事長)「携帯電話のメールを使うなんて、やり方が安直というか、露骨すぎだわな。
       神聖な土俵を八百長で汚すのだから、もっと、なんかこう礼儀がいるだろ。
       大関同士の阿吽の呼吸のように、心と心が通じ合ったような。
       現金をやり取りするのであれば、深夜に風呂敷に包んでこっそり訪問するとか、
       もっと真面目に真剣にやってもらわなければ困る!」
(石材店)「お叱りの方向が間違ってますけど」


これまでも、八百長疑惑の批判をかわすため、相撲協会は「故意による無気力相撲懲罰規定」なんてのを施行させて、監察委員会も設置し、故意による無気力相撲の取り締まりに乗り出した。「八百長」っていう言葉は絶対に使わず、「故意による無気力相撲」なんて分かりにくい言葉を使っているが、もちろんこれは八百長以外の何物でもない。協会がどこまで本気かは不明だが、とりあえず、あまりにも露骨な八百長に対しては注意をしてきた。真剣に八百長を根絶させようというより、観客にバレバレになるような、あまりにも露骨な八百長は止めろ、という事かもしれない。もっと上手にやれ、と。あるいは、最近は千秋楽で7勝7敗の力士同士を当てるような取組みもあるから、少しは真剣に改善しようとしているのかもしれない。しかし、今回の事件を見ると、そういう小手先の対応策では八百長を食い止めることが出来ないのは明らかだ。何か決定的な手段を講じなければ八百長の根絶はできない。

でも、根絶させるって言うのは簡単だけど、どうやればいいのだろう
そもそも格闘技に八百長はつきものだ。100%八百長のプロレスなんかは、あくまでもショーであり、もはやスポーツとも言えないし、見る方も承知の上なので、どこからも文句は出ない。普通の新聞のスポーツ欄には載らないし。しかしボクシングになると、微妙だ。対戦相手の選択からして八百長だ。亀田兄弟なんて、露骨なまでに弱い選手を金で呼んできて適当な試合で負けさせて実績を重ねてきたが、相手は全くやる気の無い試合ばかりだった。あれも八百長だ。
格闘技から離れても、例えばサッカーにしても、予選リーグで上位2チームが最終戦で当たり、引き分ければ仲良く揃って決勝トーナメントに進めるけど、どちらかが勝ってしまうと負けたチームは予選リーグで敗退するかもしれない、っていう場合は、阿吽の呼吸で0対0で終わるケースが多い。ヨーロッパのチーム同士の場合は、それが常識だ。ただ、こういうのは見ていても分かる。明らかに手抜きでダラダラしているし、怪我するような過激なスライディングは自制するし。
ボクシングにしてもサッカーにしても、時間が長いから、八百長していると、なんとなく分かってしまう。しかし、個人対個人の対戦で、かつ短時間で勝負がついてしまう相撲の場合、八百長を見破るのは難しい。千代大海なんかヘタだから、バレバレだったけど、あらかじめ取り組みの手順まで決めて八百長したら、なかなか分からないだろうなあ。

(2011.2.3)



〜おしまい〜





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