福島原子力発電所の海水注入中断問題

〜 菅首相は即刻退陣を! 〜



東北地方巨大地震で引き起こされた東京電力福島第1原子力発電所の事故で、原子炉を冷やすための海水注入一時中断されたとして大問題になっている。最初は、そもそも一体なんで問題になっているのか分からなかった。

後から考えると、海水注入の開始は決定的に遅かった。ただし、これは、あくまでも後から好き勝手に言えることだ。原子炉に海水を注入するということは、それで原子炉は二度と使い物にならなくなって、廃炉になるという事だ。1基作るのに何十年もの歳月と何千億円もの大金を注ぎ込んでいる原子力発電所を、そうそう簡単に廃炉にはできない。他に何か手段が無いか考えるのが正常な思考であり、海水注入を即断するのは無理な事だ。なので、結果的に致命的に遅かった東電の判断を咎めるのは酷だろう
で、既に致命的に遅かった海水注入を、1時間ばかり一時中断したからと言って、もはや大した影響は無い。なので、何が問題なのかよく分からなかった。て言うか、分かりたいとも思わなかったので、分かろうとしなかった。巨大地震の発生以来、完全に手抜きの思考停止に陥った新聞は、毎日毎日、地震と原子力発電所の記事ばかりで、もう全然読む気がしないし、国会の動きは、与野党共に震災を利用して党利党略に走るばかりで、もうウンザリだ。なので、原子力安全委員会の委員長が一時中断を進言したとか言ってないとか泥試合をしていても、全く興味は沸かなかった。委員長は「『再臨界の可能性があるから注水はやめた方がいい』とは絶対に言っていない。『再臨界の可能性がゼロではない』という発言は『事実上のゼロ』という意味だ」なんて意味不明の言い訳をしていたけど、その発言だけ取り出しても、普通、意味は分からない。会議の全体の流れの中での発言なのだから、前後も含めて聞かないと、真意は分からない。それなのに独善的なマスコミや党利党略に走る政治家は、発言の一部だけを切り取って都合の言いように解釈するから、追及したって意味ないのだ。これは、今回の事に限らず、何でもそうだ。政治家が講演なんかで、全体の話の流れの中でちょっと口走った一言を、そこだけ大袈裟に捉えて大問題にするマスコミの常套手段だ。

て事で、全く興味も抱いていなかった今回の問題なんだけど、実は海水注入は中断されていなかった、という事実が明るみになって、だいぶ様相が変わってきた。

東京電力の本店サイドからは、首相の意向を汲んで海水注入の中断を指示していたんだけど、現場の発電所長が海水注入を継続した方が安全と判断して指示に従わなかったらしいのだ。本店の指示に反して現場が独自の判断をしていたことになり、事故対応をめぐる連携の悪さというか、内部統制の破綻が浮き彫りになったとも言えるが、現場の事は現場が一番よく分かっており、また権限としても海水注入の指示は発電所長の権限であり、問題ないと思う。この発電所長は現場第一に考える人らしく、本店に対しても堂々と文句を言える強烈なリーダーシップを有する人らしい。今のような緊急事態にあっては、こういう人が現場の所長を務めてないと現場はバラバラになってしまうだろう。貴重な人材だ。
今回の事実発表に当たって、東電は「コミュニケーションの行き違いがあった」としつつ、発電所長の判断については「技術的には妥当だった」としている。発電所長の処分については今後検討するといってるけど、どういう処分があり得るのか分からない。今のような緊急事態にあっては、発電所長を交代させるなんてことは出来ないだろう。

で、結局、今回の問題を整理してみると、一体なにが問題だったのかが分かる。

まず、事故当初には、政府は、「原子炉が使い物にならなくなる」と抵抗する東電に対して、首相が海水注入を促した、なーんて菅首相のリーダーシップを一生懸命アピールしていたのだが、これが全くの嘘だった。海水注入は最終的に東電の判断により開始されていたのだ。で、それを知らなかった菅首相が怒り狂った東電はちゃんと連絡したんだけど、それが伝わらなかったらしい。口頭で言ったのではなく、ファックスで連絡しているので、証拠は残っている。みんなバタバタして連絡が混乱していたのだろう。よくあることだ。
で、菅首相は、自分がリーダーシップを発揮して海水注入を指示したことにしたいのに、東電が勝手に開始していたから怒り狂って、すぐに中断させ、あらためて自分が指示したことにしたかった。要するに、自分が主導権を握って打ち出した事にしたかっただけだ。法律を無視しているうえ安全上の論理も破綻している浜岡原子力発電所停止命令も同じだし、今回の事故と全く何の関係も無い電力会社の発送電分離の構想も同じだし、法律も金融市場の常識も何もかも無視した金融機関への債権放棄要請もそうだし、何でもいいからみんなが驚くような(無茶苦茶な)指示を自分が打ち出して、リーダーシップがあるって事を国民に訴えようとしているだけだ。自分に対する支持率の回復だけを狙った無茶苦茶な政治判断だ。無茶苦茶な指示を受ける方としては、迷惑千万なだけだ。ほんと、もう止めて欲しい。
とにかく、首相が怒り狂って「止めさせろ」って言ったんだから、東電としては中止せざるを得ないので現場に指示した。だが、現場は、中止なんかしたら危ないから、あえて「そんな事はできない」とは言わず、そのまま無視した。「そんなバカな首相の命令なんか従えない」なんて言っても不毛な議論になるだけなので、自分の判断で無視した。どうせ、すぐ再開の指示があるんだから、そのまま黙っていれば分からないと思ったのだろう。その判断は正しかったと思う。すぐに再開の指示も来たし。ただ、後からIAEAの調査なんかが入ってバレそうになったから、仕方なく暴露したんだろう。

今回の問題も、後から何も出てこなければ、首相が指示して海水注入が始まったって事になっていたかもしれない。だからと言って支持率が回復する訳でもないし、誰も褒め称えてくれた訳でもないけど、問題にはならなかっただろう。ところが、後になって海水注入が一時中断していた、とか、やっぱり中断してなかった、とか、色んな情報が出てきたから、不毛なバカ騒ぎに発展した。中断を進言したとか言わなかったとか問題になって振り回された原子力安全委員会の委員長も、いい迷惑だわなあ。
政府は東電に対して「事実を正確に報告してもらわないとわれわれも対応に苦慮する」なんて責任を押しつけてるけど、政府が無茶苦茶な無理難題ばかり言うから、そうなったわけだ。全て政府の自業自得だ

一方、政府は、独断で注入中止要請を無視した発電所長に対しては、「現場判断で注水を続けたことは問題ない。発電所長は信用できる人だ」なんて、しれっと言っている。人気のある発電所長を敵に回すのも得策でないと思っているのだろうが、なんだかなあ。いい加減の極みだよなあ。少なくとも、海水注入の中止が無かったというのは事実だから、誰が指示していたかに関わらず、責任は誰も取らなくて良くなったということなんだろう。でも、そうなのかなあ。足を引っ張ろうとしていたのは事実だもんなあ。それより何より、事故当初に政府がしきりにアピールしていた「『原子炉が使い物にならなくなる』と抵抗する東電に、首相が海水注入を促した」というストーリーが完全に破綻したのは明白になったんだもんなあ。

とにかく、自分の人気取りの事しか考えずに、無茶苦茶な指示ばかり乱発する菅首相は、即刻辞めてもらいたい

(石材店)「浜岡発電所停止命令が出てから完全に反菅首相派になりましたねえ」
(幹事長)「しょうがないよねえ」


今までは、大きな問題も無かったし、1年おきにコロコロと首相が代わり続ける状況は国際的にみっともないし、容認してたんだけど、さすがに国の将来が危うくなるような場当たり内閣では立ち直れなくなってしまう。何の指導力も無かったけど、少なくとも周囲の意見は聞いて判断していた自民党末期の首相達の方がマシだったよなあ。

(2011.5.27)



〜おしまい〜





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