再び臓器売買

〜 せっぱ詰まった患者 〜



腎不全を患った東京の医師が、暴力団組員に1千万円を支払って腎臓の提供者を探してもらい、移植手術を受けようとしていた疑いが強まったとして、警視庁に逮捕された。逮捕されたのは、医師本人と妻と、相手側の暴力団組員らだ。

(石材店)「随分、久しぶりの記事ですねえ。1ヵ月ぶりですよ。特に忙しかった訳でもないし」
(幹事長)「ごめんなさい。ついついサボってました」


臓器移植をめぐる国内の臓器売買事件としては、5年前の宇和島徳洲会病院での腎臓移植事件があるが、今回は暴力団が関与してるところが怖い。

5年前の事件は、重い糖尿病で腎移植が必要だった男性が、金を借りていた女性に「腎臓を売ってくれたら借金を返すうえ、さらに上乗せする」なんて言って臓器売買を持ちかけ、売ってもらっていたものだ。普通、金を貸していた相手に対して「借金を返せないのなら臓器を売れ」て要求するものだと思うが、逆に金を借りていた相手から臓器を売ってもらっていたという極めて不可解な事件ではあったが、一般市民同士の取引だったため、不可解ながらも、話は成立し、無事、手術は行われた。
ただし、その後、金がきちんと支払われなかったため、腎臓の提供者が「約束通り金をくれない」って事を警察に相談しちゃったからバレたのだ。そんな事、警察に相談したら、自分だって臓器売買で捕まっちゃうのに、知らなかったのかなあ。かなりおバカさんかも。バカだからこそ「金を返して欲しければ臓器を売れ」なんていう理不尽な申し出を受け入れたんだろうなあ。

今回は、相談を持ちかけた相手が暴力団だったため、話がややこしくなった。当初、暴力団員に1千万円を支払って腎臓の提供者捜しを依頼し、紹介された人間と虚偽の養子縁組を届け出た。今の日本の法律では、臓器移植は親族間でないと認められていないからだ。5年前の事件も、借金の相手を義妹と偽って手術している。
しかし、今回は相手のタチが悪かった。当初の約束と違い、さらに現金1千万円を要求され、トラブルになったため、実際に手術は行われなかったのだ。相手が暴力団なんだから、そういうトラブルが発生するの仕方ない。て言うか、最初から分かるだろう、って思うけど。暴力団に頼んだりしたら、そんなにスムースにいくわけないだろ、って思わないのか?仮に手術できたとしても、その後も、それをネタに、しつこく恐喝されるのは目に見えているぞ。暴力団にすがったってことは、よっぽどせっぱ詰まっていたのかもしれないけど。

で、この医師は、トラブルになった暴力団関係者のルートはあきらめ、別の暴力団組員に別の提供者を紹介してもらい、その提供者と養子縁組をしたうえで、移植手術を受けたのだ。この組員にも、やはり報酬として1000万円を支払っている。最初の暴力団員との間でトラブルになったのに、それに懲りずに再び別の暴力団員に頼むってのも信じがたい行為だけど、臓器の提供者を探すなんてことは、やっぱり暴力団員くらいにしか相談できないのかも。まあ、よっぽどせっぱ詰まっていたのだろうなあ

で、問題は、この成功した手術が、5年前に臓器売買事件が行われた宇和島徳洲会病院で行われていたということだ。執刀したのは、もちろん、おなじみの万波医師
そして、今回、逮捕された医師の妻は、「仲介役の暴力団員に金銭を支払ってドナーを用意してもらい、養子縁組したことを、宇和島徳洲会病院の執刀医に全て伝えていた」と供述している。つまり、執刀医は臓器売買や養子縁組の偽装を認識していたということになる

(石材店)「幹事長は以前、宇和島徳洲会病院や万波医師を擁護してましたよねえ」
(幹事長)「それどころか、臓器売買自体まで擁護していたぞ」


なんだか妙な話になってきた。
僕が臓器売買を擁護しているのは、そうでもしなくちゃ患者が救われないという現実があるからだ。国内では提供者が少ないから、順番待ってたんじゃあ何十年かかるか分からないのが現実だ。それで海外で臓器移植する人も多いけど、それって、はっきり言って臓器売買だ。国によって色々と法律は異なるけど、実態としては臓器売買だ。そうでなけりゃあ、一体誰が見ず知らずの外国人に臓器を譲ってくれるんだ?形式的には色々な方法が取られているが、実態は明らかな臓器売買だ。
超独善的なマスコミは、とんでもない事が起こったみたいに大騒ぎしているけど、本当に知らなかったとは言わせないぞ。こうやって時々明るみになるのは、トラブルになった時であって、普通はちゃんと取引が成立し、バレないだけで、臓器売買が幅広く行われているんじゃないだろうか。

日本では、年間、1千件程度の生体腎移植が行われていて、そのうち75%は血縁者間で行われており、非血縁者間の移植は25%程度だ。親族でないと駄目なんじゃないか?って思うが、この25%の非血縁者間移植ってのは、大半が夫婦間での移植だ。つまり、非血縁者であっても親族なのだ。夫婦以外の非血縁者間の移植ってのは、非常に少ない。で、その少ない夫婦以外の非血縁者間の移植を行っている数少ない病院が宇和島徳洲会病院なのだ。
なぜ夫婦以外の非血縁者間の移植を行う病院が少ないかと言えば、偽装親族問題とかがあるからだ。また、血縁者間同士なら金銭的なやりとりが無いことも多いだろうけど、夫婦以外の非血縁者間ってなると、関係はかなり薄くなるから、金銭的なやり取りがある可能性も高い。臓器売買なんてレベルではないとしても、お礼のやりとりっていう意味合いで、多少の金銭のやりとりはあるだろう。しかし、そんな事を医者がいちいち疑う必要もなければ、疑ったって本当の事が分かるはずもない。

独善的で商売第一主義のマスコミどもは、「病院側がドナーが親族かどうかの確認を怠った事が原因だ」なんて批判しているが、何も病院は悪いことはしていない。病院側は「ドナーが患者の親族だと偽ったのを信じた」と弁解しているが、それで十分だ。住民票や保険証で確認しろなんていう意見もあるけど、そんな書類くらい、せっぱ詰まった人は簡単に偽造するだろう。

臓器売買が行われる根本的な原因は、本来あるべき脳死による臓器提供が日本では絶対的に不足していることだ。その大きな原因の1つは、いまだに脳死による臓器移植に反対している狂信的な人々がいるからだ。金儲けしか頭にない悪徳弁護士や医者どもが影で煽っているのだが、「脳死は死ではない」とか何とかわめいて、キチガイのように脳死移植に反対している。そのため、腎臓や肝臓の移植は生体からの移植が大半を占めている。その生体間移植が学会の指針によって親族からの提供に限定されると、どうしたって限界があるから、最後の手段として臓器売買が行われてしまう。仕方ないじゃないか。

止むに止まれず行われている事を、闇雲に禁止しようとしたって、本質的な解決にはならない。いくら国内で禁止したって、発展途上国では堂々と行われているため、海外で手術する日本人はいくらでもいる。本質的な解決は、ただ1つ、脳死移植の枠を広げることだけだ。

ま、それはいいとして、5年前の臓器売買事件も、今回の移植も、手術が行われたのが宇和島徳洲会病院であり、執刀したのが万波医師というのは偶然か?もちろん、偶然である訳がない。なにも、宇和島徳洲会病院の万波医師が、臓器売買による移植を専門とする悪徳医師という訳ではない。決して、そうではない。そうではなくて、腎臓移植に極めて積極的に取り組む数少ない医者だからだ。彼は、何百例もの腎臓移植をした腎臓移植のカリスマ的存在なのだ。

彼は、病気と診断されて摘出した腎臓を別の患者に移植していた事も明るみになって大騒ぎになったけど、非血縁者親族間移植と言い、病気腎移植と言い、そういう怪しい手術を積極的に行うのは、多少、怪しくても、苦しんでいる患者を救いたいという気持ちがあるからだろう。臓器売買は駄目だ、病気腎移植は駄目だ、なんて叫ぶだけでは、苦しんでいる患者はいつまで経っても救われない。臓器売買や病気腎移植を禁止するというのは、一見、正しいように聞こえるが、そんなきれい事を言ってみたところで、現実の問題は何一つ解決せず、多くの患者は苦しみながら死んでいくだけだ。

今回の事件では、逮捕された医師の妻は「金銭を支払って偽装養子縁組をして臓器提供してもらったことを病院に全て伝えていた」と供述しているが、宇和島徳洲会病院は「臓器売買の認識はなかった」と主張している。そら、そうだろう。分かっていたとしても、「知ってました」とは口が裂けても言えまい。臓器移植法では、臓器売買の事実を知りながら、臓器の摘出や移植をした場合、5年以下の懲役か500万円以下の罰金を科させられる。
万波医師は「倫理委員会を通った手術について粛々と最善を尽くした」と話しているが、これは真実だろう。彼は、臓器売買だろうが病気腎移植だろうが、とにかく手術して患者を救えばいいんだ、という信念を持って手術しているもんな。

宇和島徳洲会病院は、今回の移植手術の前に倫理委員会を開いており、一部の委員から「今回の移植で対価が支払われた可能性があるのでは」といった指摘があったが、患者と提供者との面談などの結果、「2人の信頼関係が確認できた」てことで、最終的に移植を承認したという。要するに、多少、怪しくても患者を救えるのなら、いいじゃないか、って事だろう。

医学界は、万波医師と敵対関係にあるから、非難の大合唱だが、医学界の方こそ、患者を救おうという気持ちなんか無くて、自分たちの金儲けの事しか考えていない連中が既得権益を守るために組織している集団だ。だから、医学界に属さず、日本一の技術を誇る万波医師の存在は、目の上のたんこぶなのだ。

そして、マスコミも態度も許し難い。マスコミは、患者を救おうとする医者を犯罪者に仕立て上げ、医学界と連動して批判の大合唱をしている。マスコミというのは、何の使命感も持たず、単に商売第一主義だから、何でもかんでも大事件に仕立て上げ、センセーショナルに報道する事によって販売を伸ばそうとしているのだ。
どっちが正しいのか、冷静に考えれば分かる事だが、今回、逮捕された医師のように、暴力団なんかに頼んでトラブルを起こしたりすると、ますます風当たりが強くなり、他の患者が迷惑するよなあ。

(2011.6.27)



〜おしまい〜





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