大陸棚の拡大

〜 まずは、めでたい 〜



日本の大陸棚の拡大申請が国連大陸棚限界委員会に認められた。

申請が認められたのは、日本政府が2008年に大陸棚拡大を申請していた7海域、約74万平方キロメートルのうち4海域で、日本の国土面積の約8割に相当する31万平方キロメートルだから、まあ、そこそこ広い。これで、領海を除いた日本の大陸棚総面積は436万平方キロメートルになるとのことだ。
地図を見ると、今回認められたうちで最も広い四国海盆海域なんて日本の排他的経済水域(EEZ)に囲まれた海域だから、認められても当然てな気がする。

この大陸棚ってのが、どういう意味を持つのかと言えば、国連海洋法条約では、沿岸国は大陸棚の海底とその地下の天然資源の開発について主権的権利を認めると規定しているから、経済的にはメリットがある。

(幹事長)「何にしても、日本の領海みたいなもんが拡大されるんだから、喜ばしいことじゃな」
(石材店)「そもそも日本は大陸じゃないけど、それはええんですね?」
(幹事長)「ここで言う大陸棚って、ちょっと意味が違うみたい」


大陸棚って言うと、海面下にはなっているものの、大陸からの延長みたいに遠浅が続いている範囲っていうイメージだ。海の水が減れば、領土が拡大していくイメージ。国連海洋法条約では、沿岸国の管轄権が及ぶ範囲の一つとして大陸棚というものが定義され、開発権が認められているのだが、その大陸棚とは、沿岸国は基本的に200海里までの海底を大陸棚とすることができるほか、海底の地形・地質が一定条件を満たせば、200海里の外側に大陸棚の限界を設定することが可能である。その条件とは、地形や地質の条件が決められているが、いずれにしても、大陸棚っていう言葉から連想される素朴なイメージとは、ちょっと異なっている。

今回認められた日本の大陸棚では、メタンガスが低温高圧状態で結晶化したメタンハイドレートや、レアメタルの採掘などに期待が集まっている。日本近海に埋蔵されていると期待されているメタンハイドレートは、国内使用量の約100年分のガスに相当する計7.4兆立方メートルに上ると推計されているから、長期的には魅力的な資源だ。ただし、採算性を考えると、実用化はまだまだ先の話ではある。

ところで今回の認定は、経済的なメリットだけでなく、主権的にも大きな意味がある。沖ノ鳥島を起点とした海域が含まれているからだ。
沖ノ鳥島ってのは、「島」とは言っても大部分が水面下にある珊瑚礁で、水面上に見えているのは小さな岩だけだ。満潮時ともなれば水面上に残る岩は2個で、その面積は約10平方メートルだから、うちの庭より狭い。て言うか、僕の部屋よりも狭い。そのままでは人が住むのは不可能だ。
ただ、日本としては最南端の島ということで、広大なEEZの根拠となる島であるから、極めて重要だ。沖ノ鳥島が島と認定されなければこのEEZの根拠が消えるのだ。認定どころか、島が現実に無くなってしまえば、もうどうしようもない。こんな小さな岩なんて、大きな台風がくれば洗い流されてしまう可能性だってある。てことで、日本政府は1989年に、波による侵食を防ぐために600億円を投じてコンクリート工事を実施した。写真で見ると、小さな岩をコンクリートで取り囲んで固めただけなのに、なんで600億円もかかるのか理解に苦しむが、たぶん、周りに島も何も無い太平洋のど真ん中での工事だから、高くつくのかもしれない。

これに対して、中国や韓国は、沖ノ鳥島は岩だと主張している。太平洋側にあるのだから、直接、中国や韓国と領海を争うような位置関係にはないのだが、中国や韓国は、日本がやることには何から何まで文句をつけてくる鬱陶しい国だから仕方ない。
中国なんて、自分とこは、どう見ても中国の海域とは思えないようなフィリピンやベトナムの近海まで自分の領海だと主張して海軍を派遣しているくらいなので、何を言い出しても不思議はないが、さすがに間に日本があるので、沖ノ鳥島を自国の領土だとまでは言ってない。しかし「日本の領土でも無いから、自由に使える」と主張しているのだ。まあ確かに、沖ノ鳥島は、どう見ても島というより小さな岩なので、中国が国連大陸棚限界委員会に対して「沖ノ鳥島は人の居住または経済的生活を維持できない岩」と認定するように求めていたのも理解できないことではない。普通の国なら、そんな嫌がらせはしないけど、中国だったら不思議はない。そして、今回の認定を受けても、中国政府は「沖ノ鳥島は岩にすぎない」とする中国側の立場に変わりがないことを強調し、「日本政府の発表と報道は全く根拠がない。国際法に基づけば排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の基点とはならない」と主張している。

(石材店)「どうします?」
(幹事長)「勝手に遠吠えさせておけばよろしい」
(石材店)「珍しく余裕ですねえ」
(幹事長)「いくらなんでも、フィリピンやベトナムの海域ように海軍を派遣してくることはないやろ」


さて、今回、注目したいのは、実は認定された海域ではなく、認定されなかった海域の方だ。日本政府が申請していた7海域のうち、沖ノ鳥島南方の九州パラオ海嶺南部海域25万平方キロメートル分の海域については先送りとなった。この九州パラオ海嶺南部海域って、これ、日本と言えるのか?地図を見る限り、どう見てもパラオだぞ。パラオをかすめているぞ。まるで中国が軍事力で占拠しているフィリピンの海域と同じような地理関係だぞ。これを日本の水域にしたら、パラオの人は怒らないのか?
どう見ても日本の水域とは認定されそうにないのだが、今回は、却下ではなく、勧告の先送りとなった。てことは、将来、認められる可能性が残っているってことだ。なんで、何の関係も無い中国や韓国がギャアギャア喚いているのに、パラオの人は文句を言わないんだろう?全く無関心なのか?



(石材店)「ところで、またまた1ヶ月ぶりの記事ですけど」
(幹事長)「いやあ、すまんすまん」

4月に3年ぶりに高松に異動で戻ってきて忙しかったうえに、戻ってきてすぐ親族に不幸があり、超多忙を極めていたのだ。今でも、まだ多忙なんだけど、一応、読者に見捨てられるといけないから、慌てて書きました。

(2012.4.30)



〜おしまい〜





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