戦争ジャーナリストの死

〜 過度の同情は無用 〜



政府軍と反体制派の激しい内戦が続くシリアで取材活動をしていた日本人女性ジャーナリストが戦闘に巻き込まれて死亡した。戦闘に巻き込まれてというか、政府系民兵に狙い撃ちされたという情報もあるが、いずれにしても戦場で死亡した。

当然ながらマスコミは大騒ぎだ。同じ業界の仲間だから当然だわな。悲劇のヒロイン扱いだ。しかし、一般市民は勘違いしてはいけない。戦争ジャーナリストは好きで戦場へ行ってるわけであり、ヘタすると死ぬ危険性があることは百も承知で行ってるのだ。なんで、そんな危険を冒してまで行くのかというと「戦争の真実を世界に知らせるため」なんて偉そうな事を言ってるが、我々にとっては確かにそういう意義があるから彼らに金を払っているのだが、彼らの側からすれば、端的に言えば金儲けのためであり、自分の名誉のためである。1つの商売に過ぎない。命を張っているから偉い、とは言えるが、命を張って国を守る兵隊の偉さに比べれば、大したことはない。軍隊は国として必要不可欠な存在だが、戦争ジャーナリストは、そこまでの存在ではない。誰でもなろうと思えばなれるし、運が良ければ一発当てて小金を稼ぐことも出来る。そのうえ、何か偉い仕事をしているようなイメージを、自分に対しても世間に対しても抱かせることができる。なかなか魅力的な職業だ。

(石材店)「なりたいんですか?」
(幹事長)「えっ?なりたくないの?」


誰だって、少しは戦争ジャーナリストに憧れたりするだろう。でも、実際になる人は少ない。世界が平和になったら商売あがったりだけど、世界中から戦争が無くなることは当分は有り得ないだろうから、そこまで心配することはないかもしれない。でも、結構、競争厳しそうだし、そんなにうまい職業でもなさそうだ。戦争には憧れるけど、実際に兵隊になるほどでもない、てのと同じくらいの憧れだ。

今回の事件について、シリア政府は「政府軍側でなく反体制派の武装テロ集団に殺害された」と主張している。これは嘘っぽい気もするけど、本当のところは分からないし、戦争なんだから何があっても不思議でもないし、自分で好きで行ってるんだから何があっても仕方ないことだ。シリア政府は「無責任に行動するジャーナリストはあらゆる困難な事態を想定すべきだ」と語っているが、少なくともこれは真実だ。
なので、同情するのは勝手だが、シリア政府に対して義憤を覚えるのは勘違いも甚だしい

(石材店)「なんとなくシリア政府寄りの印象ですが、今のシリア情勢についてはどう思いますか?」
(幹事長)「ワクワクするような難しい状況よなあ」


基本的に紛争大好き人間なので、ワクワクしているが、どうなるべきかを言うのは難しい。自己中心的で独善的なバカマスコミどもは、民主主義が大事だとして、政権側を批判し、反体制側を応援しているが、そんな単純な話ではない。既に政権が転覆してしまったリビアやエジプトなんかを見れば、アラブ諸国の反体制派が民主的でないことは一目瞭然だ。て言うか、もっとさかのぼれば、イラン革命は王政をひっくり返した民主的革命だが、その後に実現した国は、悪の枢軸であるイスラム国家だ。パーレビ王政の方が遙かに良かった。アフガニスタンだって、ロシアを追い出してイスラム国家になったがために大混乱に陥った。

こういう過去の悪夢があるから、今回のシリア情勢に対して欧米諸国は腰が引けている。シリアは親ロシアで反イスラエルだから、アメリカにとっては友好国とは言い難い。しかし、だからと言って政権が転覆してイスラム国家になったら、さらに悪い事になるかもしれない。日本にとって、北朝鮮が今のままで安定している方が都合が良いのと同じだ。ヘタに民主的になって韓国と合併なんかしたら超ウザイことになる。

てことで、欧米諸国の政府は国民の手前、シリア政権を批判して見せているが、だからと言ってイスラム原理主義者の国が出来ると困るので、本音ではロシアや中国がシリア制裁に反対しているのをホッとしている。イスラム原理主義者の国では、極端に市民の権利が侵害され、女性は社会活動ができなくなり、息苦しい国になる。独裁政権の方が遙かにマシだ。欧米諸国も、それくらいは分かっている。日本のバカマスコミだって、それくらいの事は分かっていると思うのだけど、本当にバカだから、分かってないのかもしれない。

(2012.8.25)



〜おしまい〜





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