田中文部科学相の大学設置不認可

〜 乱立する大学にメスを 〜



野田第3次改造内閣に田中真紀子が文部科学相で入閣したときは、びっくりした。なんで、こんなお騒がせおばちゃんが再び大臣に?って感じ。田中真紀子と言えば、自民党時代に外務大臣として外務官僚とバトルを演じ、大混乱に陥れたお騒がせおばちゃんだ。何も、お騒がせおばちゃんってのが悪い訳ではないが、単にトリッキーな言動によって周囲を混乱させるだけで、そんなに筋の通った正論を言っていた訳ではないから、ちょっとウンザリだった。それが、今度は民主党でも大臣だ。

(石材店)「知名度はあるから、野田首相が人気取りで起用したんでしょうね」
(幹事長)「人気かどうかは知らんが、確かにインパクトはあるな」


それに、ついこないだ防衛大臣になって、あっという間にクビになった夫の田中直紀よりはマシかもしれない

で、さっそくやってくれました。新しい大学の設置にあたって、これまでは大学設置・学校法人審議会が「新設を認める」と答申したら、そのまま自動的に認可されていたのを、田中文科相は突然、政策的判断てことで不認可にしたのだ
法の仕組みからして、審議会答申に大臣は法的に拘束されないんだけど、答申通りに認可されないのは過去30年間で初めてといい、極めて異例な事態だ。

今回、不認可になったのは平成25年度に大学の新設を予定していた秋田公立美術大(秋田市)、札幌保健医療大(札幌市)、岡崎女子大(愛知県岡崎市)の3校だ。3大学はいずれも短大や専門学校からの改組で、申請に不備はなかったんだけど、今回の田中文科相の乱心により来春の開校は不可能となった。
田中文科相は、個々の大学については不認可の具体的理由は言わず、「大学が全国で約800校ある中、大学教育の質がかなり低下しており、就職ができないことにもつながっている」と一般論だけを述べている。つい最近、創造学園大ていう大学を運営する堀越学園に文科省が解散命令を出したことも例に挙げ、「大学新設を安直に認めると、教育の現場が混乱する」と批判し、新設大学の多くが大学としての質を維持しえているのか疑問を呈した上で、「量より質が大事」との持論を展開している。3大学に悪い点があったのではなく、たまたま田中文科相が担当になったタイミングで順番を待っていた3大学が運悪く生け贄になったって訳だ。
田中文科相は、また、審議会の委員29人中22人が学長や教授ら大学関係者で構成されており、内輪の人間だけで決めていることも問題視している。

たまたまタイミングが悪かっただけで血祭りに上げられた3大学は大変だ。既に受験を希望する生徒らを対象に学校説明会などを開催していたし、短大から移行予定だったところは、認可を前提に短大の定員を来年度から減らすことを決めており、経営的にも影響は大きいだろう。ただ、これらは認可を前提に勝手にやっていたことであり、認可されるのが当たり前という出来レースであり、おかしいと言えば、おかしい。それから、大学を作ろうとした事情はよく分からないが、秋田公立美術大なんて、本当に必要な大学だろうか?まさに乱立大学を象徴してるんじゃないか?

1990年代に大学設置基準が甘くなってからというもの、まさに雨後の竹の子のように新設大学や新設学部が林立し、大学とは名ばかりの5流大学、6流大学が全国各地に増殖している。そういう所は、昔からある大学と同じ土俵では戦えないため、安易な実学志向をとって経営学系学部を作ったり、学生の気を引こうとして環境ナントカ部とかやたら流行のネーミングに走ったり、意味不明で中身がカラッぽの学部が増え、一方で産業に結びつかない基礎研究なんかは疎かにされている。まあ、そなな5流大学で基礎研究なんかやったって何の成果も得られないだろうけど。また、そういう大学はまともに研究をしてきた学者ではなく、実業界や政界なんかからの転職組を安易に大学教授として迎え入れてきたし、大学と言うより専門学校か就職予備校の出来損ないみたいなもんだ。もちろん、ずっと大学の中に閉じこもって研究を続けてきた学者の弊害も指摘されており、実業界なんかからの新しい血も必要何だけど、新設大学の教授陣の顔ぶれは、ちょっと安易すぎるだろう。
こういう大学の名に値しない学校にも補助金が支出されていることを考えると、これは放置しておけない問題だ。こんな無駄金のバラマキは早く止めて優れた研究を行っているところに補助金を集中させるべきだ。

また、最近は就職難が大きな問題になっており、大学を出ても就職できない若者が溢れているみたいなマスコミ報道だけど、よく考えてみれば、これは不況のせいでもなければ企業のせいでもなく、単に学生の質の問題だ少子化で子供の数が減少の一途をたどっているにもかかわらず、大学の数は逆にどんどん増えており、大学進学率は50%を超えている。つまり、僕等が学生だった頃は、高校を出てさっさと就職していたような層が今では猫も杓子もアホもバカも大学に入っており、そんな割り算もできないような連中が大企業に就職できないなんて嘆いている訳だ。こら、当たり前だぞ。
こんな意味のない大学進学なんて、国民経済的に損失だ。こんな大学へ行くくらいなら専門学校へ行った方がはるかに有益であり、また、しっかりした高校生は意味のない5流大学なんか行かずに専門学校へ行って、ちゃんとした就職をしている。ヘタに大学なんか行くから妙な勘違いをして大企業に就職しようとして失敗する。これは学生にとっても悲劇だ。

こう考えてくると、お騒がせおばちゃんの田中真紀子の突然の乱心も、問題提議としては大きな意義がある。
関係者の大半は「今の大学粗製乱造の制度は改善が必要だけど、だからと言って突然、今回の3大学を不認可にするのは乱暴すぎる」と言っているが、それは確かにそうなんだけど、これくらい過激な事をやらなきゃ役人がやっている事が変わらないのは確かなのだ。これくらいインパクトのある行動を取らないと、結局は役人に丸め込まれて何の改善もできないのだ。
とにかく、敵はゆとり教育の名のもとに日本人を総白痴化しようと企てた文部科学省なんだから。

(2012.11.2)



〜おしまい〜





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