フランス軍のマリ侵攻

〜 さすがフランス 〜



フランス軍が西アフリカのマリ軍事侵攻した。フランス軍の侵攻は、まずは空爆から始まったが、その後、装甲車等による地上部隊の侵攻も始まり、兵員は2500人に増強される予定だ。

(石材店)「新年早々、最初の記事が国際紛争ですか。好きですねえ」
(幹事長)「いや、ほんま、血湧き肉躍るよなあ」


今回のフランス軍によるマリ侵攻は、暫定政府とイスラム過激派の戦闘が激化しているマリにおいて、過激派の攻勢を阻止するためのものだ。軍事介入はマリのトラオレ暫定大統領の要請に基づいたものであり、フランス対マリの紛争ではなく、マリの反政府勢力に対するフランス軍の支援攻撃だ。

マリは経済状態は世界最低レベルだが、1990年に複数政党制に転換してから政情が安定し、民主化が進んでいる国とみなされていた。ところが、反政府組織であるアザワド民族解放運動(MNLA)が北東部一帯の独立を求めて政府に対する武装活動を活発化させたことから混乱が始まった。
歴史を遡れば、マリは1960年にフランスから独立したんだけど、そもそもアフリカ諸国の国境はヨーロッパ列強が植民地分割の過程で人工的に設けた区画の名残であるから、潜在的に紛争の芽が潜んでいる。特に西アフリカを支配していたフランスは、独立後の西アフリカ各国の力を弱め、独立後もフランスが実質的にコントロールしやすいように意図的に都合良く線引きしたので、民族単位の国境とはなっていないのだ。

(幹事長)「こういう事をするあたりが、さすがはフランスって感じやなあ。ほれぼれするわ」
(石材店)「そうなんですか」
(幹事長)「フランスって平和な文化の国だなんて勘違いしているバカなおねえちゃん達に教えてあげんとな」


MNLAの中心であるトゥアレグ人は、アルジェリアからニジェールにまたがる広範な地域で昔から遊牧で暮らしてきた戦闘的な民族だ。彼らは文化的、歴史的な独自性を訴えて、マリ政府とたびたび武力衝突を繰り返してきたんだけど、マリ政府軍による鎮圧で一部はリビアに逃れ、カダフィ体制のもとでリビア軍に組み込まれていった。カダフィは周辺一帯に自らの勢力圏を広げるため、近隣諸国の反体制派に軍事訓練や物資を提供し続けていたからだ。リビアの内戦時に、カダフィ政権側の軍の主力が外人部隊なので驚いたが、彼らの多くがマリから来たトゥアレグ人だったのだ。

ところが、カダフィ体制が崩壊したため、外人部隊のトゥアレグ人たちはリビア国内に居られなくなり、マリに戻って武装活動を本格化させた。当然ながらマリの大統領は軍に鎮圧を命じたんだけど、マリは厳しい財政状況を反映して軍事予算を圧縮し続けていたため、充分な軍事装備が無かった。そんな状況で鎮圧命令を受けたもんだから、軍部が反発してクーデターを起こした。その結果、政府というか軍は北東部にはほとんど手が回らなくなって、MNLAはイスラム系武装組織のアンサル・ディーンと連携して、北東部でアザワド共和国なんてものを樹立宣言したのだ。もちろん、イスラム政府から独立を図ったキリスト教国の南スーダンなんかとは違って、イスラムテロ国家であるアザワド共和国を承認する国は無い。

さらに、その後も混乱は続く。MNLAはイスラム教徒とは言え宗教色は薄く、民族国家であるのトゥアレグ人国家を志向しているのに対し、アンサル・ディーンはイスラム法に基づくイスラム国家の樹立を求めており、必ずしも方向性が同じな訳ではない。また、アンサル・ディーンはイスラム過激派のイスラム・マグレブのアル・カイダと強い繋がりがあるテロリスト組織だ。そんなことで、最終的に彼らは分裂し、トゥアレグ人勢力を退けたイスラム過激派勢力が北部を掌握した。このため、北部が新たなテロの温床になることを懸念した国連安全保障理事会は、国際部隊による軍事介入を承認したのだ。

アメリカがイラクに侵攻した時には世界中から非難されたが、こういう状況でのフランス軍の侵攻なので、これは大義名分があり、誰からも非難される軍事行動ではない。とは言え、日本だったら絶対にあり得ない軍事侵攻を堂々と行えるフランスに対し、感動を覚える
もちろんフランスは、国際貢献のために軍事侵攻している訳ではない。当たり前だ。あくまでもフランスの国家的な権益を守るために軍事侵攻しているのだ。マリが無政府化してテロの温床となる事態を回避するのが狙いではあるが、それは国際平和を守るためではなく、旧植民地であるマリや周辺国に利権を持つフランスの利益のためだ。アメリカが自国の利益を守るために、て言うか、石油資源を確保するためにイラクに侵攻したのと同じだ。例えば、フランスはマリの隣国ニジェールからウラン原料を輸入しているが、ニジェールの安全保障が脅かされた場合、電力の75%を原子力に依存するフランスの原子力政策に影響が出かねない。また2011年には、同じく旧植民地のコートジボワールの内戦に介入しているが、旧植民地の宗主国としてアフリカでの影響力を保持したい思惑もある。
フランスって、日本でボケーっとしていると、そんなに強いイメージは無い。文化的なイメージばかりで、優しい国のように思われがちだ。しかし、それは大間違いであり、イギリスと共に、核兵器を保有する国連安全保障理事会常任理事国として、アメリカ、ロシア、中国に次ぐ軍事力を持った軍事国家なのだ。サルコジに比べたら平和的なイメージを持つ社会党政権になっても、それは少しも変わるところはない。

日本は、第二次世界大戦の敗戦が大きく尾を引いて、フランスみたいな事を出来る国際情勢ではないから、羨んでも仕方ないことなんだけど、少しずつでもいいから、日本の影響力の保持のために軍事行動をやっていくべきではないか

また、日本のマスコミの偏向報道も糾弾しなければならない。今回のフランスの軍事行動に対して、日本のマスコミは一切、批判的な記事は載せない。それはそれで良い。フランスが実は自国の利益のために軍事介入していることを知らないはずはないだろうけど、結果的にはフランスだけのためではなく、国際平和のためになることだから、批判する必要はない。
しかし、一方、もっと明らかな国際平和への貢献のためであっても、日本が軍事行動を起こそうとすると、日本のマスコミ共は一斉に批判する。日本のマスコミは中国の手先となって日本を引きこもり国家として国際社会の片隅に追いやろうとしているのだろうが、これを許してはならないと思う。

(2013.1.16)



〜おしまい〜





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