鉄道事故の認知症高齢者に損害賠償命令

〜 いくらなんでも厳しいよなあ 〜



認知症高齢者(91歳男性)がはねられて死亡した鉄道事故について、JR東海が遺族に損害賠償を求めていた裁判で、名古屋地裁はJR東海の訴えを認め、遺族に損害賠償を命じた。JR東海としては、この認知症男性が駅の線路に入り、電車にはねられて死亡したため、列車が遅れて損害を被ったというのだ。名古屋地裁は、同居していた妻(当時85歳)には見守りを怠った過失があり、別居していた長男も事実上の監督者にあたるとして、請求全額の約720万円を支払うよう命じたのだ。

(石材店)「高齢者介護に造詣の深い幹事長は、どう思われますか?」
(幹事長)「徘徊老人評論家の私には身につまされる事件であり、あまりに過酷な判決としか言いようがない」


当事者の認知症男性本人は、たぶん民法上の責任無能力者に該当すると思われるので、不法行為責任は負わない。つまり、罪は無い。て言うか、自分は死んでるんだから、自殺でない限り、当然、罪を被せるのは気の毒だ。
では裁判所が言うように家族に責任があるのか、と言えば、まあ、あると言えばあるんだけど、現実問題としては極めて難しい。裁判所は、高齢の妻と、遠方で別居している息子に、見守る義務があったと認定して不法行為責任を認めたのだが、自分も高齢の85歳の妻に認知症の夫の見守り義務を課すのは過酷すぎるんじゃないだろうか。また、別居している息子に見守り義務を求めるのも、現実問題として不可能な無理難題ではないか。

今回の判決には既に多くの批判が寄せられているが、その多くが「認知症患者を24時間監視しろということか」「拘束しなければ無理ではないか」というものであり、私も全く同感だ。このあたり、裁判官はどう考えているんだろう。たぶん、何も考えてないんだろうなあ。それとも、「高齢の両親を遠方にほっておいてけしからん」とでも言うのだろうか。しかし、仮に同居していたとしても、息子が仕事をしている限り24時間監視するなんて不可能だから、結局はどこか施設に入れるしか無いってことだ。認知症高齢者は、ことごとく、どこかに収容しろという事だろうか。

もちろん、鉄道会社の運行に支障が生じたのは事実であり、そのせいで余分なコストが発生したのも事実だ。なので、鉄道会社としては損害賠償したくなる気持ちはあるだろう。しかし、こういうコストは、過去の事故発生確率から予想被害額を適切に算出し、合理的に料金に織り込めばいいのではないだろうか
これは認知症の徘徊老人だけの話ではない。ホームから転落して事故になった場合も同じだ。ちょっと目眩がしてフラフラと転落して事故になった場合も鉄道会社は損害賠償を請求するのだろうか?酔っぱらって落ちた場合はどうするのだろうか?さらに、自殺のように意図的に飛び込んだ場合もある。自殺は多くの場合、鉄道会社は損害賠償を請求するようだが、残された遺族としては、死なれた上に損害賠償だなんて、あまりにも理不尽!!と言いたいだろうなあ。

JR東海が計画している品川と名古屋を結ぶリニアモーターカー建設が動き始めているが、この建設費は9兆円とも言われている。今回の請求額の100万倍以上だ。どう考えても必要とは思えないリニアモーターカーにつぎ込む大金があるんだったら、その100万分の一の請求くらい大目に見てあげたらどうよ?

(2013.10.6)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ