ハイブリッド車

〜 思いのほか面白い 〜



私はハイブリッド車が嫌いだった

(石材店)「ハイブリッド車に限らず、エコ的なものは嫌いですよね」
(幹事長)「本当にエコなものは嫌いじゃないけど、偽エコが許せない」


ハイブリッド車は、もちろん偽エコの代表格だ。何が偽かと言えば、そんなに大してガソリンの節約になる訳ではないからだ。ハイブリッド車は燃費の良さを強調するが、パンフレットに載っている燃費のカタログ値を達成するのは不可能だ。カタログ値は、とっても特殊な条件で、特殊な運転技術を駆使して達成できる燃費なので、一般の人には達成不可能だ。
もちろん、それはハイブリッド車に限った事ではなく、普通の車だってそうだ。うちの家内が乗っているミニバンは、一応、燃費のカタログ値は10数kmだが、実際には6〜7kmだ。高速道路を低速走行すれば10km近く行くこともあるけど、通常は頭にくるほど燃費が悪い。カタログ値なんて嘘ばっかりだ。
だが、ミニバンなんて最初から燃費が悪いのは覚悟しているので、仕方ないか、と諦めもつくが、燃費が売り物のハイブリッド車でも嘘ばっかりだと、さすがに許し難い

(石材店)「でも、カタログ値よりは悪くても、ガソリン車よりは良いでしょ?」
(幹事長)「そうでもないぞ」


もちろん、うちのミニバンよりは良い。はるかに良い。圧倒的に良い。しかし、最近は、普通のガソリン車でも燃費は向上してて、それと比べると、ハイブリッド車が圧倒的に良いってこともない。ハイブリッド車とガソリン車の両方の設定がある車のカタログを見れば、意外なほど差が少ないのに驚く。
その割には価格は高い。普通のガソリンエンジンに加え、大きな電池やらモーターを積み込んでいるから、価格が高くなるのは仕方ないし、場所も取るから室内にしわ寄せがきて、車のデザインにも影響を及ぼす。それだけの犠牲を払ってもメリットが大きければ許容できるが、その割には燃費の良さは大したことないのが腹立たしいのだ。
カタログを見て計算すればすぐ分かるが販売価格の差を10年で取り戻そうと思えば、年間に2万kmくらい走らないといけない。月に1500kmだ。毎日50kmだ。通勤で使うとか、営業で走り回るとかいった使い方でない限り、ガソリン代の節約で販売価格差を取り戻すのは不可能なのだ。

また、信頼性にも疑問がある。プリウスが世に出てから16年になるとは言え、まだまだ改良の余地も多いし、電池の寿命とか故障に不安が拭えない。なにせ、まだまだ開発途上の技術だ。今どきの車は、10年くらい経っても、経年劣化による故障はほとんど無い。10年どころか、たぶん15年や20年くらいまでは大丈夫だろう。でも、電池は不安がある。10年以上も持つとも思えないから、途中で交換が必要になるだろう。となると、仮に15年間のガソリン代節約でようやく購入価格差を取り戻せたとしても、その頃には部品交換なんかで追加出費がかかる。月に1500kmも走っていたら、無傷では済まないだろう。
しかも、複雑なシステムを制御するため電子部品とプログラムが大きなウェイトを占めているから、不具合が発生しやすい。そして、その不具合は機械的なものでないから、一般の修理工場なんかではブラックボックス化しててお手上げだ。

てことで、ハイブリッド車は嘘くさくて嫌いだった。

一方、僕が普段乗っている軽のジープ型4WD車の車検が近づいてきた。15年目の車検だ。15年も乗っているが、特に悪いところはない。15年のうち3年間は豪雪の青森で乗っていたが、何の不具合も無かった。青森から高松まで片道1400kmを往復したことも何回かあったが、特に問題は無かった。あえて言えば、寒冷地では暖房の利きが悪く、青森では寒さで震えながら乗っていたのが欠点だった。
何も悪いところは無いんだけど、今度の車検では部品交換も多くなり、結構、金がかかると脅かされた。それと、軽のくせに燃費が悪く、郊外を走るだけでも12kmが限界で、街中へ行くと、さらに悪くなる。それから、悪いところは無いけど、カーステレオがカセットテープで今では使い物にならないとか、エンジンマフラーを取り付けている金具が壊れたので針金でぶら下げているとか、どうでもいいような不具合は多い。
そういうこともあって、買い換えることにした

で、年末に車屋さんに見に行った。普段、ミニバンでお世話になっている店だ。最近は軽が大流行だが、僕が乗っているようなジープ型4WD車はほとんど無くなっていて、仕方なく、もう少し大きめの4WD車に買い換えることにしたのだが、ちょうど新車が発売されたのだ。その新車というのが、ハイブリッド車と普通のガソリン車の両方のモデルがあったのだ。
ハイブリッド車はガソリン車より30万円以上高い。もちろん燃費のカタログ値は良いが、驚くほどの差は無い。て言うか、差が小さいのに驚いたくらいだ。最近のガソリン車って、燃費が良いんだなあ。て言うか、ハイブリッド車の燃費って大したことないなあ。なので、簡単な計算をしてみると、やはり月に1500km以上は乗らないと10年で元は取れない。週末しか乗らない僕としては、絶対にあり得ない走行距離だ。普通に乗っていれば、せいぜい年間3000kmくらいだ。これだと元を取り返すのに60年もかかる計算になる。絶対に元は取れないのだ。

しかも、4WDにすると、ますます燃費の差が小さくなる。ハイブリッド車もガソリン車も4WDになると燃費は悪くなるが、その落ち込み方がハイブリッド車の方が激しいのだ。なぜか良く分からない。たぶん、ハイブリッド車のカタログ値は、特殊な運転技術で特殊な乗り方をした時にしか達成できないが、4WD車ではそれが難しいのだろう。

てことで、普通のガソリン車の4WD車にしようと思った。ところが、ここで問題が発生する。気に入った色がハイブリッド車にしか設定されていないのだ。

(幹事長)「どゆこと?」
(車屋)「この車種はハイブリッド車が目玉商品なんで、ガソリン車は色が少ないんですよ」


そんなアホな。理不尽!
てことで、悩む。色を妥協してガソリン車の4WD車にするか、気に入った色のハイブリッド車にするか。

(幹事長)「悩みたいんだけど」
(車屋)「あんまり悩んでいると3月末に間に合いませんが」


今、乗っている車の車検が3月末に切れるんだけど、それまでに納車するには、ほぼ即決する必要があるとのことだ。ほんまかいな!?

(幹事長)「今日が新車発売日なのに、早くも何ヶ月も納車待ちになるのか?」
(車屋)「発売日前に既に予約がたくさん入ってるんですよ」


発売日前なんて、まだ試乗車も届いてないのに、早くも予約する人がいるのか?もう信じられない。そんなに人気爆発では決してないマイナーな車だと思うんだけど、新車が発売されるときは、そういうもんらしい。

(幹事長)「でも、ミニバンを買った時は、出たばっかりだったけど、すぐに来たぞ」
(車屋)「それは新車って言っても、モデルチェンジだったからです」


モデルチェンジの場合は、そんなことにならなくても、全くの新車の場合は、結構、事前予約があるらしい。現物も見ないで車を買う人間がいるなんて、信じられないけど。

て事で、急かされて翌日には返事をした。色を優先して、ハイブリッド車にしたのだ
色って重要だ。前の前の車は真っ赤だったが、買うときに車屋さんがしつこく「本当に赤でいいんですか?下取りに出す時に安くなりますよ」なんて言ってた。下取りに出す時は無難な白が高いんだそうだ。だが、しかし、下取り価格を考えて車の色を選ぶなんて貧困な発想は持ち合わせていない。色は大変重要だ。色が変わると、同じ車でも印象が全く異なる。色は絶対に妥協したくなかったので、仕方なくハイブリッド車にしたのだ。ハイブリッド車の場合は、4WD車にすると燃費の良さがほとんど無くなるので、2WD車にした。

(石材店)「おや?4WDじゃなくてもええんですか?」
(幹事長)「スキーとか行く場合は、ミニバンを使うことにしたから」


なので、当初の予定とは大きな軌道修正になり、ハイブリッドの2WD車となった。

で、結論から言えば、ハイブリッド車はなかなか面白い

(石材店)「出た!またまた食わず嫌いだったんですねっ!」
(幹事長)「いやあ、ほんと、その通りやなあ」


ハイブリッド車を徹底的に毛嫌いしていた事はすっかり忘れて、なかなか気に入ってしまった。
何が面白いかと言えば、運転の仕方によるが、ゆっくり動き出すと電池だけで動くから音が静か。そのままゆっくりと加速を続けると、結構な速度まで電池だけで走れる。まるで電気自動車だ。なかなか面白い。

また、運転の仕方によるが、うまく運転すると、かなり燃費は良くなる。カタログ値はあり得ないにしても、20kmは平気でクリアできる。ミニバンの3倍だ。軽の4WD車に比べても2倍近い。これは楽しい。たぶん、今どきの車だと、ハイブリッド車でなくても燃費はだいぶ良いんだろうけど、それでもここまでは良くならないだろう。

意外だったのは、街中で乗っても燃費がそんなに悪くならないことだ。普通の車だと、郊外を走ると燃費は良くても、街中に行くと極端に燃費が悪くなる。ノロノロ走って信号ですぐ停まる、ってのが繰り返されるから、悪くなって当たり前だ。ところがハイブリッド車の場合、低速では電池で走っているし、ブレーキを踏むと充電されるから、街中で走ってもそんなに悪くならないのだ。
逆に郊外で長い上り坂が続くと、電池に充電された電気を途中で使い切ってしまい、メリットが無くなるどころか、モーターやバッテリーの重量が負荷となって燃費が悪くなる。また長い下り坂ではバッテリーが満充電になってしまい、エネルギーを回収できなくなるのでメリットが無くなる。
てことで、普通の車なら燃費が良くなる郊外の道路は必ずしもハイブリッド車にはメリットは大きくなく、むしろ街中のチョイ乗りの方が威力を発揮するのだ

去年の秋に別のメーカーのハイブリッド車を買った友人がいて、彼は通勤で使ってるんだけど、朝は一般道が混雑しているので高速道路を30kmくらい走ってきて、帰りは一般道を走って帰る。そしたら、なんと一般道の方が燃費が良いらしいのだ。て言うか、高速道路を時速100km以上で飛ばすと、すごく燃費が悪くなるらしい。そこまでスピードが上がると、電池だけで走る事ができなくなり、常にエンジンが動いてて、ハイブリッド車のメリットが皆無らしい。驚きだ。

てことで、子供の送り迎えや買い物に車を使う家内にも、できるだけ新しいハイブリッド車を使うようにお願いし、燃費の悪いミニバンには滅多に乗らなくなった。子供はミニバンの方が広いから気持ち良いと言ってるけど、これまで急発進急ブレーキの連続で運転が荒かった家内も燃費を意識し出すようになり、運転が冷静になった。想定外の効果が出てきたぞ。

(2014.3.11)



〜おしまい〜





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