万引き犯の顔写真ネット公開騒動

高額なおもちゃを万引きされた古書店が、犯人らしき男の顔写真をホームページで公開すると予告していた騒ぎは、結局、古書店が警察の要請を受けて顔写真の公開を中止し、その後、犯人が逮捕されて収まった。しかし、今回の事件は、万引きに対する大きな問題提議となった。

事件は、東京都中野区の古書店「まんだらけ」で、売値が２５万円もする高額なブリキ製玩具「鉄人２８号」が万引きされものだ。

（幹事長）「たかがブリキの玩具に２５万円なんてトンでもない値段が付く世界は好きになれないなあ。ロードバイクが買えるぞ」
（石材店）「たかが自転車に２５万円も費やす世界も好きになれませんが」

ま、しかし、誰にも迷惑がかからないのなら好きにやったらいい。しかし、万引きは良くない。
「まんだらけ」は防犯カメラに写っていた犯人らしき男の写真を顔にモザイクをかけて公開しつつ、犯人に返品を呼びかけ、１週間以内に返品されない場合は、モザイクをはずした顔写真をホームページで公開すると予告した。
これに対して「まんだらけ」には電話やメールで連日１００件ほどの賛否が寄せられ、公開に踏み切るかどうかに注目が集まっていた。８割は賛成の意見で、「万引きは商店の経営の根幹に関わるような重大な問題であり、今後の万引き防止のために公開して欲しい」というものであり、一方、２割程度の反対の意見としては、「法律にのっとって対処すべきだ」など批判的だったという。

これに対し、警察は「窃盗容疑での捜査に支障が出る恐れがある」との理由で中止を要請したが、店としては「これまで万引きで被害届を出しても犯人が捕まったためしがない」として、公開を強行する姿勢だった。確かに、普通に考えても、たかが万引きで警察が捜査するとは思えないから、店としては被害届を出しても無力感が残るだけだっただろう。
ただ、騒ぎが大きくなってきたため、警察としても動かざるを得なくなり、そのために店に対して中止を強く要請し、結局、「まんだらけ」は予告していた期日になって、顔写真の公開を取りやめた。ホームページには「警視庁の要請により顔写真の全面公開は中止させて頂きます」という文章を載せた。もしかしたら、公安委員会の監督を受ける古物商の立場も影響して中止したのかもしれない。

こういった経緯があったため、後に引けなくなった警察は、その後、店から提出を受けた画像や店周辺の防犯カメラを解析するなど本格的な捜査に乗り出した。そしたら、なんと、数日後にあっさりと犯人が捕まってしまった。
すぐ近くの別の古物商に、同型の人形を売却していた男がいることが分かり、しかも「まんだらけ」店内の防犯カメラに写った人物とも似ていることが分かった。しかも、この男は売却に際して自分の保険証を提示していたことから、あっさりと捕まってしまったのだ。盗んだ店のすぐ近くの店で身分を明かして売却するなんて、なんとも間抜けな犯人であり、自分から捕まえてくれって言ってるに等しいが、それでも普通なら警察は絶対に捜査はしないだろうから、「まんだらけ」が騒ぎ立てたことが功を奏した訳だ。
ちなみに、犯人は「まんだらけ」が「返さなければ顔写真を公開する」と警告していたことは知っていたが、既に売却した後だったので、返そうにも返せなかったらしい。ちょっと気の毒。

結果的に「まんだらけ」は犯人の顔を公開しないまま事件が解決した訳だが、今回の騒ぎは大きな問題を提議した。すなわち、一般市民が犯人と思われる人の顔写真を公開することの是非だ。

法治国家では、人を罰するときは、警察が捜査をし、裁判所が証拠を見て犯罪事実の有無を認定する。それを一足飛びに市民が勝手にやれば、間違いで罪のない人を罰したり、あるいは軽い罪の人に重すぎる罰を与えたりするケースが出る恐れがある。事実、これまでにも「痴漢にあいましたが、逃げられました。必ず見つけて訴えたいので拡散お願いします」というツイッターの投稿が男の顔写真付きで出回ったことがある。もしこれが勘違いだったとしたら、えらい迷惑だ。

ただ、一方で「犯人がプライバシーで守られるのはおかしい」とか「悪人を追及するのがなぜいけないのか」といった肯定的な意見が少なくない。
そして、上にも書いたが、今回は大騒ぎになったため警察が動いたが、通常は万引きくらいでは警察は絶対に捜査しないので、顔写真公開でもしなければ犯人に復讐する手だては無い。
そして、「万引き」って言うとかわいい犯罪のようなニュアンスになるが、実際には万引きは立派な窃盗だ。気軽に許せるようなものではない。小売業における万引き被害額は、年間で１０００億円近くに達するとのことで、小さな店にとっては死活問題であり、どの店も対応に苦慮している。

てことで、これは非常に難しい問題と言わざるを得ないが、私的な制裁ってのは勘違いによる冤罪の可能性があるので、禁止すべきだと思う。

（石材店）「いつも過激な幹事長とは思えない良識ある態度ですねえ」
（幹事長）「冤罪で痴漢の犯人に仕立て上げられたら怖いからな」

その代わり、万引きに対する刑罰は大幅に強化すべきだと思う。子供の小さな万引きは１回くらい許してあげたらいいと思うが、大人の万引き、しかも高額な万引きは厳罰にすべきだ。万引きは、私的制裁ではなく、公的な厳罰によって抑制するのが良いと思うが。

（２０１４．８．２３）

〜おしまい〜

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