御嶽山噴火

〜 登山は自己責任か 〜



御嶽山が9月27日に突然、噴火して、2週間が経とうとしているが、なおも新たな死者が発見されている。痛ましい限りだ。現時点で確認された死者は55人にのぼるが、まだ方不明者が10人ほどいる。山の事故で一度に50人以上の人が亡くなるなんて前代未聞の大惨事であり、余りにも衝撃的だ。さらに、「登山したけど降りてこない」っていう情報が寄せられている行方不明者は把握しやすいが、誰にも言わずに登っている人もいるだろうから、他にも行方不明者がいるかもしれない。
火山灰が降り積もっても、乾燥したままなら風で吹き飛ばされて遺体が現れるかもしれないが、雨が降ってコンクリートのように固まってしまうと、山の上という探しにくい場所だけに、埋もれた遺体を発見するのは容易ではないだろう。

(石材店)「幹事長って登山するんでしたっけ?」
(幹事長)「登山は好きだぞ。若い頃は槍や穂高にも登っていたし、御嶽山が噴火した4日前は石鎚山に登ってきたぞ」


登山は好きなので、今回の大惨事は人ごとではない。特に、御嶽山は昔から登りたい山だったんだけど、なかなか行く機会が無く、ぜひ近いうちに登りたいと思っていた山なので、非常に衝撃を受けた。亡くなった人は本当に気の毒だし、一方で、当分は御嶽山に登れなくなったことはとても残念だ。


ところで、今回の悲惨な大災害に対し、何でもかんでも誰かのせいにしたがる一部の人たち、あるいは頭の悪い自己中心的で独善的なマスコミから、行政の責任を追及する声が上がっている
彼らが問題視しているのは、気象庁は御嶽山が噴火する少し前に火山性地震の頻発を観測していたにも関わらず、噴火の警告をしなかった事に対してだ。確かに、9月中旬頃に御嶽山の火山性地震が頻発していたらしいが、その後は減少したため、気象庁は警戒レベルを上げなかった。また、火山性地震は頻発していたものの、マグマの活動を示唆する火山性微動などは検知されなかったため、噴火の前兆とまでは言えなかったからだ。
バカなマスコミなんかは、「ほんの微かな予兆であっても警報を出すべきだ」なんて無責任なことを言う。「空振りに終わってもいい」なんて言う。一見、正論のように聞こえるが、ほんの微かな予兆でも警報ばかり出していたら、山なんて登れなくなってしまう。もちろん、山に登るのは個人の勝手なので、ほんの微かな予兆でも用心して登らない人は、登らなければ良い。誰も登山の強制なんてしない。でも一方で、そんな事をいちいち気にしていたら火山国の日本の山は登れなくなってしまうからと言って、あえて自己責任で登る人は登ったら良いと思う。警報を出して登山禁止にするなんて愚挙は止めてもらいたい

そもそも、火山の噴火や地震は予測が難しい。非常に難しい。東北大地震が起きた時も、頭の悪い無責任な人たちや独善的なマスコミは、何かにつけて行政の責任を追及していたが、非常に困難な地震の予測に莫大な無駄金を使うくらいなら、地震が発生した時の体制整備を考えた方が現実的だ。それもハード面ではなく、他の対策を考えた方が良い。例えば、津波に備えるために、莫大なお金をかけて万里の長城のような防波堤を築くくらいなら、はるかに少ないお金で集落ごと集団移転した方が良い場合もあるし、あるいは地震が起きた時に速やかに退避する態勢作りを整備した方が、はるかに現実的だ。
同じように、火山の噴火だって予測は困難なのだから、そんな事に莫大なお金を投じるくらいなら、噴火が起きた時の対応を考えておいた方が現実的だ。今回の噴火について、とても頭の悪いマスコミ記者が「二度と被害を出さないためには、どうすればいいか?」なんていうアホな質問したら、火山学者が「火山には登らないことですね」と回答したらしい。溜飲の下がる正論だ。火山に登る以上は一定のリスクがあるのは当然で、被害を出さないためには登山を禁止する以外に方法なんて無い。しかし、それを言い出したら、交通事故を無くすためには自動車を禁止せねばならなくなるし、アル中撲滅のためには禁酒令を出さなければならなくなるし、痴漢を無くすためには女性にブルカを着せなければならなくなる。完全にイスラム国の世界だ。

そして、地震にしても火山にしても、いくら態勢を整備していたところで、それが万全に機能する保証は無い。というか、絶対に万全には機能しないだろう。それは仕方ないと思う。特に登山は、あくまでも自己責任の世界だ

(石材店)「やっぱり自己責任ですか」
(幹事長)「登山ほど自己責任の行為は少ないぞ」


今まで経験した最も自己責任が強調されるスポーツはスカイダイビングであり、スカイダイビングの事故で死んでも誰も同情してくれないだろう。登山だって似たようなものだ。基本的には登山で死んでも、あまり同情はされないだろう。私もこれまで登山に行って「これは、ヘタしたら死ぬかもしれんぞ」って思った事が何度かある。今回は噴火だけが注目されているが、そもそも登山なんて危険と背中合わせの、とても危険な行為だ。最近は中高年の登山者が多く、おばさん達が仲間内で気楽に登っているのを見るにつけ、登山が持つ本来的な危険性が軽視されているのではないか心配なんだけど、噴火なんか無くても登山は危険だ
なので、結論から言えば、何でもかんでも行政の責任にするのではなく、登山はあくまでも自己責任の行為である。だからこそ、行政は何でもかんでも規制したりするのは止めて欲しい。子供じゃあるまいし、また社会主義国じゃあるまいし、何でもかんでも行政が口を出して規制するのだけは止めてもらいたい。そのためにも、アホなマスコミは何でもかんでも行政の責任にするのは止めてもらいたい
あくまでも登山は、自分の責任で登って楽しみたいと思う。登山が危険なのは百も承知で自己責任で登るのだから、危険なことは禁止する、なんてアホな事はしないで欲しい


ところで、一方、今回の御嶽山の大惨事は「登山者の自業自得だ」という言い方がネットに出ている。登山をしない人たちが言っているようだが、これは違う。これは日本語の使い方が間違っている。自業自得ってのは、悪い行為をした結果、悪い報いを受ける場合に用いる言葉である。今回の大惨事は、登山者は山に登っていただけであり、何も悪い事はしていない。
自分が登る山の状況をロクに調べもせずに登ったんだから仕方ない、なんて言う意見もあるが、上でも述べたように、少し前に火山性地震が頻発していた、なんていう程度の微かな予兆を知っていたとしても、それが噴火に結びつくと考える人は皆無だろうから、仕方ない。
同じ山岳事故でも、山を舐めて不十分な装備で山へ入って遭難しちゃった、ってのなら自業自得と言えるだろうが、今回の噴火は完全な天災であり、人災の要素は皆無だから、自業自得なんて言っちゃあ駄目だ。自己責任と自業自得は全く別ものだ。

(2014.10.10)



〜おしまい〜





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