スーパーボウル出場チーム決定

〜 奇跡的な勝利! 〜



(幹事長)「2月1日に開催されるのは何だ?」
(ピッグ)「そりゃ丸亀マラソンでしょ?」


もちろん、2月1日には丸亀マラソンも開催される。しかし、世界が注目するのは、丸亀マラソンではなく、アメリカンフットボールNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のチャンピオンを決めるスーパーボウルの開催だ。
そして、そのスーパーボウルに出場するチームが決定した
18日に行われたカンファレンス・チャンピオンシップで、NFCカンファレンスは我がシアトル・シーホークスがグリーンベイ・パッカーズに辛勝し、昨年に続くスーパーボウル連覇を目指す
一方、AFCカンファレンスは強豪ニューイングランド・ペイトリオッツがインディアナポリス・コルツに圧勝して3年ぶりのスーパーボウル進出となり、第39回以来の優勝を目指す。
スーパーボウルの連覇というのは難しく、最近では第38回と第39回に連覇したペイトリオッツ以来となる。

結局、NFCカンファレンスもAFCカンファレンスも第1シードのチームが勝ち上がったから、順当と言えば順当なんだけど、圧勝したペイトリオッツに比べ、我がシーホークスが勝ったのは奇跡とも言えるような試合内容だった。

パッカーズとは、今シーズンの開幕戦で一度対戦している。その時は36対16と圧勝したが、これは何の参考にもならない。4ヵ月以上も前のゲームであり、お互いにチームの状態は全く変わっているから、何の参考にもならない。
しかし、試合前の個人的な予想というか期待としては、パッカーズのQBアーロン・ロジャースが体調万全ではないため、楽勝するのでは、というものだった。アーロン・ロジャースは、レギュラーシーズンの最終戦で足を痛め、というか、それ以前に痛めていた足を、さらに悪化させ、1週間前のディビジョナル・プレイオフでも足を引きずっており、かなり状態が悪そうだった。パッカーズは非常に手強い相手だが、アーロン・ロジャースがあんな状態なら、リーグNo.1のディフェンスを誇るシーホークスからは得点は奪えないだろうと期待したのだ。

ところが、なんと、最初の攻撃で、アーロン・ロジャースは足の故障を全く感じさせないプレーで、着実にシーホークス陣内に攻め込んできて、例によってシーホークス側の反則の多発もあって、先取点は確実という状況になった。そして、最後にアーロン・ロジャースがエンドゾーン内に投じたパスはタッチダウン間違いなし、と思われたんだけど、なんとここで、我がシーホークスのディフェンスの神様リチャード・シャーマンが驚異的なジャンプにより華麗なインターセプトをかまし、なんと失点を阻止したのだ。
このビッグプレーで一気に勢いづき、そのまま勝利への道を驀進するかと思われたんだけど、その直後のシーホークスの攻撃で、今度は逆に、あっさりとインターセプトされてしまい、あっという間に攻守逆転と言うか、結局、お互いのインターセプトが無かったのと同じ状況になり、またまた自陣のエンドゾーン前で苦しい守備に。ただ、ここはリーグNo.1のディフェンスが踏ん張り、フィールドゴールの3点に失点をとどめた。

せっかくのビッグプレーのインターセプトを生かせなかったのは悔しいが、僅か3点の失点なので、それは忘れて、これから攻撃だ、と思った瞬間、なんと次の攻撃の起点となるキックオフリターンの時に、リターナーのボールドウィンが信じられないファンブルをやってしまい、またまたターンオーバーでパッカーズの攻撃に。シーホークスのエンドゾーン目前での攻防が続いたが、ここで再びリーグNo.1のディフェンスが踏ん張り、フィールドゴールの3点に失点をとどめた。ここまで情けない展開だが、それでもタッチダウンを許さず、フィールドゴール2つに抑えたから、タッチダウン1つで逆転可能な点差ということで、まだまだこれから、って感じに。
ところが、シーホークスの攻撃が全く機能せず、ランは出ないわ、パスは通らないわ、で、ほとんど進めないまま、たまーに攻撃が回ってきても、あっさりと3&アウトで攻撃権が移ってしまう。こらまずいぞ、なんて思っていたら、第1クォーター終了直前に、遂にアーロン・ロジャースにタッチダウンパスを決められてしまい、13対0になってしまった。

第2クォーターに入っても攻撃は機能せず、反則も多くて、すぐパッカーズに攻撃権が移る。パッカーズは常にシーホークス陣内で攻撃している感じ。なので精神的なプレッシャーも無く、ますます自由奔放にプレーしてくる。なんとかディフェンスが踏ん張るものの、またまたフィールドゴールを決められて16対0となる。
ただ、まだまだ焦る必要はない。相手が前半で16点取ったのなら、こっちだって後半で16点取れる可能性はあるんだから、落ち着いてプレーしていれば良い。それなのに、なぜかQBラッセル・ウィルソンは焦ったのか、いきなりロングパスを投げて、またまたインターセプトされてしまった。
ただ、この後、今度はシーホークスがインターセプトを奪い返し、ここへ来てようやくリンチのランも出てきて、ようやく反撃開始か、と思ったら、エンドゾーンまで18ヤード地点から投げたタッチダウンパスが再びインターセプトされてしまって、結局、前半は16対0で終わってしまった

もちろん、前半に16点取られたんなら、後半に16点取るのは数字の上では可能だ。しかし、今日のシーホークスは、あまりにも攻撃が機能していない。リンチのランも出始め、ウィルソンのパスも通り始めたとはいえ、パッカーズの攻撃の方が機能している。これは、なかなか厳しいなあ、なんて思いつつ後半に突入。
相変わらず攻撃に見せ場が無いままディフェンス陣が踏ん張り、相手の追加点は許さないまま、第3クォーター終盤になって、ようやく相手陣内19ヤードまで攻め込むが、4thダウンに。ギャンブルするには遠すぎるから、普通ならフィールドゴールだ。僅か3点だが、まずは地道に点を返していかなければならない。ところが、なんとここでシーホークスは、フィールドゴールと見せかけて、ハウシュカがボールを蹴らず、ボールのホルダー役のジョン・ライアンがボールを持って走り出し、エンドゾーンに向かってタッチダウンパスを投げ、それが通ってタッチダウンに成功した。こんなトリックプレーはさすがに初めて見た。カレッジフットボールでも見たこと無いプレーだ。

このスペシャルプレイに会場は勝利したかのような盛り上がりで、これで一気に流れはシーホークスに傾いたか、と思われたんだけど、勢いは続かず、攻撃は機能しないし、ファンブルやQBサックも喫して第3クォーターは16対7で終わる。それでも、この点差なら1タッチダウンと1フィールドゴールで追いつける点差なので、まだまだ時間はある、と思っていたら、第4クォーターに入って早々に再びフィールドゴールを決められて19対7となる。こうなると逆転するには2タッチダウンが必要だ。て事は時間との戦いも出てきた。おまけに、なんとシャーマンが左手を負傷してしまう。彼が居なくなると、チーム全体の士気がガタ落ちになるので、彼は歯を食いしばって出場を続けるが、左手は動かない状態だ。

そこまで追い込まれながら、未だに攻撃が機能せず、なんとかリンチのランも出ているんだけど、致命的なパス落球やQBサックで逆転できる兆しが見えない。そして、第4クォーター残り5分ってところで、なんと再びインターセプトをくらってしまい、これで万事休すだ。この残りの時間で2つのタッチダウンを奪わなければならないのだから、普通に考えれば不可能だ。ましてや、攻撃が全く機能していない今日のシーホークスでは完全に不可能だ。パッカーズはゆっくり時間を消費していくだけでいい。予想通り、ダラダラとランだけで時間を消費していくパッカーズに対して、シーホークスは貴重なタイムアウトを使って悪あがきをする。最後に攻撃権が移ってきたが、もう残りは4分足らずだ。この時間で2つのタッチダウンを奪うのは不可能と断言できる。

て事で、もうテレビを見るのを止めようかと思った。虚しいだけだからだ。そこで、一応、テレビはつけたまま他の用事をし始めた。ところが、ところが、ここから奇跡が始まった!
ここまでロクに走れてなかったリンチが、一気に走り抜けて、あわやタッチダウンに。これは足が出ていたとのことで、惜しくも成立しなかったが、その後も攻め続けて、最後はウィルソンが自ら走ってタッチダウン!
19対14となったが、まだ5点差あるからタッチダウンが必要だが、残り時間は僅か2分ちょっと。相手に攻撃権が移るから、普通なら絶体絶命だ。こういうシチュエーションでは、オンサイドキックを蹴るしかないが、オンサイドキックが成功する確率は統計的には25%。シーホークスのキッカーのハウシュカも過去4回中成功は1回だけ。どう考えても厳しい状況だが、なんとここでパッカーズも焦ったのか致命的なファンブルをしてしまい、そのボールをシーホークスのマシューズが確保し、攻撃権が再びシーホークスに。そして、この最後の攻撃で、ようやくシーホークスの攻撃が機能しまくり、順調にパッカーズのエンドゾーンに迫り、最後はリンチが24ヤードを走って楽々のタッチダウンだ!もう奇跡の逆転劇だ。そして、3点差にするために2ポイントコンバージョンを狙い、ウィルソンがあわやQBサックされかけながら驚異的なパスを決め、19対22で3点差を付けて大逆転した。3点差なら、仮にパッカーズがフィールドゴールを決めても同点になるだけだからだ。

ところがところが、ここでまだ1分半程度時間が残っていた。もちろん、シーホークスに時間を消費しながら逆転するなんて神業はできないので仕方なかったのだが、この僅かな時間で、パッカーズも驚異的な粘りを見せ、タイムアウトも駆使しつつ最後はフィールドゴールを決めて22対22の同点になった。後から考えれば、2ポイントコンバージョンが決まってて本当に良かった。あれが無かったら、逆転サヨナラ負けだ。

そして、オーバータイムに突入。最初の攻撃権はコイントスによりシーホークスが獲得した。そして、第4クォーターの勢いを持続して、あっさりとパッカーズ陣内に入る。それでも、攻撃が機能し始めているので、ここは地道にランで着実にエンドゾーンを目指すべきところだ。それなのに、今日、4つもインターセプトされていると言うのに、ウィルソンは無謀にもいきなりエンドゾーンめがけて35ヤードのロングパスを投げ、ここまでインターセプトされまくりで良いところが無かったWRカースが最後の最後でディフェンスの妨害をモノともせず、必死でキャッチし、サヨナラのタッチダウンを奪った
奇跡の勝利だっ!奇跡の逆転劇だっ!!
これで2年連続のスーパーボウル進出決定だっ!!

終盤近くまで攻撃陣が機能せず、4つのインターセプトを含む5つのターンオーバーを喫しながらも逆転勝利できたのは、やはりリーグNo.1のディフェンスの踏ん張りによるところが大きい。あれだけ攻められながらタッチダウンは1つだけで、後はフィールドゴール5本に抑えたのが大きい。
カンファレンス・チャンピオンシップで前半終了時の16対0をひっくり返したのは史上初だし、オーバータイムで決着するのも珍しい。まさに神懸かり的な逆転劇だ。
今シーズンのシーホークスは、序盤はパッとせず、3勝3敗と低迷していたが、その後、調子を取り戻してAFCカンファレンスも第1シードとなった。それでも去年のような圧倒的な強さは見られず、なんだかんだとかろうじて勝ち星を積み重ねてきたって感じだ。なのでスーパーボウルに出られるかどうかも不安だったが、この奇跡の逆転を見ると、このまま一気にスーパーボウル連覇が現実的になってきた

(ピッグ)「あのう、長々と書いてますが、ほとんどの人は関心が無い、というか、意味不明と言うか…」
(幹事長)「それは分かってる。延べ300万人を超える、このホームページの読者のうち、ここまで我慢強く読んでくれたのは君で3人目だ。
       でも、分かっちゃいるけど、書かずにいられないほど感動的なゲームだったのよ」


この時点で、ほとんど誰も読んでないとは思うけど、このゲームほど面白いゲームはこれまで無かったと叫びたい。去年のスーパーボウルでブロンコスを完膚無きまで叩きのめしたゲームは楽しかったけど、何の緊張感も無かった。今回のゲームは、第4クォーター終盤には、もう完全に負けたと諦め、呆然としていたのに、その後、奇跡の逆転劇となったもんだから、興奮のピークに達した。

(ピッグ)「そんなにアメフトって面白いですか?」
(幹事長)「何のスポーツでもそうだけど、贔屓のチームがあったら面白いぞ」


私がシーホークスのファンになったのは、かつてシアトルに住んでいたからだけど、その頃のシーホークスは基本的に弱く、3年連続で地区最下位ってこともあった。シアトルのチームは、アメフトのシーホークスも野球のシアトル・マリナーズも弱かった。それよりプレーオフ進出の常連だったバスケットボールのシアトル・スーパーソニックスの方が人気があった。
しかし、2000年代に入ってからはシーホークスは2004年からの4年連続で地区優勝したのを始め、強くなり、2005年にはNFCで優勝して初めてスーパーボウルに進出した。そして、去年、遂にスーパーボウルを制して全米一になったのだ。

アメフトは面白い。ルールが分かりにくいっていう人もいるが、細かいルールはややこしいが、あんまり気にする事はない。特に反則は非常に微妙で、審判のさじ加減的な要素が強いが、それは審判に任せておけばいいのであって、基本的なルールはとても単純で分かりやすい。それよりも戦術が複雑なので、見れば見るほど奥が深くて面白くなるのだ。
こんなに面白いスポーツなので、アメリカでの人気は圧倒的だ。日本では、アメリカで一番人気があるスポーツは野球だと勘違いしている人が多い。日本にはプロフットボールが無くて馴染みがないこともあり、マスコミも野球のことばっかり報道するから、あたかもアメリカでも野球が一番人気のような勘違いが起きやすいが、アメリカの世論調査では、最も好きなスポーツのトップはプロアメリカンフットボールで、なんと63%の人が選んでおり、2位の野球に大差をつけている。しかも3位は野球と僅差で大学アメリカンフットボールが続いており、日本の高校野球以上に人気が高い。シアトルにいた時は、弱いシーホークスより、パック10という西海岸の大学リーグで常に優勝争いしていた私の母校ワシントン大学のフットボールチーム、ワシントン・ハスキーズの方が人気が高かったくらいだ。だから、プロと大学を合計したアメリカンフットボールの人気は圧倒的だ。テレビの視聴率も、単なるレギュラーシーズンの試合であっても、好カードになると、野球のワールドシリーズを上回ったりする。大学のフットボールの全米王座決定戦ローズボウルの視聴率だって、野球のワールドシリーズなんかを上回る。
アメリカのオバマ大統領が、フランスの風刺雑誌シャルリー・エブドへの襲撃事件に反対するパリ大行進に参加せず、家のテレビでフットボールの試合を見ていたって事で批判されていたが、そら仕方ない。行進よりはフットボールの方が、はるかに面白いもんな。

さて、いよいよ2週間後にはスーパーボウルがある。相手は古豪の強敵ペイトリオッツだ。雰囲気的には、ジャイアンツと対戦するタイガースみたいな感じで、盛り上がるぞ!

(ピッグ)「どういう対比ですか?」
(幹事長)「古豪チームって、嫌いなのよ」


(2015.1.19)



〜おしまい〜





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