イスラム国による日本人殺害事件

シリアやイラクで勢力を拡大するイスラム教過激派組織イスラム国が湯川氏と後藤氏の二人の日本人を拘束し、身代金を要求していた事件は、湯川氏の殺害という新たな局面に入った。

例によってマスコミは、ここぞとばかりに報道の垂れ流し状態だ。マスコミは何が何でも商売第一主義だから、ミーちゃんハーちゃんが飛びつきそうな、こういう話題が大好きだから仕方ないんだけど、こういう事態に便乗して、好き勝手言いたい放題の評論家が出てくるのには辟易だ。

まず、今回の事件の論点を整理しよう。


�@　イスラム国は最初から真剣に身代金を要求していたのではない

イスラム国は当初、日本人２人の人質の解放のために身代金として２億ドルを要求していた。バカなマスコミは、これを真に受けて大騒ぎしていたが、どう考えても２億ドルも本気で要求していたとは思えない。２億ドルと言ったら２００億円以上の大金だ。どこの国であっても、そんな大金を身代金で払う訳がない。大統領や首相が人質に取られたって、どこの国もそんな大金は払わないだろう。もし、真剣に２億ドルをもらおうと思っていたとしたらイスラム国は日本のマスコミと同様なバカたれってことになるが、さすがにイスラム国がそんなに間抜けとは思えない。仮に２億ドルじゃなくて、もっと少額でもいいから身代金をもらおうと思っていたとしたら、あんなおおっぴらに２億ドルなんて表明することはなかったはずだ。身代金の額として現実的な相場は、せいぜい数億円程度だろうから、いくらなんでも吹っかけすぎであり、これじゃあ交渉にならない。仮に、結局、数億円程度で妥協したってことが明るみになったら、イスラム国の信用もがた落ちだ。ま、イスラム国に信用なんて最初から無いかもしれないが。
冷静に考えれば、最初からイスラム国は身代金目当てでは無かったってことだ。冷静に考えれば、子供でも分かる事だ。白鵬が稀勢の里戦で物言いがついて取り直しとなった事に対して「自分が勝ったのは子供が見ても分かる」なんて言って審判を批判していたが、それと同じだ。イスラム国は最初から身代金目当てなんかじゃなくて宣伝効果を狙ったものだ。分かり切ったことだ。
恐らく、日本政府もそれくらい分かっていたと思う。日本の政府は、それくらいの事が分からないほどアホな政府ではないはずだ。ところが、バカなマスコミは、分かってなかったのか？それとも分かってないフリをしていただけなのか？マスコミは商売さえできれば、どんな嘘でも平気でつくから真意は分からない。
一方、世の中には本当に救いようのない人たちも大勢いて、「なんとかして２億ドルを払え」なんて主張していた人がいる。「国民全員が一人２００円ずつ出せば２億ドル集まる」とか言ってたけど、本当に頭が悪いなあ。こういう人がオレオレ詐欺に引っかかるんだろうなあ。「オレだよ、オレ。イスラム国だよ。２億ドル払ってくれよう」なんて。海外旅行に行っても詐欺に遭うんだろうなあ。気の毒だけど自業自得だわなあ。
国民の多くは、そんなにアホではないだろうから、もし仮に日本政府が国の金から２億ドルなんて大金を支払うなんて事になったら「私たちの貴重な税金から、そんな意味の無い金を払うことは許されない！」って暴動が起きるんじゃないか？


�A　身代金を支払えば他の大勢の人が殺害の危険にさらされる

イスラム国は日本のマスコミほどバカではないだろうから、最初から２億ドルをもらおうと真剣に考えていたとは思えないが、もし仮に２億ドルを支払ったとしたら、どうなるだろうか。もしかしたら日本人人質は解放されるかもしれない。でも、それで終わりではない。銀行強盗みたいな普通の犯罪者だったら、身代金を取って外国にでも高飛びして悠々自適の生活を送るかも知れないが、イスラム国の人たちが身代金でバカンスするとは思えない。何をするかと言えば、大金を手にして、ますますテロに精を出すはずだ。大金で戦闘員をいっぱい雇い、武器弾薬も大量に買い込み、何千人何万人という人たちを殺戮するだろう。たった２人の日本人を救うために支払った大金を基に何万人もの命が失われるだろう。「なんとかして２億ドルを払え」なんて主張する人は、そこまで想像する力が無いのだろうか。信じられない事だが、想像力が欠如しているのだろうなあ。
また、今回の２人は開放されるかもしれないが、２億ドルも払ってくれるんなら、世界中で日本人は片っ端から人質に取られるだろう。たった二人の不注意者を助けたばっかりに、世界中で日本人は危険にさらされることになるだろう。


�B　要求された身代金２億ドルと人道援助の２億ドル

イスラム国は日本のマスコミほどバカではないだろうから、最初から２億ドルをもらおうと真剣に考えていたとは思えないが、その２億ドルという額はどこから出てきたのかと言えば、たぶん安倍首相が直前にカイロで行った演説で「イスラム国対策としてイラクなどに２億ドルの支援を行う」と表明したことに対抗するものだろう。当然ながら、政府は「２億ドル支援は避難民が必要としている人道支援だ」と述べ、予定通り実施すると明言した。当たり前だ。
それなのに、ああ、それなのに、小沢一郎が率いる生活の党は、「政府によるイスラム国対策の２億ドル支援のせいで、日本も敵だと捉えられても仕方ない。支援表明はイスラム国には宣戦布告とも言える。人道支援の名前で言おうが、後方支援、補給が戦争そのものだ。曖昧なごまかしの話はやめるべきだ」なんて非難した。もう呆れてモノが言えない。小沢一郎は政局のためなら自分の信条なんて放ったらかして嘘でも寝返りでも何でもする人で、滋賀県知事の嘉田由紀子と組んで反原発なんて言い出した時はぶったまげたが、今回のもひどい。酷すぎる。イスラム国が反発するから人道援助を止めろと言ってるのだ。イスラム国を尊重しているのだ。なんでこんな奴がいつまでも国会議員でのさばってるのかなあ。
最近、政党助成金が欲しいばっかりに小沢一郎と行動を共にしている山本太郎も「２億ドルの難民支援を中止し、人質を救出してください」なんて堂々と言っている。たった２人の日本人の命だけを尊重し、イスラム国の暴虐から周辺国に逃れた人々の命を完全に無視しているトンでもない発言だ。なんでこんな自分勝手で非人道的な人間が選挙で通るのかなあ？はらわたが煮えくり返るぞ。
また民主党の徳永参院議員は「かつてイスラム世界の国々は親日だった」と述べ、日本政府の中東政策のせいで日本が敵と見なされるようになったと言っているが、まるでイスラム国がイスラム世界の国を代表しているかのようなトンチンカンな勘違いだ。そうではなくてイスラム国はイスラム諸国でも忌み嫌われている事を認識して欲しい。本当にアホな議員だ。これが民主党の限界なのか？


�C　湯川氏殺害の時間は？

数日してイスラム国は湯川氏を殺害した写真を公開した。あたかも、日本政府が２億ドルを支払わなかったから殺害したような言いぶりだ。しかし、それは本当か？普通に考えれば、湯川氏はとっくに殺害されていたのではないだろうか？それなら２人がオレンジ色のシャツを着て座らされて脅されていた写真の不自然さが理解できる。二人の影の方向が異なることから、合成映像であることは当初から指摘されていたが、その理由は明らかでなかった。しかし、あの時点で湯川氏が既に殺害されていたとなれば、合成の理由が納得できる。
つまり、今回の事件は、イスラム国は最初から宣伝目的で引き起こしたものであり、彼らの言う事を真に受けて煽動されるのは避けなければならない。商売第一主義のマスコミは、その辺を全く追求しないし、頭の悪い人たちは、あたかも日本政府の対応がまずかったから、湯川氏が殺害されたかのように勘違いしているが、全く的外れだ。


�D　人質交換は真剣に要求しているのか？

イスラム国は日本のマスコミほどバカではないだろうから、最初から２億ドルをもらおうと真剣に考えていたとは思えないが、その要求をあっさりと取り下げて、今度はヨルダンで収監されているイラク人女テロリストの釈放を要求してきた。ただ、この要求も、どこまで真面目に要求しているのか疑問は残る。
そもそも、この女テロリストを収監されているのはヨルダン政府だ。日本政府ではない。直接、関係の無いヨルダン政府に要求したって、そんなに簡単に開放されるはずがない。この女テロリストは、かつてヨルダンで大量殺害テロを引き起こした実行犯であり、ヨルダン国民は敵意を抱いている。ヨルダン国民が、そんな極悪な女テロリストを、安全意識の欠如した呑気で脳天気な日本人のために解放するなんて事を許すとは思えない。
また、ヨルダン政府に対しては、テロ組織との交渉を一切拒否するアメリカなどからの圧力もあるだろうし、そう簡単に捕虜交換って訳にはいかないだろう。
一方、この女テロリストは残虐な大量殺害テロの実行犯ではあるが、イスラム国の戦力として貴重な戦闘員という訳では決してない。いくらでも代わりはいる。なので、イスラム国として真剣に返して欲しいと考えているとは思えない。やはり、あくまでも宣伝効果を狙ったものだろう。


以上のような観点から、身代金にしてもテロリストとの交換にしても、イスラム国が真剣に考えてやっているのではなく、あくまでもセンセーショナルなやり方で活動を宣伝しているだけなので、そんな口車に乗って軽率な行動を取るべきではない。日本として取るべき態度は明らかだ。テロリストの煽動には乗らず、冷静に対処することだ。対処ったって、する事など特に無い。静かに無視していればいいだけだ。

身代金を払えば、その金によって何百倍、何千倍、何万倍もの人たちの命が失われるのだから、絶対に払ってはいけない。
知能の低い山本太郎が言うように難民支援を中止したら、それもまた、助かるはずだった多数の命が失われるのだから、決して止めてはいけない。
また、ヨルダン政府に無理強いしてヨルダン国民を大量殺戮したテロリストを解放するなんて破廉恥な真似もしてはいけない。
なので、何もすることは無い。黙って無視していればいいだけだ。子供でも分かることだ。

幸い、日本政府はこれくらいの事は十分に分かっている。自民党の高村正彦副総裁は「日本政府がイスラム国対策の人道支援をやめるのは論外だ。身代金を払うこともできない」と語っているように、冷静に理性的な対応をとるようなので安心だ。

（２０１５．１．２７）

〜おしまい〜

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