自衛隊は軍隊か?

〜 今さら幼稚な議論は止めよう 〜



安倍首相が国会で自衛隊と他国との訓練について説明する中で自衛隊を「我が軍」と呼んだことが波紋を広げている
これまで政府は公式見解で「自衛隊は憲法上、自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」としてきたからだ。

首相の発言に対して、民主党は「一言でいうならば『それを言ったらおしまいよ』と。これまで自衛隊という形で、憲法の枠組みの中で積み上げた議論を、全部ひっくり返すような話を総理が言うことについては、非常に理解に苦しむ」と批判している。民主党だけでなく、一部マスコミもバカみたいに騒ぎ立てている。

一方、菅官房長官は、「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」と、従来の政府見解に沿って自衛隊の解釈を説明したうえで、「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」、「自衛隊は一般的に国際法上は軍隊に該当することになっている。自衛隊が軍隊かどうかというのは、軍隊の定義いかんによるものだ」と述べている。

(石材店)「幹事長も色々と言いたいんでしょ?」
(幹事長)「いや、アホらしくて、もう議論したくない」


上記の菅官房長官の説明が最も分かりやすく、正しいものだ。

日本の憲法9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めている。なので、2006年の第1次安倍内閣の答弁書では「自衛隊は我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織で『陸海空軍その他の戦力』には当たらない」としている。そう言わないと、自衛隊の存在が憲法違反になるからだ。
そして、安倍首相は「自衛隊は国内では軍隊と呼ばれていないが、国際法上は軍隊として扱われている。この矛盾を実態に合わせて解消することが必要だ」と述べて、「自衛隊」を「国防軍」とする憲法改正に意欲を見せている。安倍首相としては、自衛隊を国防軍に変えたいと思っているが、それが実現してもいないのに先走って「我が軍」と呼んだことで揚げ足を取られた訳だ。

しかし、これは菅官房長官も言ってるように単なる言葉の定義の問題であり、まことに下らない低レベルな議論だ。誰がどう見ても、現時点で自衛隊は立派な軍隊じゃないか。「自衛隊」という名前を実態に合わせて「国防軍」という名前に変えるだけの話だ。

こう言うと、どうでもいいような事で言葉をほじくり返すだけが生き甲斐の評論家なんかは、「自衛隊と国防軍では、単に名称の違いというだけでない大きな違いが出てくる」なんてアホな議論を始める。彼らの論点は以下のようなものだ。

・自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」にとどまらなければならない。これは歴代政府が自衛隊を合憲としてきた最も基本的な論拠に基づくものである。政府は「憲法9条が一切の戦力の保持を禁じている」ということ自体は認めており、「自衛のための『戦力』なら持てる」なんて拡大解釈しているのではない。そうではなくて「憲法9条は独立国家に固有の自衛権まで放棄したものではなく、その自衛権のための必要最小限度の実力を保有することは憲法上も認められる」としているのだ。もしどこかから攻められた時に何も抵抗できないというのはおかしいからだ。従って、憲法が保持を禁じている『戦力』とは「自衛のための必要最小限度の実力(=自衛力)」を超えるものを言うのであり、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」に過ぎないから憲法違反ではない、というわけだ。この点で、自衛隊は軍隊とは根本的に正確が異なる。

どうだろう?まさに言葉遊びだ。『戦力』とは何か、という定義の問題だ。実態とは何の関係も無い。なぜなら、どこまでが『自衛のための必要最小限度の実力』で、どこからがこれを超える『戦力』になるのか、その客観的な物差しはどこにもないからだ。現実の自衛隊の軍備が「必要最小限度」を超えていないかどうかという議論は、机上の議論でしかない。自衛隊に限らず、世界中のあらゆる国の軍隊は、自国の防衛のために存在しており、自分から他国を侵略するつもりは無いと言い張っている。どこの国の軍隊も『自衛のための必要最小限度の実力』しか保有していないと言い張っており、だとすると、世界中のどの国の軍隊も自衛隊と呼べる。あれほど他国への侵略を繰り返している中国軍だって、自国防衛のためと言い張っているし、ロシアだって自国防衛のために他国へ侵略していると公言している。

また、現実離れした評論家は以下のような議論もしている。

・自衛隊があくまで「自衛力」であって「戦力」ではないとする以上、その行動・活動は、当然「自衛」の範囲に限定されなければならない。だから、自衛隊に許されているのは、日本に対する急迫不正の侵害があったときに、これを排除するための必要最小限度の実力行使だけだ。つまり自衛隊ができることは、日本がどこかから攻撃された時に、それに対抗して攻撃を斥けることだけだ。だから、当然、自衛隊が日本の外へ出て行って実力行動をすることは許されない。つまり、自衛隊の海外出動は憲法上許されないのだ。また、日本が攻撃されていないのに自衛隊が実力行動をすることも、当然許されない。

しかし、こんな幼稚な議論も現実の前では無意味だ。「国際貢献」とかPKOとか「テロとの戦い」により、自衛隊の海外派遣は、今やニュースにもならないほど当たり前の事になった。2006年の自衛隊法改正で、自衛隊の海外活動は「国土防衛」とならぶ「本来任務」に格上げされている。

『戦力』とは何か、とか『自衛のための必要最小限度の実力』とは何か、とか意味の無い議論を延々と繰り返しても何の役にも立たない
中国軍が攻めてくるのが時間の問題となり、北朝鮮も何をしでかすか不透明であり、さらにイスラム過激派のテロは中東地域に止まらず世界中に拡散しており、いつまでも日本だけが呑気にアメリカ軍に頼って日和見をしている余裕は無い。そして、実態としても自衛隊はこれらの諸課題に対処すべき軍隊へと改善を図っており、誰がどう見ても立派な軍隊だ。
立派な軍隊である自衛隊を軍隊ではないと言い張るのは、軍隊の保持を禁止した憲法との矛盾を回避する強弁というか方便であり、むしろ憲法を変えるべきだろう。アメリカ占領軍が1週間でデッチ上げた出来の悪い憲法なんて、さっさと変えれば良いと思う。アメリカ自身が後になって後悔したような下らない憲法だ。あんな低レベルの憲法を後生大事にするのは中国の手先である社民党だけだ。

アメリカ、ロシア、中国は別として、誰がどう見ても世界トップクラスの戦力を持っている自衛隊を軍隊ではないなんて言い張っても、世界中の誰も相手にしてくれないだろう。

(2015.3.25)



〜おしまい〜





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