同じ事故が繰り返される

〜 安全対策は不可能なのか? 〜



信じられない事故が起きた。

つい先日、三豊市にあるため池で、すぐ近くに住む5歳の男の子が溺れて死亡した。これだけなら、痛ましいが、時々発生する水難事故だ。ところが、なんと、このため池では5年前にも、この男の子の姉になる3歳の女の子が同じように溺れて死亡しているのだ。ご家族には、本当に気の毒な事故だ。
このため池は、水深が深いところでおよそ5.5メートルある。5年前の姉の悲劇を二度と繰り返さないようにと、土手には姉を供養する地蔵が立てられているが、そんなものは安全対策でも何でもない。安全対策としては、5年前の姉の事故を受けて、三豊市が対策を施しているが、その内容は、以下のようなものだ。
まず、ため池の東側には土手に上るための階段があるが、その前に高さ1メートルほどのフェンスがあり、さらに注意喚起の看板がある。また、このフェンスが開かないように南京錠がつけられている。ただ、フェンスがあるのは階段の出入り口の部分だけで、脇から階段に簡単に上がっていける。また、池の北側の100メートルほどには、道路沿いに、ため池への進入を防ぐフェンスが設置されているが、それ以外の場所には一切フェンスがなく、子供でも簡単に上がれるようになっていた。
今回の事故を受けて、子供達の父親は「2人も死んでいる。これ以上もう何かあってほしくはない。この池だけでなく、日本中の池で、誰であろうが死なないようにしてほしい」と話しているが、なぜ三豊市は池の周囲全体を覆うような対策を取らなかっただろうか。それは「ため池を全てフェンスで囲うとなると、ほかのため池も同じ対策をしないといけなくなる。そこまでするのは難しい」からだ。雨が極端に少ない香川県は、いまだに農業用水の半分以上をため池に頼っており、県内には14,000以上ものため池が存在している。確かに、これら全てにフェンスを付けるなんて、不可能だろう。
しかし、それにしても、今回の、あまりにも可哀想な事故に直面すると、何か対策は無いものなのか、考えなければならないように思える。

それから、全く別の事故だが、つい先月、愛知県一宮市の交差点で、近くに住む82歳の老女が車にはねられて死亡した。これだけなら、痛ましいが、よくある老人の交通事故だ。ところが、なんと、この交差点では4年前にも、この老女の夫の79歳の男性が同じように車にはねられて死亡しているのだ。ご家族には、本当に気の毒な事故だ。
この交差点の近くには、この夫婦が毎日のようにお参りしていた地蔵堂がある。4年前には夫婦揃って地蔵堂へ歩いてた途中で車にはねられて男性が死亡した。それ以来、残された妻の老女は、夫の死を弔うために、その地蔵堂へ毎日、お参りに行っていたのだが、今回、同じ交差点で車にはねられて死亡したのだ。これまた、呆然とするような運命だ。
このような悲劇を無くそうということで、一宮市は、近々交差点内の路面をえんじ色に塗装するとのことだが、そんな事で事故が防げるだろうか。

もちろん、数限りなくあるため池の全てをフェンスで覆うのも不可能だし、交通事故をゼロにするのも現実的には不可能だろう
しかし、それにしても、このような余りにも悲惨な事故を防ぐ努力は、ほとんど何もされてこなかったと言えるのではないだろうか。何千年、何万年に一度しか起きないような地震に備えて大騒ぎするのもいいけど、このような日常的な危険に対する処置の方が急がれるのではないだろうか。なんとか知恵を絞って対策を考える必要があるのではないだろうか。

(2015.4.2)



〜おしまい〜





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