プレミアム付き商品券

〜 超お得だけど意味不明! 〜



高松市のプレミアム付き商品券をゲットした。1冊12000円分の商品券が10000円で買えるので、20%お得になる。1人当たり5冊まで買えるので、合計60000円分の商品券が50000円で買える。濡れ手に粟の10000円だ。何もしないで10000円もらえるって事だから、これは買わなきゃ大損だ。(財源は、結局は税金などによって国民自身によって賄われるんだから、まさに買わないと大損だ!
しかも、高松市内のお店なら、大半のお店で使えるので、非常に使い勝手が良い。おまけに、高松市のプレミアム付き商品券は、高松市の住民に限らず、どこに住んでる人でも買えるので、希望者が殺到し、競争率は5倍になった。東京マラソンには及ばないが大阪マラソン並の競争率だ。

(石材店)「幹事長は当選したんですか?クジ運悪いのに」
(幹事長)「そら、もう必死に応募したからな」


さすがに同一人物名で何通も応募するのは良くないと思ったので、県外に住む子供の分とか親戚の分とか10通ほど応募して2通が当選した。なので、競争率から言えば順当なところだ。高松市では21万セットを売り出したとのことなので、1世帯当たり2通ってのも、順当なところだろう。これで濡れ手に粟の20000円ゲットだ。

高松市以外にも香川県内では丸亀市など4市町のプレミアム付き商品券が完売した一方で、高松市と丸亀市にはさまれた坂出市など5市町では売れ残りが発生した。売れ残った原因としては、商品券が利用できる店舗数が少ない事が第一にあげられる。高松市や丸亀市なら店舗がいっぱいあって、市内で買い物するだけで事足りるが、そうでない市町だと商品券を使い切れない恐れがある。プレミアム付き商品券を使える期限は今年いっぱいだから、半年弱で使い切らなければならないのだ。実は、高松市でも、普通のプレミアム付き商品券のほかに、市内中心部の商店街でだけ使える「とくや券」という商品券が売り出された。こちらは1冊12500円分の商品券が10000円で買えるので、さらにお得なんだけど、人気は低迷したようだ。うちにも、普通のプレミアム付き商品券の抽選に外れた人用の「とくや券」当選通知が送られてきたが、使いにくそうなので購入しなかった。自宅から歩いて行けるところに巨大なショッピングモールがあるし、近くの道路沿いには大型店が軒を連ねているので、わざわざ不便な中心商店街に行く事は滅多にないからだ。
また、市町によっては、販売対象を在住者に限定したり、購入枚数を少な目に制限したことで売れ残ったところもあるようだ。売れ残ったところは、事前申し込みを止めて先着順にしたりしながら2次販売を実施しているが、それでも売れ残って3次販売しているところもある。

今回のプレミアム付き商品券は、地域経済の活性化を目的とした国の緊急経済対策の一環で、自治体が交付金を活用して発行するものだ。プレミア率は10〜40%と幅があるし、使える店の制限とか、買える枚数制限とか、市町村によって違いがあり、多子世帯とか高齢者にはプレミアム率を高くするなんてところもある。だが、基本的にはお得な商品券なので全国的に人気となっており、一部では大変な騒ぎになった。

東京都多摩市では75歳以上の人や障害者を対象に先着順で先行販売したんだけど、1000人以上が並んであっという間に完売してしまい、並んだのに購入できなかった市民が猛抗議した結果、市は急遽、抗議していた市民にも商品券を追加販売した。ところが、今度は、抗議した人にだけ追加販売した事に対して新たな抗議が寄せられている。深く考えずに先行販売なんかしたために、混乱が混乱を呼んでいる。
ほかにも、抽選にせず先着順にした市町村では、長蛇の列ができて体調を崩して病院に搬送される人が出たり、購入できなかった人から苦情が殺到したりしている。最初から抽選にしておけば混乱は無かったのに、甘く考えて、安易な先着順を採用したから生じた混乱だ。
さらにトンでもないのは熊本県八代市だ。ここは代理購入制度ってのがあって、他人の代理だと言えば1人で無制限に購入することができた。そのため、1冊1万円(1万2000円分)の商品券を1人で300冊以上も買った人が16人いて、そのうち最高額は620冊つまり620万円(744万円分)の商品券を買った人がいた。1人で124万円分も濡れ手に粟の利益をゲットしたわけだ。こういう悪どい人が買い占めたために、長蛇の列を並んでも買えなかった市民の不満が爆発し、苦情が殺到しているが、当然の事だ。こういう事態になるって予想できなかったのだろうか。信じられない考えの甘さだ。

一方、プレミア率を40%と超お得に設定したのに売れ残っているところもある。使える店が少ないのかもしれない。また、全ての商品券を大型店舗でも使えるようにすると地域経済活性という趣旨からずれてしまうてことで、中小店専用券てのを設定したために売れ残ったところもある。確かに制度の趣旨から言えば良く考えられているように思えるが、値段の高い中小店で使うのなら、プレミアムの意味が無くなるから、難しいところだ。

(幹事長)「だが、しかし、そもそも、この制度に意味はあるのか?」
(石材店)「地域経済の活性化が目的ですよね」


地域経済の活性化が目的って事は、この商品券によって新たな消費喚起を促そうっていう腹づもりなんだろうけど、本当にそうなるだろうか。「短期的には消費を刺激するが、消費のタイミングが前倒しされるだけで終わる面も強い」と論評する評論家もいるが、それすら怪しい。本当に消費のタイミングは前倒しされるだろうか。1人で620万円分も買った人なら消費は前倒しされるかもしれないけど、大半の人は所詮1人当たり5万円程度の額だ。使用期限は短いとは言え、今年末まである。それくらいだったら、日常的な買い物、つまり食料品なんかであっという間に使い切ってしまうのではないだろうか。濡れ手に粟の大儲けったって、1万円や2万円のはした金で喜んで財布の紐がゆるんで無駄遣いする人がどれだけいるだろうか。それに、1人で620万円分も買った人なんてのは、恐らく転売して利ざやを稼ごうとしているのだろうから、やっぱり新たな消費喚起は期待できそうにない

かつて15年くらい前にも地域振興券なんて愚策があった。これは国が財源を全額補助して、子供や高齢者や生活保護者を対象に1人当たり20000円の商品券を配ったものだ。今回のプレミアム付き商品券と同様に、使用期限は半年程度で、発行元の市区町村内のみで使用できた。発行の目的は、やはり個人消費の喚起と地域経済の活性化、地域の振興を図ることだったが、予想された通り、何の効果も無かった
この地域振興券の背景には、バブル崩壊後、景気浮揚を目的として数回の減税が行われていたが、負担軽減分が貯蓄に回ってしまい、減税本来の目的である消費の拡大につながらなかったことがある。それで、直接には貯蓄に回せない商品券という形で消費を刺激しようとしたものだ。だがしかし、子供が考えても分かるが、商品券自体は貯金できなくても、商品券を使うことによって使わずに済んだ現金は貯蓄に回るんだから、効果は減税と同じだ。配付対象を、可処分所得が低いため地域振興券による消費喚起効果が大きいと考えられる子育て世代や所得の低い高齢者層などに限定したため、貯蓄に回るお金は少ないと想定されたらしいが、調査では消費の押し上げ効果は発行額のわずか10%程度にとどまり、あんまり意味がなかった事が証明された。しかも、消費されたお金だって、かなりの部分が将来需要の先喰いであり、地域振興券による消費喚起の効果は、ほとんど無かったと言えよう。

誰が考えても「普通の人なら地域振興券で日常の買い物をして代わりに現金を残すだろう」って想像できるのに、「地域振興券の分だけ消費が増える」なんて考えた政治家は「国民は愚かで騙されやすく、合理的な経済行動をしない」と考えているからだ。確かに、国民の多くはバカなので、そう思うかもしれないが、そこまでバカではないってことだ。
さらに言えば、何の財源も無いのに勝手に商品券を発行するのだから、国は国債の発行などによって新たに借金を増やす事になるが、その償還に将来の税金が当てられることを考えれば、将来の消費を減らして現在の消費を増やそうとしていると考えられる。将来、経済情勢が良くなるという前提なのかもしれないが、何の根拠も無い愚策である
この地域振興券は、与党自民党内でも「ばら撒き政策だ」との強い批判があったが、連立を組む公明党の強い要望により導入されたものだ。内閣官房長官の野中広務は「公明党が主張していた地域振興券は、天下の愚策かも知れないが、7000億円の国会対策費だと思って我慢して欲しい」なんて党内に説明している。
今回の意味の無いプレミアム付き商品券も、やはり政治的な要因で出てきたものと思われるが、こんな愚策で選挙民が喜ぶと思っているのだろうか。選挙での得票につながるとでも思っているのだろうか。それとも、一部の政党の支持者は、これで本当に投票するのだろうか。不思議だ。

(2015.8.6)



〜おしまい〜





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