フォルクスワーゲンの排ガス不正

〜 ドイツを信用するな! 〜



トヨタと世界一の座を争うドイツの自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)が信じられない不正を行っていた
排ガス規制が非常に厳しいアメリカにおいて、ディーゼルエンジン車が排ガス検査をクリアするように、検査時には排ガス抑制装置を稼働させて大気汚染の原因となる窒素酸化物の排出基準を満たしていたが、実際に消費者が公道を運転する時は排ガス抑制装置が稼働しないようにしていたというものだ。

ディーゼル車はガソリン車と比べて燃費性能が高いため、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量は少ないが、窒素酸化物の排出量は多いという欠点を持つ。フォルクスワーゲンは排ガス抑制装置により窒素酸化物の排出量を低減させる事ができたんだけど、この排ガス抑制装置を稼働させるとエンジンの出力や燃費性能が低下してしまい、消費者には嫌われる。そこで、規制もクリアする一方で、良い燃費で消費者に受け入れてもらえるよう不正を働いたのだ。

最近の自動車はコンピューターで制御する部分が非常に大きい。私自身、去年買ったハイブリッド車を運転していて実感するが、最近の自動車は何から何までコンピューター制御していて嫌な感じがする。世の中の流れとしては、どうしようもないんだろうけど、車が完全にブラックボックス化してしまっていて、運転してもピンとこない。コンピューター制御なんか要らないから、素直にアクセルとハンドルだけで反応して欲しいのに、なんか勝手にアクセルなんか制御してしまい、思った通りに車が反応してくれない。非常に嫌な感じだ。

今回、不正が行われた排ガス抑制装置もコンピューターで制御してたんだけど、実際にタイヤが動いているかどうかを検知して、検査中なのか実際の運転中なのかを判断して、検査時だけ排ガス抑制装置をフル稼働させる一方、実際の運転時には排ガス抑制装置が稼働しないようにソフトウェアを調整していたのだ。

今回の不正は、非常に厳しい排ガス規制を実施しているアメリカで発覚した。アメリカの研究機関が行った様々な走行条件における窒素酸化物排出試験において、フォルクスワーゲン車の窒素酸化物の排出量が通常走行時には基準値の最大40倍にも達していたのだ。あまりの量に、最初は研究機関も、まさかフォルクスワーゲンが不正を行っているなどとは思わず、何かが間違っていると考え、フォルクスワーゲン社に問い合わせた。ところがフォルクスワーゲン社は、何やかやと言い訳して納得できる回答が得られなかったため、最終的にアメリカ政府が告発したのだ。

問題が発覚したのはアメリカだが、フォルクスワーゲン社は、アメリカで販売していた自動車だけでなく、世界中で販売していた1100万台に上る自動車に同じソフトウェアを組み込んでいたため問題は世界中に拡大している
当初、フォルクスワーゲン社は、不正な車への対応として、違法な設定をしていたソフトウエアのプログラム変更で済むと考えていたようだが、不正を修正すれば、当然ながら、有害物質の排出が抑制される代わりにエンジンの出力や燃費などの性能が低下する。それを消費者が黙って受け入れるとは思えない。「そんな性能の悪い車だったら最初から買わなかった」と訴えるだろう。その損害賠償がどれくらいになるのか想像もつかないが、リコールの費用や損害賠償による損失は数兆円規模に上るとみられる。さらに、今回の不正によって新車販売の不振が続けば、経営への打撃はさらに深刻化するだろう。

フォルクスワーゲンなんていう超優良企業ともあろうものが、なぜこのような信じられない悪質な不正を働いたんだろう?ほんの数年前まではトヨタに遙かに及ばない規模だったのに、近年、驚くべき急成長を遂げ、今年はトヨタを抜いて世界一の自動車メーカーになると見られていた。もしかして、その急成長を支えるために焦りがったのだろうか。
会社側は「不正は少数の社員によるもの」と強調しているが、こんなに大規模な不正が少数の社員によるものであるはずがない。なぜなら、少数の社員にとって何のメリットも無い不正だからだ。不正のメリットは会社全体にある。また、最初にアメリカの研究機関から問い合わせがあってから1年半もの間シラを切って逃げ回っていた事も考えると、不正は会社ぐるみで行ったとしか思えない。



この問題は、単にフォルクスワーゲン社だけの問題ではなく、ドイツそのものの問題

フォルクスワーゲン社は戦前の国策企業の流れをくみ、戦後民営化された後もVW法で新規の株主の議決権が制限されている特殊な会社だ。初代開発者ポルシェ博士の一族が議決権の過半数を握る一方、本社のある北部ニーダーザクセン州が重要決定事項に拒否権を持ち、労組も工場新設などに対して実質的な拒否権を有する。最高意思決定機関の監査役会メンバーは、ポルシェ一族と州政府、労組の代表者で固定され、外部の監視が届きにくい構図となっている。だが、このような特殊な構造自体が悪いのではない。
フォルクスワーゲン社のドイツ経済における巨大さが問題となる巨額の税収と雇用を生み出すVWの抜本改革に独政府は及び腰だ。アメリカ議会が現地法人社長を公聴会に呼んで責任追及しているのに対し、ドイツ政府はフォルクスワーゲン社にリコール命令を出したものの、「フォルクスワーゲン社は協力的で、透明性を保つことに尽力している」なんて言って、フォルクスワーゲン社寄りの態度を示している。メード・イン・ジャーマニーのブランドの代表格であるVWへのダメージを極力抑えようという姿勢だ。また、ドイツでは7人に1人が自動車業界で働いていることから、フォルクスワーゲン社だけでなく、ドイツ経済そのものを守るためにフォルクスワーゲン社と共に戦うというスタンスだ。
さらに、ドイツ国民もフォルクスワーゲン社に対して同情的だ。今回の不正で、フォルクスワーゲン社がアメリカの消費者の激しい怒りを買い、多くの訴訟に直面しているのに対し、自国の優れたエンジニアリングの代名詞であるフォルクスワーゲン社を多くのドイツ人は非難したがらない。一部のドイツ人は、アメリカの厳しい反応について、欧州最大の自動車メーカーであるVWを弱体化しようとする意図的な行為だと考えたりしている。

しかし、これはフォルクスワーゲン社だけの問題でないのはもちろん、自動車産業だけの問題でもない。これはドイツ国家戦略の問題だ
ドイツがこれまで環境問題に非常に熱心のように見えたのは、すべて深遠な国家戦略に基づく行動だ。ディーゼル車はガソリン車と比べて窒素酸化物の排出量は多いが、燃費性能が高いため、窒素酸化物の排出量さえ低減させればディーゼル車は地球環境に良いというイメージを世界中にばらまき、その結果、通常のガソリン車では日本に負けていたのを、ディーゼル車で巻き返した。つまり、ディーゼル車は環境に良いという欺瞞に満ちた宣伝により、日本との自動車戦争に勝利しつつあったのだ。今回の不正は、まさにこの戦略の根本だ。今回、不正が明るみになった事により、この戦略が通用しなくなったのだ。
このような世界を欺く戦略はエネルギー問題でも同様だドイツは先進国でいち早く脱原子力エネルギーを打ち出した。頭の悪い日本の反原子力派は「ドイツを見習って日本も脱原子力を進めるべきだ」なんて幼稚な絵空事を訴えているが、何もドイツは環境問題で脱原子力を訴えているのではない。日本の原子力発電所が再稼働して再び経済力を取り戻せばドイツが負けるので、日本に原子力エネルギーを諦めさせ、それによって日本経済を弱体化させようとしているものだ。こんな調子の良い煽動に乗ってはいけない。

さらに最近の難民問題でも、ドイツの欺瞞がボロを出している。中東の難民がEUに押し寄せ、困ったハンガリーがセルビアやクロアチアとの国境を閉鎖しているのに対してドイツは避難し、「EU各国はもっと難民を受け入れるべきだ」なんてきれい事を言っていた。これはドイツは経済が好調で労働力に逼迫感があるため難民を受け入れて労働力を確保しようと思ったからだ。ところが、バカみたいにきれい事を言ったため難民が殺到するようになり、最近は慌てて規制に乗り出した

このようにドイツは、日本も含めた他の国と同じように、自分のところの国益だけを考えて行動している国だ。日本も同じだから避難することはない。どこの国だって、自分のところの国益しか考えないのは当たり前だ
だが、しかし、それを理解せず騙されて、何でもかんでもアホみたいに「ドイツのようにするべきだ」なんていう頭の悪い反原子力派をのさばらしてはならない

(2015.10.20)



〜おしまい〜





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