老人ホーム殺人事件

〜 あまりにも遅い逮捕 〜



一昨年、川崎市の有料老人ホーム入所者3人転落死した事件で、神奈川県警が施設職員(23)を殺人容疑で逮捕した

事件は、2014年の11月に要介護3の入所男性(87)を4階ベランダから転落死し、12月初旬には要介護2の入所女性(86歳)が4階から転落死し、さらに12月末には要介護3の入所女性(96歳)が6階から転落死したもので、いずれの事件も深夜に発生している。今回の逮捕は、最初の11月に男性が転落死した事件に対するものだが、県警は連続殺人事件の可能性があると見ている。

それにしても遅い。1年以上も経ってようやく逮捕だなんて、あまりにも遅すぎる
この事件が明るみになったとき、1億3千万人の国民の誰もが連続殺人事件だと確信したはずだ。身長150〜160cmで、自分で歩くのも困難な要介護の老人達が、次々とベランダの120cmもある高い柵を自力で乗り越えて転落するなんて事があるはずがない。絶対にあり得ない。仮に、ものすごく低い確率で、何かの偶然が重なって1件くらい発生することがあったとしても、それが同じ施設で2ヶ月間で3件も連続して起きるなんて、地球に月が衝突するくらいあり得ない事だ。
それなのに、ああ、それなのに、一体どうして警察は1年以上もモタモタしてたんだろう

3件の事件が起きた時間帯の全てで当直勤務をしていたのは、逮捕された職員だけだ。1件目と3件目の事件ではヌケヌケと第一発見者になっている。これらの事実を聞いただけで、1億3千万人の国民の全員が、この職員による連続殺人だと確信するだろう。それなのに、なぜ警察は野放しにしていたんだろう。
しかも、この犯人は殺人だけでなく、素行も悪い。昨年5月には、入所者の所持金を盗んだとして窃盗容疑で逮捕され、懲戒解雇された。その後の裁判では、19件もの窃盗を繰り返したことが明らかになり、懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡されている。どう考えても、こいつが犯人だ。

事件後に発表した施設側の報告書では、「介護スタッフが目配り援助のため訪室したところ、ベランダの窓が空いてカーテンが揺れており、スタッフが探すと、ベランダ直下の裏庭に左側臥位で倒れている様を発見、救急車を呼び、その後病院に到着したものの死亡が確認。警察による現場検証の結果、事故による転落が原因」なんて事になっていた。しかし、そんな事が3件も続くなんて、どう考えても異常ではないか。

しつこいようだが、自分で歩くのも困難な要介護の小柄な老人が高い柵を乗り越えて転落死するなんて事があれば、1件だけでも事故じゃなくて事件と疑って捜査するのが常識ではないか。それなのに、会社も警察も事故処理で済ませ、事件を疑った様子はない。1件目の転落死で殺人を疑っていれば、第2、第3の殺人事件は発生しなかったと思われるから、2件目、3件目の犠牲者は、警察や施設の怠慢のために殺されたと言っても過言ではない。

3件の転落死では、それぞれの発生の際に遺体の状況を確認する検死官が県警本部から現場に出動していたが、転落による外傷以外に目立った傷が確認されなかったこともあり、事件性を疑うこともなく、死因解明のための司法解剖は行われなかった。そして「3件の転落死を確認したのがそれぞれ別の検視官だったため、個別の変死事案として処理され、3件が一連の事件として扱われることはなかった」と警察は弁明している。
しかし、仮に県警本部からの検死官が気付かなくても、現場を管轄する警察署は僅か2ヵ月間に3件も似たような異常な転落死が同じ施設で発生した事を把握しているんだから、何の言い訳にもならない。それとも、現場の警察は、殺人事件に巻き込まれるのが嫌で、わざと情報を流してなかったのだろうか。もしそうなら、もう警察の存在意義は無い。

県警本部が3件の転落死が僅か2ヵ月の間に起きていたことを把握したのは、犯人が窃盗事件で逮捕されてからだ。あまりにも遅すぎる。しかも、それにも関わらず、さらに何ヶ月も経過した今頃になって、ようやく逮捕されたってのは、もうトンでもなく遅すぎると言わざるを得ない。呆れてモノも言えない。

犯人は逮捕される前には「自分が当直勤務の時に転落が3回続いてしまい、疑われるとの気持ちはあったが、直接的に何かをやったということは誓ってない。今は転落を食い止められなかった後悔と、入所者が亡くなった悲しみを感じる」なんて平気な顔をしてペラペラ話していたが、逮捕された今は「殺そうと思ってやった」と容疑を認めている。残る2人についても殺害への関与を認めており、連続殺人事件の犯人であるのは間違いない。殺人の動機はこれから解明されなければならないが、どうせ介護が嫌になったのだろう。介護が大変なのは百も承知だが、それを仕事にして給料をもらっているのだから、殺人の理由として何の正当性も無い。なんの情状酌量の余地も無い。3人も殺したのだから当然死刑にならなければならない。

施設もひどいものだ。入所者向け説明会では、故意による転落を全面的に否定していたが、その後、連続殺人以外にも、入所者への暴力や暴言などの虐待行為が発覚し、昨年12月には県警が別の元職員3人を暴行容疑などで書類送検しており、川崎市も施設からの介護報酬の請求を今年2月から3カ月間停止させる行政処分を出した。単に殺人事件が起きた施設だけの問題ではなく、この施設を運営している会社全体の体質の問題だろう。介護施設の運営が大変なのは百も承知だが、それを事業にして金を儲けているのだから、殺人や虐待の理由として何の正当性も無い。なんの情状酌量の余地も無い。こんな悪質な会社は、お取り潰しにするべきだろう。

(2016.2.24)



〜おしまい〜





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