東京マラソン2016

〜 ベテランプロランナー達は何を考えて走っているのか? 〜



2016年3月28日(日)、今年の東京マラソンが開催された。

(石材店)「戦績のコーナーじゃなくて、このコーナーにマラソンの記事が載るなんて珍しいですね」
(幹事長)「一応、マラソンクラブのホームページですから」
(石材店)「いや、珍しいですよ。よっぽど言いたい事があるんですか?」


予想はしていたが、と言うか、予想以上の日本人の惨敗ぶりに呆れてモノが言えない
日本人が惨敗した1つの要因は、私が抽選にはずれて出場できなかったことだ。

(石材店)「もちろん違います」
(幹事長)「はい。もちろん違います」


今年でちょうど10回目となった東京マラソンだが、一般参加者はエントリーの競争率が10倍以上もあるので、10年に一度出られれば良い。3年前に当選して出場した私としては、当分は出場できなくても仕方ない。出たくて出たくて仕方ないレースだが、こればっかりはどうしようもない。
一方、招待選手は、招待されてるんだから抽選はない。招待選手でなくても、上位を争っている選手達は一般参加と言いながら、抽選なんかはなくて優先的に出場できる。それだけに、今回の惨敗ぶりには腹が立って腹が立って仕方ない。

(幹事長)「わしが出場していたら、もうちょっとマシな結果になっていたはずだ!」
(石材店)「はい。もちろん嘘です」


日本人の惨敗はある程度は予想できた最初から最後までトップ集団を形成した海外からの黒人招待選手7人は世界トップクラスの選手ばかりだ。日本人選手とは実績が全然違う。だから、黒人招待選手7人にボロ負けしたのは、ある程度予想された事であり、仕方ない事ではある。
しかし、結果として惨敗したのなら仕方ないで許されるかもしれないが、今回のレース展開は最初から戦いを放棄していた。余りにも露骨に、最初から戦いを放棄していた。その姿勢が許せない

レースは日本陸連が設定したペースでペースメーカーが走り、黒人招待選手7人はそれに軽く着いていったが、日本人には少し速いペースだったため、早々に着いていくのを諦めて第2集団を形成して日本人の中のトップ争いに終始して牽制しあった
確かに、陸連が設定したタイムは日本記録並の2時間6分台であり、今の日本人選手達には早すぎて非現実的だとの指摘もある。しかし、オリンピックでメダル争いをするのなら、それくらいのタイムは必要不可欠だ。日本記録なんて、今や世界では全く通用しないレベルなんだから。
それなのに、それに立ち向かおうとするランナーがほとんどいなかったって事が許せない

日本人ランナーで唯一、トップ集団に着いていったのが社会人1年目の村山謙太。彼はマラソンの経験も無く、日本人同士で日本人トップだけを考えて牽制し合うっていう風習を知らなかったからか、無謀ではあるが果敢に黒人招待選手7人に着いていった。彼は最初は、日本人ランナーの中で最有力と見られていた今井に着いて走っていたのだが、いつの間にか黒人招待選手7人に離されているのに気付き、慌てて追いついたのだ。
それなのに、他の日本人ランナーは日本人トップだけを目指して第2集団を形成してスローペースで走り続けた。これが普通のレースなら、他にも飛び出す選手がいたかもしれないが、オリンピックの代表選考レースなので、どんなに遅くても日本人トップならオリンピックの代表になれるかもしれないとの意識が強く働き、情けない展開になったのだ。

日本人で唯一、黒人招待選手7人のトップ集団に着いていった村山は、なぜ他の選手がついてこないのか不思議に思ったらしい。「前方で走らないと優勝は無理ですし、日本人トップを狙うレースでは世界と戦えない」との発言は、まさに正論だ。トップ集団から、あんなに離された第2集団で争っているようでは優勝なんて完全に無理だが、他の日本人ランナーは、最初から優勝なんて狙ってなかった。「日本人トップを争っているようでは世界で通用しない」っていう言葉が社会人1年目の新人から出されるようでは、他のプロランナー達は本当に情けない。

テレビでレースを見ていた1億3千万人のマラソンファンは、あのまま村山が奇蹟の走りを続けて最後まで優勝争いをしてくれる事を願っていたが、さすがに、そんなに甘い話はなくて、半分ちょっとの22km付近で早々にトップ集団から脱落してしまった。右足にできたマメが割れて、爪先から麻痺してきて全身の力が入らなかったらしい。確かに、彼がゴールしたとき、右のシューズの先が真っ赤になっているのが見えた。やはり無理が祟ったのか。そして、35km過ぎには、後ろの集団に飲み込まれてしまった。
それでも、日本人でただ1人、トップ集団に食らいついていった負けん気の強そうな村山の顔は全国1億3千万人のマラソンファンの心に強く残っただろう

村山以外の日本ランナーはふがいなかったが、それでも、村山に続いて30km過ぎから第2集団から飛び出した大学4年生の服部勇馬も評価して良いだろう。彼は村山ほどの気概は無かったが、それでも第2集団の超スローペースには満足できずにアタックを仕掛け、ペースを上げて一気に飛び出した。35km地点で落ちてきた村山を抜くと、そのまま日本人トップでゴールしそうな勢いだった。ところが、彼も残り5kmで体が動かなくなってしまい、どんどんペースダウンして、社会人の高宮祐樹らに抜かれることになる。

こう見ると、最初から積極果敢に攻めた村山や、終盤ではあるが果敢にアタックを仕掛けた服部は、その勢いが続かず、結局は地道に走って最後までペースダウンしなかった高宮に負けてしまったのだから、我々市民ランナーが何十回、何百回も失敗している「調子に乗って最初から飛ばすと終盤に一気に失速する。最初からペースを抑えて、最後まで同じペースを維持する方が良いタイムが出る」という鉄則通りだ。その点では我々市民ランナーもプロランナーも変わりはない。同じだ。

しかーし!彼らはオリンピックを狙うプロランナーだ。我々のように、100%趣味で走っている市民ランナーとは訳が違う。

(幹事長)「て言うか、わしらの方が、よっぽど積極果敢に序盤から攻めるぞ」
(石材店)「で、100%確実に終盤に失速するんですよね」


無難に良いタイムを出すのであれば、市民ランナーであれプロランナーであれ、序盤からペースを抑えて走ることだ。しかし、東京マラソンに出場したプロランナー達は、何も無難な結果を求めて走っていたのではないだろう?オリンピックを狙っていたのだろ?それなら積極果敢に攻めなければ絶対に無理じゃないのか?事実、高宮は日本人トップになったが、タイムは2時間10分57秒と悪く、優勝選手との差は4分以上で印象悪いし、レース展開にも積極性が無かったことから、オリンピック代表は厳しそうな状況だ。陸連は、最後の選考レースであるびわ湖毎日マラソンでも日本勢が不振に終わった場合、代表3枠全てを埋めない可能性をほのめかしている。
高宮本人だって、マラソンの自己ベストを5分近くも大幅に更新できて素直に喜んでいたが、最初からオリンピックなんて狙っていなかった。そういう立場の彼だから、日本人トップになったのは見事だし、誰も彼のレース展開を責めたりはしないだろう。彼には何の非も無い。「本当に速いのは8分とか9分台。自己ベストを狙って11分を切っただけで日本人トップになってしまい、どうしようという感じです」という素直な感想は正直なところだろう。

私が非難しているのは、彼ではなく、今井や藤原ら、オリンピックを狙っていたプロランナー達だ。本当にふがいなくて情けなくて「金返せっ!」と叫びたい。
彼らは一体なにを狙って参加したんだ?あの超スローペースを考えると、タイムを狙っていたのでないことは確かだ。あくまでも日本人トップになってオリンピックの代表に選ばれる事だけを考えていたのだろう。村山のように「日本人トップを争っているようでは世界で通用しない」なんて崇高な発想は無い。世界で通用しなくても、オリンピックに出られれば、それで良いっていう発想だ。そんな低い意識で世界に通用するはずがない。「世界2位じゃ駄目なんですか?」って言うアホ民主党と同じで、そんな気概では世界10位も不可能だ。
去年、日本歴代6位の2時間7分39秒をマークした今井は、一体全体、何をしていたんだ?彼はせっかく去年、世界選手権の代表に選ばれながら、髄膜炎を発症して出場できなかったという不運に見舞われ、その後遺症が残っていたのかも知れないが、あくまでもプロなんだから、出場するからには、何を目指して走っているのか分からないような態度は許せない。

唯一の救いは、若いランナー達の積極的な態度だ。社会人1年目の村山と大学4年生の服部だけでなく、日本人2位と3位は青学大2年生の下田と3年生の一色が入った。ふがいないベテランのプロランナー達をまねることなく、彼らが今後も世界を目指して積極的な走りを見せてくれれば、男子マラソン界にも微かな明かりが見えてくる

(2016.2.29)



〜おしまい〜





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