びわ湖毎日マラソン

〜 なんとか結果が出たが 〜



2016年3月6日(日)リオデジャネイロ・オリンピック男子マラソンの代表選考会を兼ねたびわ湖毎日マラソンが開催された。

(石材店)「戦績のコーナーじゃなくて、このコーナーにマラソンの記事が連続で載るなんて前代未聞ですね」
(幹事長)「だから、一応、マラソンクラブのホームページだってば」
(石材店)「今回も何か怒ってるんですか?」
(幹事長)「ちょっと言いたい事があって」


リオデジャネイロ・オリンピック男子マラソンの代表枠は3つで、国内選考会は昨年12月の福岡国際、2月の東京、今回のびわ湖毎日3レースだった。各大会の日本人上位3人が選考対象で、日本陸連の設定記録2時間6分30秒を突破した選手は優先的に1人選出される。
ただし、2時間6分30秒てのは2002年に出た日本最高記録2時間6分16秒に近いタイムであり、しかもこれは高速コースのシカゴで出たもので、国内レースでの日本最高記録は16年前の福岡国際で出た2時間6分51秒だ。どっちにしても10年以上も昔の記録であり、これらを含め、過去に日本選手が2時間6分台で走ったのは僅か3人しかいない。つまり、現在の日本人選手にとって2時間6分30秒ってのは、全くもって非現実的なタイムだ。なので、実質的には、日本陸連が設定した2時間6分30秒なんて誰も念頭に無く、もっぱら日本人トップになる事が最優先された
これが、先日の東京マラソンでのふがいない戦いの元凶だ。日本陸連が設定したタイムで走るペースランナーに着いて黒人招待選手達がトップ集団を形成しても、日本人選手のほとんどは後を追わず、日本人トップ争いに終始し、見る者を呆れさせる低レベルな争いに終始し、惨敗した。思い出しても腹が立つ低次元の争いだった。

どう考えても、日本陸連の選考基準が諸悪の根源だろう。「2時間6分30秒を突破した選手が優先的に選出される」ってのは構わない。それだけのタイムを出した者は優先されて当然だろう。もちろん、世界最高記録は2時間2分台に達している現在、2時間6分30秒を突破したって世界に通用する訳はないが、日本人選手のレベルを考えると、2時間6分30秒を突破すれば良しとしよう。
ただ、現実的には、現状で、この設定タイムをクリアする日本人選手が出現する可能性はゼロに等しく、逆に最低限のタイムを設定しなければならないと思う。例えば「いくら日本人トップになっても2時間10分を切らないような遅いタイムの場合は自動的に落選する」というような足切り設定が必要だろう。そうすれば、先日の東京マラソンのような惨劇は免れるのではないか。2時間10分てのは甘すぎる気もするので、2時間9分でも2時間8分でも構わない。それくらいせねば、みんな真剣にならない。

ま、とにかく、上記のような選考基準のもと、最後の選考レースであるびわ湖毎日マラソンが開催された。恐れていた通り、東京マラソンと同様に、今回も日本陸連が設定したタイムで走るペースランナーに着いて黒人選手達がトップ集団を形成し、日本人選手達は彼らを無視して第二集団を形成して日本人トップの争いに終始した。そして、東京マラソンで果敢に日本人集団から飛び出した初マラソンの村山服部が最終的には失速したように、今回も一時期、日本人集団から初マラソンの丸山が飛び出して期待を持たせたが、その後、失速し、結局、地道に走ってきた後続選手に抜かれていった展開も同じで、ガッカリさせられた。
ただ、東京マラソンよりマシだったのは、結果的に日本人トップの北島選手のタイムが東京マラソンの日本人トップの高宮選手のタイムより、だいぶ速かったことだ。コースとしては終盤に坂がある東京マラソンより坂が無いびわ湖毎日マラソンの方が走りやすそうだが、今回の気温は東京マラソンよりだいぶ高かったから、プラスマイナスゼロくらいのコンディションか。個人的には、全国1億3千万人のマラソンファンと同様に川内選手が大逆転勝利を収めることを期待していたが、さすがにそれは無理だった。

てな事で、日本人トップになったものの、タイムも悪いしレース展開にも積極性が無かったことから評価が低かった東京マラソンの高宮選手と違い、今回の日本人トップの北島選手はすんなりとオリンピック代表に選ばれそうだ。さらに北島選手に敗れて日本人トップにはなれなかったものの、日本人2位になった石川選手もタイムは東京マラソンの高宮選手より良かったため、高宮選手を抑えてオリンピック代表に選ばれる可能性が出てきた。
最後の選考レースであるびわ湖毎日マラソンでも日本勢が不振に終わった場合、代表枠である3人を派遣しない可能性すらほのめかしていた日本陸連としては、なんとかホッとしたことだろう。

それにしても、上にも書いたように、東京マラソンにしても今回のびわ湖毎日マラソンにしても、日本陸連が設定したタイムで走るペースランナーに着いていく黒人選手のトップ集団を無視した日本人トップ争いに終始するレースなんて、本当に見ていて腹が立つ。明らかに選考基準に問題があるから、こういうレース展開になるのだ。ぜひ、選考基準を見直して欲しい


選考基準は女子についても問題を抱えている。女子のリオデジャネイロ・オリンピック代表選考レースでは、1月の大阪国際で福士加代子が2時間22分17秒で快走して優勝し、日本陸連の設定記録2時間22分30秒をクリアした。福士加代子は元々、もっと短い距離の選手だったので、マラソンでも序盤から飛ばして終盤に失速するってのがお決まりのパターンだった。それが今回は、最初から飛ばしたのはいつもと同じながら、最後まで失速する事なく見違えるような走りを見せて優勝したのだから、見事と言うほかない。立派なもんだ。誰が見ても、オリンピック代表間違いなしってレース展開だった
それなのに、ああ、それなのに、日本陸連は内定を出さず、そのため、なんと福士加代子は最後の選考レースである名古屋ウィメンズにも出場するなんて騒ぎになった
毎週のようにマラソン大会に出ている川内選手ならともかく、普通の選手なら僅か1ヵ月ちょっとで2回もフルマラソンを走るなんて無謀だろう。福士加代子も普通の選手ではないかもしれないが、仮に名古屋でも好結果を出したとしても、それらの疲労の蓄積からリオで失敗する可能性は高い。それでも出場するというのは、選考レースで日本陸連が設定したタイムをクリアして優勝しておきながらオリンピック代表の内定が出ない、なんていうおかしな選考基準のせいだ。全国1億3千万人のマラソンファンの全員が疑問を感じたことだろう。
日本陸連も大慌てで、福士サイドに出場を取りやめるよう要望した。そこまでするのなら内定を出せばいいんだけど、どうしても出せないらしい。名古屋ウィメンズで福士加代子より良いタイムの選手が2人以上出たら、そちらを選考するからだ。

なんともおかしな選考基準ではないか。男子の場合なら、東京マラソンの日本人トップの高宮選手よりびわ湖毎日マラソンの日本人2位の石川選手が選ばれても、そんなにおかしくはない。どっちにしても先行する黒人選手のトップ集団から離れた日本人選手による日本人トップ争いだけに終始し、しかも、その日本人同士の争いの中でも、途中で果敢に飛び出したのではなく、果敢に飛び出した選手が失速して落ちてきたのをかわしての日本人トップや日本人2位だ。どっちもどっちだ。
しかし大阪国際での福士加代子は違う。最初からレースを引っ張り、独走状態で最後まで失速せずにダントツ優勝したのだ。これはタイムもすごいが、優勝したレース展開そのものを大いに評価しなければならない。それなのに、日本陸連は内定を強く臭わせてはいるが、内定を出さない。て言うか、日本陸連には前科がある。昨年の世界選手権の代表選考では、横浜国際で優勝した田中選手を選ばず、タイムが僅か18秒速かったというだけの理由で大阪国際3位の重友選手を選んだ。異なるレースでの18秒差なんて誤差の範囲だ。こんな前歴があるから、福士加代子は納得しないのだ。
最終的には、福士加代子が名古屋への出場を取りやめ、なんとか最悪の事態は免れたが、それでも日本陸連は内定は出していない。こんなに大騒ぎになり、福士加代子の名古屋出場取りやめを要望しておきながら、もし名古屋で福士より良いタイムを2人以上の選手が出して、そっちを代表に選んだりしたら、もうタダでは済まないだろう。

そもそも、大昔から日本陸連のオリンピック代表選考は大いに問題がある。古くは、高橋尚子様がアテネオリンピックのマラソン代表に落選して大問題になった。高橋尚子様は、選考レースの1つの東京国際マラソンで無様な記録の2位に終わった。しかし、誰が見ても、東京国際マラソンの時は高橋尚子様の調子が悪かった。彼女の力は全く発揮できていなかった。それなのに、たった1回のレースの結果で決めるなんて、愚の骨頂だ。オリンピックのマラソン代表選考レースは3レースあるから、一発勝負ではないかのごとく言われているが、各選手としては3レースとも出るわけではなく、どれか1回しか出ないので、個人にとっては、あくまでも一発勝負だ。選考レースを1レースだけにすると、その日のコンディション調整に失敗した選手が気の毒なので3レース用意している、なんて言ってるけど、どっちにしたって、各選手とも、最初からどれか1つのレースに絞ってコンディション調整しているんだから、1発勝負と同じだ。そして、自分が参加したレースに、たまたま失敗しただけで、非常に有望な高橋尚子様が選ばれないなんて、あまりにも酷い選考だ
マラソンをやってる人なら誰だって分かると思うけど、タイムなんて、その日の体調はもとより、コースによっても全然違うし、その日の気象状況でも全然違う。さらには、参加しているライバルの走りにも影響される。3レースやったって、出場する選手がバラバラでは、公平に判断できるはずがない。そんな事、最初から分かっている。全ての選手が3レースに出場し、それらの結果を総合的に評価するってのなら意味が分かるが、今の選考基準は無理がある
代表選考の公平性の確保のためには、単純なタイム比較も仕方ない、なんて意見もあるが、公平性はどうでもいい。なにも、オリンピックの代表は選手個人のためにあるんじゃなくて、国のためにある。選手へのご褒美のためにあるんではない。一番頑張った選手に贈る努力賞ではない。公平性なんてどうでもよくて、オリンピックで勝てる可能性の高い選手を選ばなければならない。あくまでもオリンピックで勝てる選手を選ぶのだから、3つの選考レースの内容に加え、過去の実績も非常に重要だ。過去の実績ったって、中途半端な実績はどうでもいいが、前回のオリンピックで優勝したような素晴らしい高橋尚子様の実績は、それだけで無条件に代表に選ぶべき実績だ。前回のオリンピックで金メダルを獲り、その後、世界最高記録も樹立した高橋選手が最もメダルに近いってことは、誰が考えても当然のことだ

(石材店)「高橋選手の落選の話になってきてますけど、今回の選考レースの話に戻しましょうよ」
(幹事長)「ううむ。高橋尚子様の話になると冷静にはなれなくて」


高橋尚子様が落選した時も、陸連は「各レースの内容を総合的に勘案し、オリンピックでの活躍が期待できる選手を選考した」と説明したが、オリンピックでの活躍を最も期待できるのは、前回のオリンピックで優勝した高橋尚子様であることは誰の目から見ても明らかだった。アトランタオリンピックの代表選考の時は、バルセロナオリンピックで銀メダルを獲得した実績を評価して有森裕子を選び、その結果、彼女はバルセロナでも銅メダルを穫ったという実績がある。オリンピックの場で実績を上げているというのは非常に重要な要素なんだから、予選なんて免除して選考するべきだった。

今回は状況は異なるが、選考レースで圧倒的なレース展開で優勝した福士加代子を文句なしに選ぶべきだ日本人トップなんかじゃなくて、全体で優勝した人は大いに評価しなければならない

(2016.3.7)



〜おしまい〜





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