パナマ文書の衝撃

〜 断じて許されない行為 〜



タックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人に、世界各国の首脳や親族らが関与している実態を暴露したパナマ文書が世界中で大問題になっている。

タックスヘイブンとは法人税や所得税の税率がゼロか極めて低い国や地域で、バージン諸島やセーシェルなどが有名だ。そういう所に資産を移せば合法的に脱税することができる。関係する国や地域の法律やルールを守るかぎり、法律違反ではない。
ただ、近年は、多国籍企業や富裕層がタックスヘイブンを使って合法的に租税を回避することで各国の財政が悪化しているため問題化しており、乱用を防ぐためのルール作りが国際的に検討されている。法の網の目をかいくぐって合法的に納税を回避する行為が広がれば、国家の財政基盤が弱まり、多くの国民にしわ寄せが向かうからだ。
しかも、タックスヘイブンの会社は匿名性が高く、実態がなかなか分からないため、資金洗浄の温床になっているっていう批判も根強い。
てことで、タックスヘイブンを使った租税回避について各国の租税当局は、たとえ合法であっても断固として対抗するようになってきている。

今回、問題になっているパナマ文書の流出元であるモサック・フォンセカ社は、タックスヘイブンの国や地域で法人の設立なんかを担ってきた法律事務所だ。顧客にとって最も税金がかからない国や地域などを選び出し、そこに企業などをつくるのを手助けしていたらしい。そのビジネス自体は合法的なんだけど、流出した1150万件に上る膨大な内部文書には、世界中の指導者らがタックスヘイブンで資産運用をしている実態が書かれていたため、大問題になっているのだ。
国家権力者だけじゃなく、ジャッキー・チェンとかサッカーのメッシ選手なんかの名前も挙がっているし、世界富豪番付の上位500人のうち29人の名前が顧客として見つかったほか、日本人も400の人や企業の名前が出ているが、これら民間人は合法的に脱税していただけだから罪は無い。

(石材店)「幹事長も大金があれば利用したいんでしょ?」
(幹事長)「したい!絶対に、利用したいぞ!」


タックスヘイブンなんて我々には全く縁が無い存在だが、もし利用できるのなら徹底的に利用してみたいものだ。なぜなら、税金に対して拭いがたい不信感があるからだ。生活保護費でパチンコに行く輩がいる一方で、我々サラリーマンは単身赴任手当にまで所得税がかけられるという理不尽な税制には心底怒りを覚えており、所得税なんて一銭も払いたくないのだ。税務署に放火してやりたい気分だ!

(石材店)「それじゃあ社会が成り立ちませんよ」
(幹事長)「税金は全部、消費税にしたらええやないか」


現時点で日本全体の所得税は消費税を少し上回っている程度なので、消費税を20%にしたら所得税なんかゼロにしても大丈夫だ

このように、良心的な国民の大部分が重税感に苦しんでいるのに、国民に重税を課す権力者が自らの税の支払いを逃れて蓄財にふけっていることが分かったので、世界中での怒りが爆発しているのだ。
少なくとも、今のところ、世界の10ヵ国の現旧指導者12人を含む公職者140人の関係会社が見つかった。さらに国家指導者の親族61人も関係していた。

最初に火だるまになったのはアイスランドのグンロイグソン首相だ。夫婦でイギリス領バージン諸島の会社を通じてアイスランドの大手3銀行の債券に数億円の投資をしていたのだ。その後、アイスランドは2008年のリーマンショックの影響で財政が破綻し、首相が投資をしていた3銀行も破綻したが、首相は投資の事実を隠しながら、政府として銀行の債務処理に当たっていた。自分の資産の確保に都合良いように動いたのではないかという国民の批判の声が高まり、首相は辞任した。

お隣のイギリスのキャメロン首相も、亡父が設立したタックスヘイブンの投資ファンドによって利益を得ていたと報道され、最初は疑惑を否定していたが、逃げ切れなくなって最終的には認めざるを得なくなった。財政健全化を掲げて厳しい緊縮を強い、合法の節税行為すら批判してきた首相自身が、富裕層相手のタックスヘイブンで利益を得ていたことに対して国民の怒りが爆発し、退陣要求デモが起きるなど、政権の最大の危機になっている。

このような民主主義国家の指導者ですら関わっているのだから、独裁者も当然、名前を連ねている。
ロシアのプーチン大統領は、古くからの友人がタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、これらの会社に資金が流れ込んでいたほか、プーチン大統領の周辺で少なくとも20億ドルが運用され、タックスヘイブンの会社やプーチン大統領と関係が深いロシア銀行が関わったいた。プーチン大統領もキャメロン首相と同様に、これまではタックスヘイブンなど国外の資産を本国に戻すよう呼びかけてきた張本人だっただけに批判されているが、独裁者なので国内ではおおっぴらには批判されいない。

ロシアと敵対するウクライナのポロシェンコ大統領も2014年8月にバージン諸島に会社を設立していた。当時のウクライナは政府軍と親ロシア派武装勢力の紛争が激化するなど、混迷を極めていた時期だが、そんな大問題にはお構いなく自分の蓄財に走っていた訳だ。一体どういう神経をしているんだろう。

ここまで来たら、悪の帝國の中国が関わっていないはずがない。現職の習近平国家主席の姉の夫らがイギリス領バージン諸島の企業の株主になっていた事が判明した。習近平はこれまで「腐敗を許さない」という強い姿勢で大衆の支持を取りつけ、改革を断行してきたが、それがあくまでも単なる権力闘争の手段に過ぎなかった事が分かる。もちろん、中国政府は指導部の親族が関わるスキャンダルを報道するはずがなく、中国の国内では、今回の問題は一切報道されていない。

他にもアルゼンチンのマクリ大統領、サウジアラビアのサルマン国王、シリアのアサド大統領、エジプトのムバラク元大統領の息子ら、アゼルバイジャンのアリエフ大統領の親族、パキスタンのシャリフ首相の子どもなど、なんぼでも出てくる。むしろ出てこない人の方が少ないかも。

民主主義国家の権力者であれ独裁者であれ共通しているのは、タックスヘイブンを使った合法的な租税を批判しつつ国民には重税を課す一方で、自らはタックスヘイブンを使いまくって脱税と蓄財にふけっていたことだ。とんでもない事だ。断じて許される行為ではない。片っ端から縛り首にするべきだ。

どうすればいいのか。もちろん、答えは簡単だ。タックスヘイブンに資産を移しても、徹底的に追跡して課税すればいいだけの話だ。これまで及び腰だっただけで、やろうと思えばできる事だ。さらに一部の富裕層は、シンガポールや香港に長期滞在して脱税する手法をとっているが、日本国籍を有する限り、いくら国外に住んでいても徹底的に課税すればいい。税金を払いたくなければ日本国籍を捨てればいい。

(石材店)「もし幹事長が大金を持っていたら、どうするんですか?」
(幹事長)「わしは日本国籍に何のこだわりも無いぞ」


ま、あり得ない仮定の話ですけど。

(2016.4.14)



〜おしまい〜





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