障害者施設大量殺人事件

〜 狂人は隔離するべきか? 〜



信じられない事件が起きた。神奈川県相模原市の障害者施設に刃物を持った男が侵入し、入所者を片っ端から殺傷したのだ。19人に達した死亡者の年齢は19〜70歳、男女別では男性9人、女性10人だ。老若男女区別なく無差別に殺戮したって事だ。負傷者も26人に達した。

19人もの人が一度に殺害されたなんて、日本ではちょっと記憶にない。あまりの衝撃に、しばらく呆然とし、背筋が寒くなった。このところ、世界中でテロ事件が多発し、大量殺人は日常茶飯事的になってきたが、テロとはほとんど無縁な日本でこのような大量殺人事件が発生するとは誰も予想してなかったことだ。

しかも、自ら警察に出頭した犯人は、この施設元職員の男だった。これもまた衝撃的だ。彼は平成24年からこの施設に勤務し、今年2月に自己都合を理由に退職した。
自己都合ったって普通の自己都合じゃなく、「障害者は生きていても意味がない」とか「安楽死させた方がいい」とか、さらには「日本国の命令があれば大量殺人を実行する」なんて言い出したため、驚いた園長が問いただすと「自分は間違っていない」と力説し、自主退職が決まったものだ。この話を最初に聞いたとき、まずヒトラーを連想したが、本人も「ヒトラーの思想が降りてきた」なんて言ってるから、何かしらの影響はあったのかもしれない。
ただし、いくらヒトラーの思想に影響を受けても、実際に今回のような犯罪を犯す人間はドイツにだっていないので、思想教育が間違っていたとか何とかトンチンカンな指摘をするべきではない。あくまでも気が狂ったキチガイの犯行と割り切らなければならない。

一部のトンチンカンな評論家は「福祉施設を取り巻く過重労働によるストレスも背景にあるのではないか」なんて的外れな指摘をしているが、明らかにそうではなくて、狂った考えに取り憑かれてしまったため、施設も退職したし、犯行にも及んだわけだ。

犯人が突然、狂った理由というか原因は分からない。施設の園長によると「2012年に就職したころは普通の人だったが、突然、障害者を殺すという趣旨の言動をするようになった」とのことだ。人が狂うのには、原因がある場合と、特に原因は無くても精神に異常を来す場合があるから、何でもかんでも原因を見つけ出そうとするのは無意味かもしれない。はっきり言えることは、明らかに犯人は狂っており、犯行の理由をまともに議論しても意味は無いという事だ。

明らかに犯人が狂っていると断定できるのは、今年2月に衆院議長に障害者殺害を予告する内容の手紙を渡そうとしたからだ。この手紙には、標的の一つとして現場となった障害者施設を名指しした上で、「私は障害者総勢470名を抹殺することができます。目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」と書いていた。さらに作戦内容として「職員の少ない夜勤に決行致します。見守り職員は結束バンドで身動き、外部との連絡を取れなくします。職員は絶対に傷付けず、速やかに作戦を実行します。抹殺した後は自首します」などと今回の事件と同じ内容を書いている。
普通の犯罪者なら、自分の犯行計画を事前に詳細に明らかにしたりしないだろう。自分の考えが正しいと思っていたからなのか、そもそも理性が無くなり、犯行計画を事前に打ち明けたら邪魔されるかもしれない、なんて発想そのものが無くなっていたのか分からないが、狂っていたことは明らかだ。手紙の最後は「ご決断頂ければいつでも作戦を実行致します。日本国と世界平和の為に何卒よろしくお願い致します」なんて書いていたから、やはり自分の考えが正しいと思っていたのだろうなあ

この直後、犯人は、野放しにしておいたら危ないって事で精神保健福祉法に基づく緊急措置入院をさせられた。措置入院中にも「周囲に抹殺の考えを話しても理解を示されなかった。しかしながら自分の考えは間違っていない。重複障害者は人の形をしている物であり人間ではない。自分の考えを認めない周囲はきれいごとを言っているので納得できない」と話していたらしい。
今、問題になっているのは、このような危険思想の持ち主を緊急措置入院させておきながら退院させたことだ。これほど明らかに狂った人間を野放しにしていいのか、ということだ。
これについては、賛否両論ある。措置入院は、精神保健福祉法に基づき、精神障害のある人が自分や他の人を傷つけたりする恐れのある場合に、本人や家族の同意なしに行政が強制的に入院させる制度だ。なので、以前から独善的な弁護士どもを中心に、制度そのものに対して反対する意見が根強い。公権力が自分の敵を理由をつけて勝手に監禁することができるからだ。確かに、中国のような独裁国家では、政府に反対する人間を片っ端から捕まえて刑務所や精神病院に送り込んでいるから、そういう恐れも無いことは無い。
措置入院そのものに対して反対意見があるくらいだから、いつまでも入院させておくことには、さらに反対意見が強い。また、今回の事件を受けて、「措置入院から退院させた後も、放置せずに行政がフォローすべきだ」との意見が出ていることに対しても、退院後まで公権力による監視が続くことについて反対意見が出ている

それじゃあ、どういう対策が可能だろうか。はっきり言って、狂人を野放しにしたままで、このような犯罪を防ぐ事は、ほぼ不可能だろう
24時間職員が常駐する福祉施設でも、もっぱら入所者の見守りに力点が置かれ、外部からの侵入に対する警備体制は手薄だ。知的障害者らが入所する福祉施設では、建物外への徘徊や窓からの転落などを防止するため、建物内外のセンサーや入退室管理システムなどは設置しているが、防犯対策にはなっていない。防犯対策として出入り口に暗証番号入力式のカギを導入することもあるが、今回の事件のように、元職員など番号を把握している人物の侵入は防げない。

繰り返しになるが、今回の事件は、完全に気が狂ったキチガイによる犯行であるから、理由や原因がどうのとか、思想がどうのとか、環境や社会の取り組みがどうのとか、そういう議論は全く無意味だ。自分が目立つ事しか考えていない評論家なんかが訳知り顔で論評するのは無視しなければならない。
完全に狂ったキチガイの犯行だから、死刑にしたって、キチガイには何の効果も無い。
今回のような事件を完全に防ぐには、狂った人は完全に隔離するしかない。他には何の防止策も有り得ない。それを人権無視だからと言って反対するのなら、今回のような事件が起きるリスクは許容しなければならない。

(2016.7.29)



〜おしまい〜





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