コロンビア和平に国民投票で反対
南米のコロンビア政府と南米最大の左翼ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の内戦を終わらせる和平合意の是非を問う国民投票が行われ、あろう事か反対が賛成を上回って否決されてしまった。
(幹事長)「もう、びっくり!イギリスのEU脱退に匹敵する驚愕の国民投票だ!」
(石材店)「よくもまあ、こんなマイナーな事件に関心が沸きますねえ」
FARCは共産主義に影響を受けた農民が1964年にコロンビアで結成した中南米最大の反政府ゲリラで、一部の有力者や大企業が富を独占する不平等の是正を訴え、貧困層の支持を得て勢力を拡大し、一時は国土の3分の1を支配するまで力を伸ばした。ただ、不平等を打破して共産主義革命を目指すという思想自体は悪くはないんだけど、資金獲得のため、外国人を含む要人の誘拐やテロを繰り返したほか、コカインなど麻薬の生産やアメリカへの密輸にも深く関与してきた。現状を打破するために仕方なかった側面はあるが、悪いことを繰り返してきた悪の組織であることも間違いはない。政府軍だけでなく、右派民兵組織との戦いも泥沼化し、半世紀にわたる内戦では30万人以上もの死者・行方不明者が出て、その8割以上は民間人だった。
当然ながら政府は掃討作戦を行ってきたが、なかなかFARCを壊滅させることができなかったことから、遂に戦いに勝利するのを諦め、現サントス政権はキューバなどの仲介で2012年から和平交渉を進めていた。そして、最近になって、ようやく政府とFARCが和平協定に合意したのだ。
ここで政府としては、そのまま和平を進めていっても良かったのだが、敢えて国民投票を実施して国民に信を問うた。大統領は「国の将来を左右する和平合意には国民が直接関与すべきだ」なんて言ってたが、これはイギリスのEU脱退と全く同じ構図だ。政府としては、まさか反対されるとは思ってなかったので、やる必要の無い国民投票を実施したのだ。圧倒的な賛成票を得て和平を進めることで、政府の基盤を固めるつもりだったのだ。事実、事前の世論調査では賛成が5〜6割で、反対の3割台を上回っていて、賛成多数での協定承認・発効は確実だと思われていた。
ところが、開票の結果は予想を覆し、反対が50・23%、賛成が49・76%と、極めて僅差とは言え反対が上回り、和平協定は否定されてしまった。
事前の世論調査と余りにも結果が違うのは、いかに世論調査が宛にならないかを物語っており、これもイギリスのEU脱退と全く同じだ。もっとも今回は、FARCが活動する地域から遠く離れているためFARCに対する嫌悪感が少なく、賛成票が多いと予想された海岸地区が、悪天候で投票率が低かったという要因もあるらしい。
そうだとしても、「政府はFARCに対して譲歩し過ぎた」との批判が強かったのは確かだ。和平の合意文書では、FARCは武装解除して国連に武器を引き渡す一方で、今後はFARCの政党としての政治参加が認められ、選挙の結果にかかわらずFARCに一定の議席が与えられる。またFARC戦闘員は自主的に名乗り出てくれば、過去の虐殺や拷問、誘拐などの重大犯罪に対する恩赦や減刑も盛り込まれていた。このため、ウリベ前大統領を中心とする勢力は、和平合意に強く反対し、反対投票を呼びかけていた。
(石材店)「大半の日本人は感心が無いと思いますが、幹事長は嬉しいんですか悲しいんですか?」
(幹事長)「国際紛争オタクの私としては、我が事のように悩んだぞ」
多くの国民が犠牲になってきた内戦が終了するのは大変喜ばしいことだが、一方で、これまで散々悪いことをしてきた奴らを許すのは、はらわたが煮えくり返る思いだ。だがしかし、彼らを許してやらなければ和平が実現しない。これ、ほんと、ギリギリの究極の選択だ。て事で、やむを得ず賛成していた。
だがしかし、国民が反対したのだから、もう遠慮は要らない。こうなれば徹底的にFARCと戦うしかない。奴らを最後の一人まで徹底的に殲滅していくしか道は残されていない。
(2016.10.3)
〜おしまい〜
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