ユナイテッド航空で飛行機から強制排除

〜 日本では考えられない強制措置 〜



アメリカのシカゴ発ケンタッキー州行きのユナイテッド航空の飛行機内で、定員超過という理由で乗客を無理矢理引きずり降ろしたユナイテッド航空の措置に対して、全米で批判が沸き起こっている。あのトランプ大統領までが批判している

キャンセル客の発生を見越して定員より多めに予約を受け付けていたが、予想よりキャンセルが少なくてオーバーブッキングになってしまったって事はよくある話だ。日本でだって珍しくない。割安航空券はキャンセルしたらキャンセル料が発生するが、正規料金のチケットは直前までキャンセルが可能だから、どうしても直前のキャンセルはゼロにはできない。て言うか、いくらキャンセルに対するペナルティがあっても、乗客は何百人もいるんだから、中にはスケジュールが変更になる人も出るだろうから、キャンセルをゼロにするのは不可能だろう。航空会社としては、空席を運んでも商売にならないので、できるだけ空席を作りたくないから、ある程度のリスクは覚悟の上で、座席数より多い予約を受け付けるのだ。経済的に言えば、合理的なやり方ではある。
ただ、今回の事件では、定員超過と言っても、そういう通常のオーバーブッキングではなく、ユナイテッド航空の社員4人を搭乗させる必要が生じたため、急遽4人分の座席を確保しようとした措置だ。その点も、ユナイテッド航空に対する批判が強まった理由だ。

降機を指名された4人のうち3人は素直に降りたらしいが、ベトナム系米国人の男性医師が降りるのに抵抗したため、ユナイテッド航空が呼んだシカゴ航空当局の係官が強制的に引きずり降ろした。テレビで流れた映像を見ると、口から血を流している男性が床を引きずられて連れ出されており、まるでテロリストが逮捕されたかのような状況だ。男性側によると、前歯が2本折れたほか、鼻を骨折し、脳震盪も起こしたとのことだ。

この男性医師で、翌日病院で診察する必要があるからという理由で降機を拒否したとのことだが、それでこんな酷い目に合うなんて信じられない。何の罪も無い一般人に対して、暴力的に排除するなんて、文明国で起こりうる事態とは思えない
ところだが、なんと、こういう事はあり得るんだそうだ
航空会社には運送契約の規則があり、乗客はそれに従わなければならない。これは当たり前だ。飛行機に危険物を持ち込んではいけないし、機内で騒いだりしてもいけない。しかし、そういった常識的な規則だけでなく、航空会社は、飛行機が定員超過になると客に搭乗を断る権利があり、降りたくないという客に対しても搭乗を断れるんだそうだ。そして、搭乗を断られた客は、賠償金は受け取れるにしても、飛行機を降りたくないと言い張っても通用しないんだそうだ。トラブルを起こすと見なされる人物の搭乗はいつでも拒否できるという規則もあるため、「降りたくない」なんて騒ぎ出すと、逆に即座に引きずり降ろされるのだ。
で、どういう人に対して搭乗を断るかについては基準があるらしい。航空会社によって基準は異なるが、通常は障害者や大人が同伴していない未成年は最優先で、さらに航空会社のメンバーシップで高いステータスを持っている人や、ファーストクラス、ビジネスクラスの人などが続き、その他の一般ピープルでは、前もって座席指定をしている人やチェックインカウンターに早く来た人などの優先順位が高い。逆に言えば、エコノミークラスでギリギリにチェックインした人などが降機を指名される危険性が高い

これはアメリカの場合だが、たぶん規則としては日本の規則も同じようなものだと思う。ただ、実際の運用では、日本では絶対に起こりえない強制措置だ。
私も過去、「座席が足りなくなってしまったから降りてもらえる人はいませんか?」っていうアナウンスを聞かされた事が数度ある。もちろん、タダで降りろと言ってる訳ではなく、最初は1万円の現金かそれ相当のポイントで客を釣り、それでも足りない場合は1万5千円とか2万円に引き上げられる。私もかなり心を動かされて迷ったことがあるが、大抵は迷っているうちにあっさりと他に志願者が出て一件落着となる。どこまで金額が釣り上がるのか見てみたいんだけど、そこまでいった事が無い。乗客が何百人もいれば、ヒマな人もいくらでもいるんだろう。
なので、強制排除の場面も見たことは無い。て言うか、日本でなら、どんな事になっても一方的に指名して強制排除するなんて事は絶対に無いだろう。そんな事をしたら全国民から徹底的に叩かれて誰も乗る人がいなくなり、会社が潰れてしまうだろう。逆に言えば、アメリカではこれまで、こんな手荒な対応が通用していたんだと驚くと言うか呆れてしまった。今回の事件のように怪我までさせた事は無かったかも知れないが、係員が強制排除した事はあったんだろう。今回は怪我したうえに、その映像が拡散してしまったから事件になっただけだろう。

アメリカは大好きな国だが、なかなか恐ろしい国だ。

(2017.4.14)



〜おしまい〜





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