地方創生大臣の不適切発言

〜 気持ちは分かるが言葉を謹んで欲しい 〜



山本地方創生大臣が「学芸員ガン。連中を一掃しないといけない」なんて発言して物議を醸している
山本大臣は、文化財観光の振興をめぐり、見学者への案内方法やイベント活用が十分でないことを指摘して、「一番ガンなのは学芸員。普通の観光マインドが全くない。この連中を一掃しないといけない」なんて発言したのだ。

そもそも学芸員って何か。名前が小学校の学芸会とか風紀委員なんかを連想させるから、なんとなく勝手に採用できる用務員のような非正規の職員だと思っていたが、なんと国家資格なんだそうだ。博物館法で定められた専門職員であり、国内の美術館や博物館には8千人ほどの学芸員が働いていて、資料の収集や保管、展示、調査研究のほか、市民に学習の機会を提供する教育普及活動なんかも行っているとのことだ。

山本大臣の発言は、「インバウンド観光振興について助言してくれ」という質問に対する答えとして、外国の有名博物館が改装した際のことを引き合いに出して、「最初は学芸員が抵抗したが、全員クビにして大改装が実現した結果、大成功した」なんて述べたらしい。
発言が問題になったため、翌日には発言を撤回したが、その後の言い訳でも、「新しいアイデアに、学芸員は『文化財だから』と全部反対する。学芸員だけの文化財でやっていると、これから観光立国で生きていくことができない。『一掃』は言い過ぎたが、観光マインドを持って観光客に説明することを理解してもらわないと困る」なんて言ってるから、口が滑って出た失言と言うより、確信した意見のようだ

政府は「観光立国」を目指しており、海外からの観光客を惹き付ける施策を重視していることは間違いない。それに対して、学芸員は文化財保護を重視する立場に立っていることから、必ずしも観光振興という観点から活動している訳ではない。なので山本大臣の発言にも頷ける要素はある。我々が抱く学芸員のイメージってのは、独善的に自分達だけの価値観で凝り固まり、学術的な意味合いだけを重視し、専門的な論文ばかり書いて、自分達の給料の出所である納税者や入館者の意向を全く考慮していない人が多い、というようなものだ。なので、学芸員の考え方を改めてもらいたいという気持ちはよく分かる。

ただ、文化財は何でもかんでも公開すれば良いってものでもない。いや、何でもかんでも公開すべきなんだけど、保存との兼ね合いは重要だ公開することによって保存が困難になるようでは本末転倒だ。あくまでもきちんと保存できる前提での公開でなければならない。なので、観光振興のためなら文化財保存の専門家である学芸員を一掃して素人の手に委ねるってのは無茶だ。そして、いくら何でも「一掃」という言葉は、ひどい。政治家なんだから、もう少し言葉を選んで欲しいと思う。

(2017.4.19)



〜おしまい〜





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