AI兵器の規制

〜 規制は可能か? 〜



今、大流行の人工知能(AI)が敵を識別し、人の判断を必要とせずに攻撃するAI兵器が注目を集めている。

(石材店)「また渋いというかマイナーな話題ですねえ」
(幹事長)「AI兵器って、なんかワクワクしない?」


AI兵器は戦場で画像や音を解析して目標を特定し、攻撃するもので、自律型致死兵器とかキラーロボットとも呼ばれている。完全に自動化された兵器はまだ完成していないが、アメリカやロシア、中国などが開発を加速させている。これまでも、アメリカの遠隔操作型無人機プレデターなどロボット兵器は既に実戦投入されている。日本がアメリカから購入しているファランクスだって、レーダーと火器管制システムを一体化した完全自動の防空システムであり、対艦ミサイルなどを探知して自動的に撃ち落とすものだから、自動兵器だ。また、ロシアで8月に開かれた武器見本市では、カメラや機関銃を備えた最新の無人ロボット車両が出展された。AI技術の急速な進歩を考えると、人間の判断が介在しない完全なロボット兵器の完成は時間の問題だ
無人ドローンの実戦投入などで先行してきた世界最大の軍事大国アメリカはAI兵器開発の最先端にいるが、ロシアも「AI開発のリーダーが世界の支配者になる」との考えで開発を進めているし、当然ながら史上最悪の暗黒帝国である中国も「通常兵器では米国の優位が極めて大きいが、AI技術では各国の差がまだ小さく、今が勝負時だ」として力を入れている。

その一方で、AI兵器については、倫理的問題やリスクを懸念する声も多い。8月末にはAI兵器の規制を議論する国際会議がスイスの国連欧州本部で開催され、80以上の国やNGOなどが参加し、新たな国際法整備や規制の必要性、倫理問題、軍事的効果など幅広いテーマで議論が行われた。

AI兵器の開発推進派は、AI兵器を活用すれば戦場に派遣する兵士を減らせ、人的損害を減らせると主張している。また、AIを既存兵器に組み込むことで、一般市民が巻き添えになるのを減らし、戦争を効率化できるとも主張する。疲労や感情に左右される人間より、状況判断や識別能力が正確になると言うのだ。
一方、AI兵器の反対派は、逆に、システムの不具合やAIの判断ミスで一般市民が殺傷される危険性を指摘する。AIが判断を間違っても、内部の仕組みが複雑で、人間には原因が判読できないのだ。

また、AI兵器の開発推進派は「戦争が無人化し、人間の兵士が死ななくてすむから人道的だ」とか「将来的には、戦争は無人のAI兵器同士で行うようになり、瞬時に決着がつく」と主張するが、反対派は逆に「ロボットとロボットが戦う時代になれば、政治指導者や世論の開戦への抵抗感が薄れ、結果的により多くの戦争が引き起こされる」などと懸念している。

さらに、兵器としてのメリット・デメリットを超えた問題もある。人の命を奪う判断を機械に委ねて良いのか、という点だ。従来の兵器は、あくまで手を下すのは人間であり、倫理的な責任が問われるのも人間だ。だが、AI兵器が手を下す自律型兵器では、その責任の所在があいまいになる。AIが誤って人を殺傷した場合に誰が責任をとるのかも問題だ。

このように様々な問題を含むAI兵器だが、軍事用と民生用のAI技術の境界線を引くのは容易ではない。AIの技術開発にブレーキをかけることには各国とも反対だし、民間技術の軍事転用をブロックすることにも反対だ。なので、仮に直接的なAI兵器の開発に規制がかかったとしても、AIの軍事利用はどんどん進むだろう。なんだか矛盾しているようだが、きれい事を言っても、それが現実だ。
日本においては、思考停止した生きる屍の集団である日本学術会議が、大学の軍事研究に否定的な態度を打ち出したため、民生にも軍事にも使えるAI技術と安全保障をめぐる議論すら無くなってしまい、完全に蚊帳の外である。情けない事態だ。

(石材店)「結局、幹事長はAI兵器に賛成なんですか反対なんですか?」
(幹事長)「中途半端な規制に反対なだけです」


何が中途半端かと言えば、そもそも通常兵器が野放しになっているのに、なぜAI兵器だけ目の敵にして反対するのか、という点だ。もちろんAI兵器を全面的に禁止したい気持ちは良く分かる。何となく怖いからだ。でも、それなら通常兵器も含めて兵器は全面的に禁止すべきではないだろうか。もちろん核兵器や化学兵器や生物兵器も含めて全面禁止すべきだ
なぜ核兵器の廃絶が進まないどころか、核兵器保有国が増え続けているかと言えば、通常兵器では弱小な国が軍事大国に対抗するには核兵器しかないからだ。なぜ化学兵器や生物兵器が使われるかと言えば、通常兵器では軍事大国に対抗できないからだ。なので、通常兵器を放ったらかしにして核兵器や化学兵器や生物兵器やAI兵器だけを目の敵にして規制しようたって無理だ。不可能だ。やるのなら全ての兵器を全廃するしかない。世界中から全ての兵器が無くなれば、なんて平和な世界になるだろう。夢のようだ。

(石材店)「兵器が大好きで国際紛争が大好きな幹事長の言葉とは思えませんが」
(幹事長)「私も自分のお言葉とは思えませんね」


もちろん、これは夢だ。現実的に考えてみよう。戦争に用いるような兵器を全廃したとしても、世の中には悪人はたくさんいるから、彼らを取り締まるために銃器は必要だろう。刃物を持った悪人に立ち向かうためには銃器が必要だ。刃物を全面的に禁止するのは無理だし、刃物が無くても金属バットでも凶悪犯罪は起こせる。なので、少なくとも銃器は必要だ。
だが、日本ならピストル程度の銃器があれば治安は維持できるだろうが、コロンビア辺りの麻薬組織と戦うには重火器が必要だ。またアラブ諸国の圧倒的人口に囲まれたイスラエルが自国の治安を維持しようとしたら重火器が無いと不可能だろう。そうなるとお互いの兵器はどんどんエスカレートしていき、最終的には今の現実世界にたどり着く。非常に難しい問題だ。

(石材店)「じゃあ結局、どうしろと言うんですか?」
(幹事長)「AI兵器でも核兵器でも、アメリカが本気になって開発を進めて、中国や北朝鮮を抑え込んでくれるのを望むだけです」


(2018.9.14)



〜おしまい〜





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