タイ王女の首相候補騒動

〜 目が離せない面白さ 〜



3月に行われるタイ総選挙で、ウボンラット王女(67)がタクシン元首相派の政党の首相候補となった
これにはたまげた!なぜなら今のタイはクーデターを起こした軍が軍政を敷いているが、国王はそれに協力していたからだ。それに反旗を翻すように王女が対立勢力の首相候補になったのだから、こらもう大変な事態だ。

しかしながら、ある程度予想されたことだが、国王が王女の擁立に反対の意見を出したため、対立勢力側は王女の擁立を取りやめることになった。まことに残念だ。
しかし、これで一件落着かと言うと、まだまだ予断は許さない。そもそも、こんなトンでもない事態が起きたくらいだから、今後も何が起きるか分からない。

(石材店)「相変わらず海外の政治動向が好きですねえ」
(幹事長)「もうワクワクだわさ」


背景を簡単に説明すると、タクシン元首相は、それまで既得権益層から抑圧されていた地方の農民から圧倒的な支持を受けて2001年と2004年の選挙で圧勝したが、既得権益層と一体となった軍によるクーデターで2006年に失脚した
しかし、その後の2011年の選挙でもタクシン派は圧勝し、今度はタクシン元首相の妹のインラック氏首相に選出された。地方の農民からの支持は圧倒的なのだ。だが、それに対し、またまた2014年に軍がクーデターを起こし、今はタクシン元首相もインラック元首相も国外に逃亡している
それ以来、タイは軍が軍政を敷いてきたが、当然ながら、今の世の中で軍政なんて国際的に批判の的だから、ようやく3月に8年ぶりの総選挙が実施されることになったのだ。

とはいえ、軍は総選挙の仕組みを自分らに都合の良いように定めている。例えば、首相の指名には下院500議席、上院250議席の両院で過半数の指名が必要だが、なんと上院議員は軍が任命することになっている。また、投票の仕組みや区割りもタクシン派に不利に作られている
タクシン派は地方の農民や低所所得者層から根強い支持を受けていて、支持者が多いから、これまで選挙のたびに圧勝してきた。既得権益層は軍と結びついて、なんとかしてタクシン派潰しを狙っているのだ。
なので、総選挙なんて実施したって、完全に軍政のままで、何も変わらない。ひどい話だ。

ところが、タクシン派が王女を首相候補として擁立したもんだから事態は激変した
タイでは王室は絶対的な存在だ。国民から圧倒的な支持を得ているし、法的には、王室を批判すると不敬罪になり、処罰の対象になるくらいだ。軍事政権側とすれば、王女を首相候補として擁立するタクシン派を表立って批判できなくなるのだ。
こうなると、選挙ではタクシン派が圧勝し、王女が首相に就任し、いくら上院が軍に独占されていようが、軍は首相に口を挟む事ができなくなる。そして海外に逃亡せざるをえなくなっているタクシン元首相が帰国し、政界に復帰できるようになるだろう。長らく続いた軍政が実質的に終わり、再び民主主義が蘇る可能性が出てきたのだ。

王女の政界進出には、王女の独断ではなく、王女の弟である現国王の了解も得ていると思われた。これまで王室は政治とは一線を画しながらも、軍事政権を容認するような態度だったから、事態は激変だ。
ところが、実は国王は了解していなかった。あくまでも王女の独断だったようだ。ワチラロンコン国王は「王女は故プミポン前国王の長女であり、今も王室の一員である。憲法に定められているように国王は政治性のない存在であり、王室メンバーにもそれは適用される。王室の高位の者が政治の世界に入ることは、いかなる理由や方法であれ非常に不適切だ」との声明を出した。王女も政治的に中立であるべきで、政治的地位に就くことはできないと言うのだ。ま、常識的な見解だ。
この結果、タクシン派は、国王の命令を受け入れて王女の擁立を取りやめることになった。軍事政権が終わり、民主主義が復活すると期待したのに、非常に残念な結果となった。

タイでは、古くから王室は政治とは一線を画しながら、軍とは協力関係を保ち、国の安定を維持していた。軍も政治と一線を画していた頃は、それでも良かった。王室も軍も政治とは一線を画しながら国の安定に寄与していたのだ。ところが今のように軍が政権を握った現状は非常に不健全だ。これではミャンマーと同じだ。軍人がまともな政治ができるわけがない。これでは、タイの将来は暗いままだ。

しかーし、今回、このような動きが出てきた事で、今後も何が飛び出してくるか分からない。そういう意味で変化の兆しが出てきたと言えるのではないだろうか。
もう目が離せない。タイの今後に大注目だ。

(2019.2.10)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ