New attempt


第8回 環境省へのパブリックコメント

バス釣りブームも一段落となった2004年、まだまだ本格的バストーナメントにのめり込んでいる自分にとって衝撃的な出来事が起こった。「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」という略するのがむずかしい名前の法律が成立したのだ。この法律...長いのは名前だけではなく内容についてもPDF形式で14枚におよぶ長文である。簡単に説明すれば・・・

ブラックバス=特定外来生物と国が認めたらバスは駆除するものになってしまう!

バス駆除にもリリ禁にも反対できなくなる!

どんどん駆除されてバスフィールドは減少する!

バスフィッシング業界は衰退・消滅する!

そして、バスフィッシングが出来なくなる! 

というものである。
そりゃ困る、バス釣りやっているだけで犯罪者の烙印を押されるなんて!
そこで運用面に関して環境省でパブリックコメントを募集しているというので、私も様々なホームページやゴミ拾い活動で交流のあるリンク仲間のサイトなどの意見を参考にしながら、持てる知識をフルに使ってコメントを書き上げた。

正直たいへんだったので、記念にアップすることにしました。
ただし、もしこれをご覧になって自分もパブリックコメントを送りたいと考えておられる方がいましても、
絶対にこの意見まるごとコピー&ペーストして使用することは控えてください。パブコメはひとりひとりが思いのたけを表明することであり、全く同じ内容のものが次々と送られては、私自身が徹夜で書いた下記コメントを組織票扱いされて無駄なものにされる恐れがあるとともに、下記内容で指摘している部分をバスアングラーにとって不利益になる結果へと逆に導かれる場合があります。

環境省自然環境局野生生物課 御中

                    氏名:村橋 基礎
                    住所:761-**** 香川県高松市屋島**-**-**
                    電話番号:087-***-**** (FAX兼)
                    メールアドレス:jiji@mail2.netwave.or.jp

「特定外来生物被害防止基本方針(案)」についての私の意見は次の通りです。

◯基本方針(案)に賛成できる点

該当個所:7ページ(5 放つこと、植えること又はまくことの禁止)の
...特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等の行為は本法第9条の対象とはならない...
という部分。
意見内容:特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等の行為は、捕獲又は採取する直前の状態がほぼ変化なく継続されていた事と近似であり、特定外来生物拡散の意識を持って野外に放つ行為とは全く別であることから、例外なく本法第9条の対象とするのは非常に危険です。
要望:この箇所については賛成ですので、記述を修正しないでください。

◯基本方針(案)に反対する点

該当個所:1ページ(1 背景)の
...人への危険性を有するものや農林水産業に被害を及ぼすような事例も見られている。(中略)このような生物による生態系、人の生命・身体又は農林水産業への被害の問題は一般的に(中略)我が国の生態系、人の生命・身体又は農林水産業(以下「生態系等」という。)に係る被害を...
という部分。
意見内容:この基本方針は環境や生態系、生物多様性を守るためのものであるにもかかわらず、農林水産業という特定の産業分野への影響が繰り返し記述されております。農林水産業を阻害するのは外来生物に限らず、この基本方針に盛り込む必要性はありません。また、産業を含めて「生態系等」という表現があってはなりません。
要望:農林水産業への影響についての文言は削除してください。

該当個所:3ページ(1 選定の前提)の
...ア 我が国において生物の種の同定の前提となる生物分類学が発展し、かつ、海外との物流が増加したのが明治時代以降であることを踏まえ、概ね明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物の選定の対象とする。...
という部分。
意見内容:明治元年以降とした理由がその根拠をデータとして示されておらず極めて不明瞭です。理由として記述している「生物分類学の発展」「物流増加」からみれば、古くとも戦後、もしくは国際化の観点からも1970年代以降とするのが妥当です。明治時代に日本に入ってきた生き物はすでに日本の自然に溶け込んでいるものと一般認識されている現実もあります。また、現代社会や産業で管理されながら利用されている外来生物をすべてひとくくりにして選定の対象にするのは、さまざまな問題や混乱が生じます。
要望:「明治元年以降」という線引きに反対します、「1970年代」に記述を修正してください。
また、「社会や産業で管理されながら利用されている外来生物は選定の対象としない」という記述を追加してください。

該当個所:4ページ(4 特定外来生物の選定に係る意見の聴取)の
...(1)生物の性質に関する専門の学識経験者からの意見聴取
(中略)
オ 学識経験者個人からの意見聴取だけでなく、必要に応じ、関連する学会から知見を収集するとともに、当該生物を利用する者等関係者の意見を聴取することを検討する。...
という部分。
意見内容:特定外来生物の指定にあたり学者や利用者から参考意見を聞くことは必要です。しかしながら記述アからオまで5項目の内の4項目が学者から意見を聴く方法で、最後の1項目でようやく、利用者が記述されており、しかも利用者の意見聴取は「検討する」という記述にとどまっていることは適正ではありません。
要望:生態学、農学、林学、水産生物学者の意見によって特定外来生物を指定すること、利用者の意見聴取は「検討する」という記述について反対します。それ以外に倫理学、社会学、経済学の学者からも意見を聞くことを記述してください。「利用者の意見については委員会形式とし、学者の意見と利用者の意見を対等に評価する」といった内容の記述に修正をしてください。

◯基本方針(案)に追加・訂正を求める点

該当個所:4ページ(3 選定の際の考慮事項)の
...特定外来生物の選定に当たっては、(中略)社会的に積極的な役割を果たしている外来生物に係る代替物の入手可能性など特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮し...
という部分。
意見内容:外来生物のなかでも、社会・経済・文化・教育に役立っているものの存在を無視してはいけません。
要望:記述のなかに「社会的、経済的に役立っている、また文化や余暇という生活のなかにすでに溶け込んでいる外来生物については、指定するにあたり充分に配慮をする」という内容を追加してください。

該当個所:9ページ(計画的な防除の実施)の
...(2)計画的な防除の実施
特定外来生物が、既に広範囲に蔓延して生態系等に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある場合には、国、地方公共団体、民間団体及び土地の所有者・管理者等の関係者が連携して計画的に防除を進めることが必要であり、(中略)
ア 協議及び検討の場の設置
科学的知見及び地域に根ざした情報に基づき、合意形成を図りながら防除を実施するため、学識経験者、関係行政機関、自然保護団体、地域住民のほか、必要に応じて農林水産業団体や狩猟団体等からなる協議のための場を設け、防除実施計画の作成、実行方法についての検討、防除活動の評価等を行えるようにする。この場合、必要に応じて生物学等の専門的な観点から防除実施計画の実施可能性及び実行状況を分析・評価するための検討の場を、別途設ける...
という部分。
意見内容:「防除実施計画の作成、実行方法についての検討」について、利用者を抜きにして勝手に駆除計画が作られたり実行されたりすることは、利用者にとってたいへん迷惑なうえ混乱が生じる恐れがあります。十分な調査が行われているのか、資料はどのように集められているのかなど、利用する側から意見を述べられるようにする必要があります。
要望:「防除実施計画の作成、実行方法についての検討」および「防除実施計画の実施可能性及び実行状況を分析・評価する場」について、利用者も検討の場に参加できるよう記述してください。

該当個所:10ページ(防除の実施に当たっての留意事項)の
...(3)防除の実施に当たっての留意事項
(中略)
オ すでに国土保全等において大きな役割を果たしている特定外来生物については、当該特定外来生物の果たしている役割を考慮し、防除の実施に際して関係者と十分調整を図るものとする...
という部分。
意見内容:ここに該当する「国土保全等」「関係者」とは本法の趣旨からして植林など植物のことについて想定したものになっていることは明らかであり、留意すべき面が不十分です。
要望:「オ すでに国土保全等、社会的、文化的、生活的な面において大きな役割を果たしている(後略)」という記述にしてください。

該当個所:10〜11ページ(防除の確認・認定)の
...(4)防除の確認・認定
ア 防除を行う主体は、原則として、下記の要件を満たす者とする。
1)緊急的に対応する防除、原則として防除の公示に沿う防除実施計画を策定し、当該防除実施計画を実行する財政的、人員的能力を有していること。
2)被害の発生地域の地理及び特定外来生物の存在の状況を把握している者が含まれていること。
3)特定外来生物が鳥獣の場合には、原則として使用する猟具に応じた鳥獣保護法の狩猟免許を有する者が行うこと。なお、従事者が適切な捕獲と安全に関する知識及び技術を有している団体による防除については、免許非所持者を含めることができる。
4)従事者に対し防除の内容を具体的に指示するとともに、従事者の台帳を整備することができること...
という部分。
意見内容:まず防除体制について不十分な部分があります。混獲や誤捕獲を回避することや、駆除が駆除計画にそって正確に行われていることを確認するために、不特定多数による駆除の抑止も必要不可欠です。該当する外来生物によって社会的、経済的、文化的に役立っている人、いわゆる「駆除をしたくない人たち」にまで、駆除を強制したり強要することが絶対にあってはなりません。次に、「緊急的に行う防除」の定義が曖昧です。また、個人の主観や動機という勝手な理由によって、無作為な防除、計画にない防除活動が行われることがあってもいけません。
要望:「不特定多数の人を駆除に強制的に参加させない」という内容を追加記述してください。「計画にない防除の禁止」を盛り込んでください。

該当個所:10〜11ページ(防除の確認・認定)の
...(4)防除の確認・認定
イ 防除の実施に関し、原則として、捕獲等を行う区域における安全の確保、静穏の保持、他の鳥獣の生息等への配慮がされているとともに、下記の要件を満たしていること。
1)鳥獣保護法第12条第1項又は第2項で禁止されている方法は使用しないこと。
2)鳥獣保護法第15条に基づき指定された指定猟法禁止区域内では、同区域内において使用を禁止された猟法は使用しないこと。
3)鳥獣保護法第35条で銃猟禁止区域として指定されている区域においては、銃器による防除は行わないこと。
4)鳥獣保護法第36条に基づき危険猟法として規定される手段による防除は行わないこと。
5)銃器による防除を行う場合は、鳥獣保護法第38条において禁止されている行為を行わないこと。
6)防除を行う者は、防除を行う時は、確認又は認定を受けていることを証明する書類を携帯すること。
7)その他防除の内容は、他の鳥獣の保護上支障のない内容になっていること...
という部分。
意見内容:駆除が計画に沿って適切に行われているのかを確認・認定するためには、「不特定多数の人を駆除に巻き込まない」ためにも、台帳の整備だけでは不十分です。混獲や誤捕獲を回避し、駆除が適切に行われなかった場合の責任の所在を明らかにする必要があります。また、鳥獣保護法については遵守することを詳細に述べていますが、それだけでも不十分です。たとえば、特に内水面に関しては電流によるものや無謀な水抜きなど、他の生物への影響が非常に大きくなる方法が行われる可能性があります。
要望:駆除の確認・認定を正確・適切に行うため、「駆除を行うすべての人を登録制にして、駆除する際には登録証明を携帯する。登録している人以外は、駆除が出来ないようにする」という内容を追加記述してください。また、漁業法等他の法律についても同様の定義を行うことを要望します。

私はバスフィッシングをスポーツとして競いあう団体に所属している一選手です。釣りに対して趣味の世界からさらに深い領域へと日々練習を積み重ね、近年増え続け問題にもなっている護岸整備などの公共事業やとどまるところを知らない工業排水等により大切に育まれてきた自然環境や水質が悪化の一途をたどるなかでも、一匹との魚との出会いに情熱と喜びを求めて竿を振っています。水産資源を生業としている人達にとっての有効魚種などとは比較にならないかもしれませんが、私にとってブラックバスは大切な存在であります。価値観の相違こそあれ、自然を愛し自然の恩恵を受けて人生を豊かにしているという気持ち、いつまでも自然環境を守ってゆこうという気持ちは、お互い真剣に持っているものだと思います。小学生になった我が家の子どもたちが、はじめて自分たちだけの手で釣った魚はバスでした。剣術しか知らなかった時代に外来の遊びとして輸入されたベースボールが今や野球として子どもたちに人気があり国民的スポーツとして産業として栄えたように、現代の子どもたちにとってブラックバスという魚はすでに最初から釣れてあたりまえの存在になっているのではないかと思っております。戦前から移入されており、それこそ30代中ばの私が小さい頃から釣っていたブラックバスは個人的にはもはや帰化された魚のような感覚さえあります。そして私自身今後もずっとバスフィッシングを続けたいと願っており、子どもたちが大きくなっても、楽しくバスフィッシングができる素敵な未来を残してやりたいとも願っております。ブラックバスが全国に拡散した原因に釣り人の介入があると言われていることや、ブラックバスの食性により貴重とされている在来種に少なからずの影響があることは承知しております。決して都合の悪いことに目をつぶって釣り人の権利だけを主張するつもりはありません。定められたルールにのっとってバスフィッシングを続けていきたいと望んでおります。しかしながら、子どもと一緒にバスを釣りあげて「この魚は日本の魚を食べちゃう外国の悪者の魚だからハイ殺しましょうね」なんて、絶対に言えません。たとえ毒ヘビやサソリと並んで全世界で認識される凶悪な害魚であるとしても、我が家族にとっては「楽しく遊んでくれるおさかな」です。そういった一般への溶け込みをしている生物という観点というものを、どうぞ考慮くださいますようあらためてお願い申し上げます。最後になりましたが、今回のパブリックコメントにより、さまざまな立場の多くの声を聞いていただける機会を与えていただけた事に対しまして、深く感謝いたします。

以上

2004.7.24