JIJIの解答その3


JBジャパンB-545
村橋基礎(ムラハシモトキ)33歳
香川県高松市屋島***-***
電話***-***-****

日本バスプロ協会・日本バスクラブ 御中

お世話になっています。
さて、先日お送り頂いた資料についての意見を述べさせて頂きます。

資料B<漁協青年会からの要望書>について

『釣り』という趣味は、雄大な自然を前に季節の移り変わりを感じながら、大人でも子供でも遊ぶことができる素晴しい楽しみであると言えます。かのヘミングウェイも、「釣りに出会った者は人生の最高の喜びを手に入れたのだ」と著書のなかで語っています。私達バフィッシングをスポーツとして競いあうアングラーは、魚とのかけひきにおいて趣味の世界からさらに深い領域へと日々練習を積み重ね、近年増えつづけ問題にもなっている護岸整備などの公共事業やとどまるところを知らない工業排水等により、大切に育まれてきた自然環境や水質が悪化の一途をたどるなかでも、一匹の魚との出会いに情熱と喜びを求めて竿を振っています。水産資源を生業としている人達にとってのホンモロコなどとは比較にならないかもしれませんが、私達にとってブラックバスは大切な存在であります。価値観の相違こそあれ、自然を愛し自然の恩恵を受けて人生を豊かにしているという気持ち・いつまでも自然環境を守ってゆこうという気持ちは、お互い真剣に持っているものだと思います。

さて外来魚問題ですが、もともと固有種ではなく日本の湖沼に帰化している魚というのはさまざまです。ブラックバスやブルーギルよりも大型ではるかに長生きをする鯉の仲間でさえも、外来魚として全国に分布しています。しかしブラックバスという(とても警戒心の高く臆病な)魚のみが、その食性やゲームフィッシュとしての認知度の高さからピックアップされて『害魚論』の標的になっているのも事実です。とりわけここ数年は、増え続けるバス釣り人口に比例するかのごとく、ゴミ問題や違法駐車など釣り人のマナーの悪さがメディアを通して広まり、バスアングラーだけに焦点を絞った『害人論』という言葉さえ生まれました。
現在ブラックバスに限って申せば、その数は第1次バス釣りブームが起こった十数年前と比較して大幅に激減しています。これは私達バスアングラーのみならず、毎日のように湖面に出ている漁業関係者の方も肌で感じて判っていると思います。もちろんこの現象は外来魚駆除活動を行なっている湖沼においてだけ表われているのではありません。つまりは、その要因となるものは自然環境の変化に他ならないものだと考えざるを得ません。ブラックバスにとって本来の温暖な生息地である米国フロリダ周辺と比べれば、四季折々の気象変化に豊む日本の風土は決して過ごしやすいものではありません。日本一の湖である琵琶湖においても、その個体は最大で70cm程度にしか成長していない(本場では100cm近くにもなる場合がある)事からも判断できるように、ストレスのなかで生きながらえているというのが現状です。
そのため一時は異常に繁殖した個体数も次第に減少し、バスのベイトフィッシュともなるフナやワカサギなどの数が急増しているといった調査結果さえ確認されているほどです。これはむしろ生態系のバランスが保たれてきたことを意味するものではないでしょうか。歪んだものをなおし汚れたものを浄化する偉大な力を持っている自然の一部として、琵琶湖に生息するブラックバスも落ち着きはじめたかなという感じをうけます。
バスが入ったために絶滅の危機にさらされている魚種というのは確かにあるでしょうが、それはあくまでも減少化が早まっただけであり、たとえバスがその湖沼に存在しなくても、いずれ自然破壊・環境変化によってその魚種が生息できなくなる湖沼へと変貌をとげていかざるを得ないものであった。つまりブラックバスは触媒という役割だけのものである。という認識を持たれ学会に発表した人物が、私の地元香川大学に教授としております。私もまったく同意見です。
貴重な水産資源を永く守り続けるのに簡単明瞭で画期的な策なんてありません。生意気を言うようですが、何よりもまず自分の足元のゴミを拾うことから続けてきたならば、もう少し自然環境が保護されて資源減少にちょっとでも歯止めがかかっていたのではないでしょうか?私達バスアングラーにとって『リリース禁止』という事は、自分が食べる稲米さえも減反しろと言われたようなものであります。相手の都合を考えずに、都合が悪くなったものを頭ごなしに全面排除するという考えは、とても危険なものじゃないかとさえ感じてしまいます。それは当然『ワーム使用禁止』という思考にもあてはまります。なぜワームだけなのでしょうか?環境全体への悪影響を懸念すれば、ブラックバスに限らず釣り人ほぼ全てが使用している鉛のシンカー(バスアングラーの多くは自発的にタングステンやスズ素材のものに切り替えている)をも視野に入れた提案をされるべきであるし、はたして漁業関係者の方が使用しているエンジンオイルは私達JB・NBCトーナメンターの多くが高価にもかかわらず使用し、他アングラーにも推奨しているような生分解成オイルなのだろうかという疑問すら湧いてきます。矛盾をあげればキリがありません。もちろん環境ホルモンが環境や人体に悪影響を及ぼすことは理解していますので、私達もそういった物質を含む種類のワームを判別さえできればそのワーム使用を止めて、環境ホルモンを含まないワームに限定して使用することも可能ではないかと思います。今後、製造メーカーも含めて慎重に話しあうべき事でしょう。しかしそもそも、私達はワームのみならず仕掛けの全てを水中に残すこと(ラインブレイク)を必死で避けて釣りをしているのですけれども・・・
ですから特に、仕掛けが引っかかりやすいエリなどの漁具には近付かないようルール決めもしています。危険回避の意味も込めて操業時などは特に注意する旨、トーナメンターなら当然の認識であります。しかしあらためて要望されるくらいなのですから、一般アングラーの多くはいまなお漁具などを格好のストラクチャーとして攻めているのかもしれません。私達JB・NBC選手一人一人が率先して漁具には近付かないよう啓蒙活動に努めるべきでしょう。
またフローターや航路・船溜を攻めるボートだけでなく、沖あいの浅瀬に立込む者や足場の悪い場所で陸釣りをするアングラーに関しても、いかに危険なものか理解させるよう今以上に働きかけていくことも私達の使命ではないかと思われます。