陸海軍と海上輸送
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八郎平は、戦死したとはいいながら、戦闘要員であったわけではない。海軍嘱託としての船舶職員であり、いわゆる軍属である。従って、陸海軍と海上輸送の関係について、しっかりと理解しておかなければ、八郎平の戦死も理解できないこととなる。
にわか仕込ではあるが、陸海軍と海上輸送について纏めてみた。
海上輸送の仕組みは、現在でも陸上輸送とは異なった仕組みで行われているようである。それは、船舶の所有は船主会社(オーナー)であり、運航は海運会社(オペレーター)である。もちろん、海運会社が自社船を所有する例はあるがこのような場合、船主兼海運会社の事例と考える方が全体の理解がしやすいという。群小船主会社と巨大海運会社の並立は日本海運の特異現象とも言われているのである。
陸海軍と船舶の関係を見ると、海軍にとって、自社船は海軍艦艇であり、民間の商船徴傭は船主会社からの借用であるから、さしづめ海軍は船主兼海運会社なのである。
船主会社からの借用船は、傭船と呼ばれていた。今の言葉で言えばチャーターであろう。この傭船が船舶と船員を一組としての傭船か、船舶だけの裸傭船かの違いがある。現在の陸上交通で例えると、タクシーとレンタカーの違いである。
海軍の傭船の内、武装して軍艦代用に使用するものは特設艦船と呼び、裸傭船である。太平洋戦争では、一三七三隻、二四二万総トンが傭船され、八三六隻、一八六万総トンが沈没したという。海軍が船舶と船員をセットで徴用したものを一般徴傭船と呼んでいるが、約一〇〇万総トン沈没したという。八郎平の乗務した第一若松丸は、この一般徴傭船である。
これに対して、陸軍の自社船は皆無に近く、陸軍運輸部は船員に相当する軍人・軍属は皆無であったという。
陸軍の徴傭船には、裸傭船はない。全て、船員と船舶のセット徴傭である。
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