水は世界を駆けめぐる
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田所さんからの事前連絡の文書に次のような一節があった。
「現地到着は、日曜日です。その日の飲料水は日本にてご用意下さい。」
そこで、私たちは、関西空港でミネラルウォーターやウーロン茶を買い込んだ。何故か寿里庵という食堂のレジで売っていたのである。
国際線でポートモレスビー入りした私たち一行は、国内線に乗り換えてラバウルに行く予定である。ところが、飛行機の接続が悪くて、6時間近くも空港で待たなくてはいけない。
私たちは、旅行社の配慮で空港近くのゲートウェイホテルで休息することとなった。
ホテルのプールサイドでコーヒーを戴いていた私は、何気なく、自分のリュックから関空で仕込んだミネラルウォーターを取り出し、一口呑んで、そのラベルを見た。「evian」とある。evianと言えば、もちろん原産国はフランスである。
この水は、フランスで採取されPETボトルに詰められ、日本に輸入され、関空で私に買い取られ、また、飛行機に乗せられ、パプアニューギニアに運ばれ、やっと私に呑まれ、その役目を終えたこととなる。
私は、「水は世界を駆けめぐる。」と言いながら、そのボトルを妻に渡した。
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