蛍の木


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蛍の木(つわもの之碑第8輯から)  ケビエンでの第2夜は、蛍の木の観賞に出かけることとなった。午後10時の出発にセットしてあるという。
 随分遅い出発と思ったが、遅い方が蛍に出会える確率が高いという。十二時になっても出会えないときは、帰りましょうと言うことで出発した。
 車は、街灯も何もない真っ暗な道路を高速で走っていく。驚いたことに、真っ暗な夜道を歩いている人が居る。それも1人や2人ではない。結構三々五々と歩いているのだ。彼らは、テレビやパソコンのような目に悪い物を見ていないから、目が弱らないのだ。と言う説明に笑った。
 高速道路のような1号線をしばらく走ると、右に折れて山道にはいる。カウト(KAUT)ロードだと説明された。しばらく走ると、蛍の生息地に来たから、スローで走るとのこと。居た居た。確かに蛍である。
 車から降りて見ていると、数がだんだん増えてきた。蛍であることは確かであるが、日本の蛍とは全く違う。と言っても捕まえたわけではないから、姿形が違うというのではない。光り方が違うのである。
 一口に言ってしまえば、クリスマスツリーを見ているようである。木に留まった蛍が一斉に点滅している。光りながら飛んでいる蛍も居るにはいるが、殆どが木に留まり一斉に点滅するのである。
 日本の蛍は、飛びながらランダムに光るところが優雅なのだが、ニューギニアの蛍は機械的なのである。
 ここの蛍は、30分の1秒しか光らないと言う。肉眼は残像を捉えているのだそうだ。何とか写真に撮ろうとして、条件を色々変えてシャッターを切ってみたが何も写っていなかった。
 後で、気が付いたのだが、ニューギニア方面遺族会の機関誌つわもの之碑第8輯の表紙には、今森光彦氏の写真として、蛍の木が写っている。この写真の星の長さを見ると、三脚を据えないで手持ちのカメラに写る訳がないと思った。

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