大腸がん

大腸がんは増えています
40年前と比べて男性で9倍、女性で7倍も死亡数が増えています。その理由は食生活の西欧化によると考えられています。増えているのは主としてS状結腸がんなどの結腸がんで、直腸がんの増加は結腸がんほど著しくはありません。
結腸がんと直腸がんを合わせて大腸がんと呼びます。

大腸がん
 大腸がんは年々増加しており、女性では近い将来大腸がんががんの部位別死亡順位の第1位になるだろうと予測されています。もともと日本人は欧米人に比べると塩分や炭水化物の多い食事が主体であるなど食生活の違いもあり、大腸がんは少なかったのですが、肉や乳製品などを好んで食べるようになってから、だんだん胃がんが減り、大腸がんが増えて欧米型に変わってきている傾向にあります。 
大腸も胃と同じ様に管腔状になった臓器で、中を消化された食べ物が通ります。壁の構造は胃に類似しており、一番内腔面は粘膜と呼ばれる部分が覆っていて、粘膜の下に粘膜筋板という膜があり、その下に粘膜下層と呼ばれる軟らかい組織があり、ここに血管やリンパ管などが多く分布しています。その下に腸を動かすための筋肉の層があり、最外層は腹膜で包まれています。

早期大腸がんの定義も胃と同じで、発生した粘膜かあるいは粘膜下層までにとどまっている浅いがんということになります。どんなに横に広がっていても浅ければ早期がんですし、小さくても深ければ進行がんになります。発見される頻度ですが、大腸では内視鏡検査でポリ−プと呼ばれる粘膜の隆起性病変が見つかると、内視鏡下に切り取ることが多いのですが、その約10%が早期大腸がんといわれています。ポリ−プの多くはまだがんになる前の腺腫といわれる良性の腫瘍ですが、腺腫の一部にがんが発生している場合がしばしばあります。早期大腸がんには症状はほとんどなく、むしろ強い症状が見られたら進行していることが多いようです。ただし、症状としては気づかなくても、多少出血して便に血が混じっていることが多いので、大腸がんが疑わしい人を拾い出す検査として便潜血検査が行われています。この検査で異常がある場合には、バリウムを腸に入れて調べるX線検査、あるいは内視鏡検査が行われます。
 早期大腸がんの5年生存率は胃がんと同じように90%以上といわれています。
一方、固有筋層以下に広がるようになると、血管やリンパ管の中に入る率も高くなり、転移の危険性も飛躍的に高くなり、当然予後も悪くなります。
 肉眼的形態は、早期の大腸がんはほとんどがポリ−プの形をとっています。進行するとポリ−プはより大きくなり、形も複雑になり、しばしば真ん中が崩れて潰瘍を作ったりします。

 
便潜血反応について
便潜血検査は、肉眼的にみえない便中の血液反応(ヘモグロビン)を調べることにより消化管出血(胃や腸からの出血)を診断する検査方法です。
検査法の種類には触媒法や免疫法がありますが、最近は免疫法が用いられる頻度が多くなっています。この方法は、免疫反応を利用して人のヘモグロビンだけを検出するため、食事や鉄剤(貧血の薬)の影響を受けず、また上部消化管出血(胃や十二指腸の出血)ではほとんど陽性とならないため、大腸がんなどの大腸出血(下部消化管出血)の診断に広く用いられています。
しかし、痔などの肛門出血や大腸ポリープ、大腸炎などの大腸がん以外の病気でも陽性になったり、逆に大腸がんでも陽性にならない場合もあり、その判断には専門医の意見をよく聞くことが重要で、安易な解釈をしないようにしましょう。
また、腹部症状や便秘などの便通異常のある場合は、便潜血陰性でも注腸検査や内視鏡検査が必要な場合があります。
医師とよく相談の上、正しい処置を受けて下さい。

便潜血検査は簡便で、外来での経過観察や集団検診などのスクリーニングには適していますが、陰性だからといって安心はできません。
40歳代になったら、症状がなくても年に一度は大腸の精密検査を受けるよう心がけましょう。

便の採取方法は簡単です。具体的な採取方法については、使用する採取キットによって多少の違いがありますので、各医療機関、健診機関で説明を受けて下さい。

大腸がんの危険信号
大腸がんも小さいうちは、ほとんど症状がでてこないことがあります。
しかし、がんが大きくなってくると、下の(1)〜(8)のような症状が現れてきます。まず日頃から体調をチェックする習慣を身につけ、危険信号に早く気づくようにしておきましょう。

大腸がんの危険信号

(1)便に血液が付いたり、混じったりしている。
(2)よく下痢や便秘になる。
(3)排便をしても、まだ残っている感じがする(残便感)。
(4)少量の粘液や泥のような便がでて、トイレに何度も通ってしまう。
(5)原因の判らない貧血がある。
(6)お腹にしこりがある。
(7)お腹が張る。
(8)何となく下腹が痛い。

もしも便潜血検査で陽性の結果がでても、大腸がんときまったわけではありません。
 また大腸がんは比較的進行が遅いので進行がんでも早いうちに見つけて治療すればほとんど治ります。
ですからふだんからの体調チェックと、年に一回は大腸がん検診を受けることが大切です。

大腸がんの予防(1次予防)にも気をつけよう
大腸がんにならないよう予防することも大切です。
西欧型食事をできるだけ避けること、すなわち、動物性脂肪(肉)をひかえ、野菜、果物(食物繊維)をできるだけ多く食べることが大腸がんの予防になります。

食物繊維が、大腸がんや心臓疾患、糖尿病を予防
昔、食物繊維は消化吸収されないので何の価値もないと思われていました。
しかし、今日では大腸がんの予防になると注目を浴び、更に最近の研究では、食物繊維はがんや心臓疾患だけでなく、糖尿病等の予防にも効果があることが分かっています。
1992年(平成4年)のハーバード大学医学部の調査で、1日に12gしか食物繊維を食べない人(男性)と、30g食べている人(同)とでは、
食べない人の方が、結腸の前がん状態を起こした割合が2倍に達していることが判明しました。
その理由として、多く食べた人は、食物繊維によって便の量が増えたことから、腸内の発がん物質が薄められただけでなく、早く体外に排出されたのが原因と見られています。
また、1日の食物繊維摂取量が30gの人は、15gの人に比べて、心臓発作に悩む率が3分の1という調査結果もあります。
糖尿病の予防にも効果があります。食物繊維は胃の中に滞留する時間が長いので、消化吸収のスピードが遅くなり、血糖値の変動幅を少なくするからです。
がんや心臓疾患の予防にもなるという食物繊維をもっとたくさん摂取する必要があります。
大腸がんだけでなく、生活習慣病とよばれる高血圧、糖尿病の予防にも役立ちます。また、適度な運動をすることも大腸がんの予防に役立つことが知られています。

食物繊維が見直されています
食物繊維は人の消化酵素では分解されない上に栄養素の吸収を阻害する非栄養素として排除されてきた歴史があります。
精製して取り除き、排除する努力がされてきたのですが、これが今やガンや虚血性心疾患、高血圧や糖尿病、高脂血症、胆石などの
生活習慣病と関係が深いことが明らかにされ一躍注目を浴びることになったのです

食物繊維は水溶性と不溶性に大別されます。主な働きとして
 水溶性食物繊維は
 ◎コレステロール低下作用
 ◎血糖の急激な上昇を防ぐ
 ◎血圧の上昇を抑制する働きがある。
 ◎吸水膨潤作用(水を吸って膨らむ)があり満腹感を生じやすい。
果実・野菜、こんにゃく・山芋、オーツ麦・豆類、寒天、昆布・わかめ、紅藻類に多く含まれています。

 不溶性繊維は
 ◎食物の消化管通過時間の短縮や便量の増加や快適な排便に有効である。
(大腸がんや大腸憩室症の抑制)
野菜・穀類(ふすま)・豆類、、未熟な果実、ココア等に多く含まれています。
尚、最近の研究では食物繊維はまったく消化分解されないのではなく、腸内細菌によって発酵し脂肪酸を生じこれらが体内での
ホルモンの分泌を促進や抑制し、糖尿病や高脂血症に有効であるといわれています。
※寒天は熱いお湯に解けるので水溶性の分類になっていますが、口に入る状態のときは不溶性でその生理作用もどちらかというと
不溶性に分類したほうがよさそうです。(コレステロール低下作用などはない) 食物繊維の摂取減少のもたらすもの
食物繊維の摂取の減少は、便秘の原因になるだけでなく、動脈硬化や高血圧、糖尿病の発生やその治療にも密接な関係があります。
また、食物繊維の少ない食事は高脂肪食であることが多く、低繊維と高脂肪のダブル効果で現代病の要因となっています。
この食物繊維もドリンクなどで安易にとるより、豆類、芋類、海藻類、野菜類など で積極的に取った方が良いのです。なぜならば
『食物繊維が多く取れるような 食生活スタイル』が、ビタミンやミネラルを多く含み脂肪の摂取過多を防ぐ 食事になるからです。

食物繊維は糖尿病を予防する。
食物繊維を多く含む食品は胃内滞留時間が長く上部小腸での吸収が遅れ急激な 血糖の上昇を防ぎます。
食物繊維は腸内で脂肪を吸収して排泄します。
過信は禁物!!
食物繊維の効果は消化吸収されにくいことにあります。 疾病の予防効果を期待するあまり取り過ぎると、ミネラルなどの
吸収阻害を おこしたり胃腸が弱っている人や、胃潰瘍の人などは胃腸に負担がかかるので 食べ過ぎは禁物です