魅 館 果 汁

<00年2月上旬>


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2月10日(木)

 H2に続いてM5も打ち上げ失敗で189億円が燃え尽きた。

 今日は学生会による卒業生送別会が開かれた。 各クラスが卒業生に贈る様々な出し物をする会である。 とはいっても現代っ子のこと、自分たちから盛り上げようという気運はあまりない。 学生会行事なのであまり口出ししないことにしているのだが、今日も花束や色紙贈呈といった安易なものが多かった。 そんな中で詩の朗読(BGM付)やビンゴ大会、何人かの卒業生を壇上に上げてのアームレスリングや流行りの心理テストなどが割と受けていたようだ。 こういうときに誰を壇上に上げるのかというのは、本当は結構むずかしくて気を遣うものだ。 ところが、そんなことをあまりやったことのない学生が壇上から選ぶので、つい目につきやすいおとなしそうな子、要するにひとりでぽつんとしているけれど目はちゃんと壇上を向いている子、別の言い方をするとちょっと周囲から浮いている子になってしまう。 ちょっと間違うと馬鹿にした笑いになってしまうのだが、今回はまあ楽しい笑いだった、と思うのだけど。
 さて、最大の目玉として予定していたのがパイ投げ大会である。 在校生が投げられ役になって卒業生に鬱憤を解消してもらおうという企画。 最初の一人はそういうのが好きな卒業生が名乗り出て一発かましてくれたのだが、その後が続かない。 相手をよく知っていればまだしも、確かになかなかできないものだ。 しかも二発目を食らった時点で唇を切ってリタイヤ、替え玉登場となった。 替わった学生は部活をやっていたので、その関連で何人かでてきてくれて少しウケてきた。 ところが、最高の盛り上がりは思いもかけないところから湧き起こった。 さっきも書いたちょっとおとなしめの友達も少ないある学生が自ら志願してパイ投げに出てきたのだ。
 「あれっ、あの子ってあんなとこに出てくるような積極的なとこがあるんや」
そんな声があちこちで起こっていた。 確かにびっくりである。 で、思いっきり投げたパイは至近距離からなんと大ハズレ。 天然で湧かせてくれる。 2度目は命中したが、なかなか味のあるところを見せてくれた。 滅多にやれることではないから、やってみたかったことのようだ。
 私にも投げさせてくれたら、「○○○の×××野郎!」と叫んで……いやいや、そんな下品なことは言わないよ。 (一体、○や×にどんな言葉が入るんだろう?) 「響子さん、好きじゃあ〜!!」では五代くんだし、「学会に復讐してやるんだあ〜!!」では成原博士だし……。 (うっ、マンガはあまり詳しくないからこれ以上続けられんじゃないか) 「ジス・イズ・ア・ペ〜〜ン!!」(合掌)では学生たちにはわからんだろうしな。 だめだ、こりゃ。


2月9日(水)

 高校野球の監督がゴルフ大会でプロ野球関係者と写真を撮って警告だとさ。

 Internet秘宝館というページがある。 ネット上に流れているさまざまな怪文書や謎画像を集めたところで、いわゆるチェーン・メールの類いが揃っているのだ。 コンピュータウィルスのデマ・メールや幸福のまたは不幸のメール、有名どころでは「ドラえもんの最終回」などがある。 自宅にはまだ届いたことがないが、職場には友人知人から時々送られてくる。 「サザエさんの次回予告」や「鉄腕DUSHの実験メール」の他、小話集、心理テストなどなど。 そんな中のひとつに「痛みの基準はハナゲ」というのがある。 これは元ネタがやゆよ記念財団というページだという。 早速、訪れてみるとなかなかおもしろい。 こんなところからパクッているのか、著作権もなにもあったもんじゃないな、と思いつつ、探してみるとかなり過去の記録(95年11月)に確かに残っている。 私が受け取ったのはInternet秘宝館に保管されているものと同じものだが、原版は少し違っている。 元ネタは「痛みの大きさを表わす単位としてハナゲを用いることが検討されつつある」というニュース形式であるが、これにさぶいギャグに対する単位「カエレ」や快楽度の単位「アハン」を加えるなどの改竄がなされている。
 このメールをもらった時点では元ネタがあることも知らず、さらにこれをネタにして捏造した話を友人にまわして遊んでいた。 でも、それがさらに尾鰭をつけて別のところにまわっていったかもしれないのだから、チェーン・メール化を促進していたともいえる。 チェーン・メールの問題を深く考えているわけではないが、悪質でなくてもトラフィックの点からよくないとされているそうなので、控えるべきかなあという立場になりつつある。 今回みたいにパクリの場合は特にだ。 まあ、難しいところではある。 だから、ちょっとだけ遊ばせてもらおう。
 「この前、酔って自転車に乗ってたら、すっころんでしもて足打ったんよね」
 「自転車だって酔払い運転になるんやから、気をつけなあかんで」
 「免停になるわけやないし、まあええやん。 でも罰金とかあるんかなあ」
 「それは知らんけど、危ないやん。 怪我せんかったんか」
 「打撲かなあ、まだ痛いんよ。 50ハナゲくらいかな」
 「そのハナゲって、政府は使え使えいうてるけど、どうもなじめんのよ」
 「まあ、慣れやね。 マニュアル読んだ?」
 「ちらっとはね」
 「とりあえずは基準が大事やからね。 麻酔なしの抜歯が5キロハナゲとか、すらすら出てこな」
 「でも、こないだそれほんまは500ハナゲくらいちゃうんって誰か言うてたで」
 「あかんよ、裏マニュアルに惑わされたら。 ちゃんと政府公認マニュアルの通りにせな、青い光見るよ」
 「チェレンコフ光は別の話やろ。 けど、ようわからんのよね。 虫歯なったことないし……」
 「テーブルの縁にすねをぶつけたことはあるやろ。 それは?」
 「さあ、1000ハナゲくらい?」
 「そんなことないって、12〜13ハナゲやって用例集の最初に書いてあるで」
 「でも、タンスの角に足の小指をぶつけたら200キロハナゲって聞いたし」
 「完全に裏マニュアルに毒されとるな。 中性子線浴びるよ」
 「そやからそれは違うって。 ステンレスバケツにぶつけたわけやないし」
 「タンスの角に足をぶつけるのって、少し前から必ずしも痛みとは関係なくなってきてるやん」
 「何のこと? ぶつけたら痛いで」
 「でも、どっちかというたら熱気があるというか、蒸し暑いというか、色っぽいというか」
 「???」
 「ほら、よく言うてたやろ。 タンスにゴンゴン、イザムンムン、って」
 「……ふるっ」


2月8日(火)

 吹雪だぁ。

 ちょっと洒落にならんくらいの寒さだ。 一時、風雪波浪かなにかの警報も出たという。 ほとんど外に出ないから関係ないようなものだが、ちょっと出ると暖房の効いた部屋とのギャップに身体が動かなくなるくらいだった。 聞けば西日本各地を大雪だの暴風だのが襲っているらしい。 大阪湾では小型タンカーが転覆したし、JRや飛行機も一部止まったそうだ。 夜中の0時に最高気温を記録したという、わけのわからない地方もあったとか。
 「寒いよなあ」
 「さすがに今日は氷点下だろね」
 「ガラス器具を洗わないかんのやけど、冷とうて嫌なんよね」
 「そうやねえ、水道水も氷点下かもしれんね」
 「なにゆうとん。 氷点下いうたら、水は凍ってるやろ」
 「ん?そうか。 でも、水って0度で凍るんやったよね。 どうもそのへんがようわからん」
 「なにがいな?」
 「凍る直前の水って0℃よりちょっとだけ温度高いんちゃうんかなあ」
 「へっ?」
 「で、凍ったら0℃になると」
 「おいおい、これ中学校くらいの理科やで」
 「でも、水と氷が同じ温度やなんておかしいやん」
 「おかしないよ。 そんなら氷水って氷のところと水のところの温度が違ってるわけ?」
 「そらそうやろ。 熱は温度の高い方から低い方へ伝わるわけやん。 そやから、水から氷に熱が伝わって氷が融けていくんちゃうの」
 「変な理屈やなあ」
 「でも、そう考えた方が説明できると思わへんか」
 「氷が融けるんは水から熱が伝わるんやのうて、そのまわりが0℃より温度が高くてそっちから熱が伝わるからや。 同じ氷水でも、まわりが0℃以下やったら氷が融けるんやなくて水が凍るやん」
 「でも氷は0℃にしかならんけど、水は100℃まであるやん。 そやから、氷のためにも0℃は水に我慢してもろて」
 「こらこら、氷は0℃以下にもなるやろ」
 「なんで? 氷の温度は0℃って習ろたで」
 「うそつけ。 氷の融点、つまり水が氷になる温度が0℃なんや。 そのへんの氷の温度は普通0℃より低いわ」
 「そんならマイナス50℃の氷とかマイナス300℃の氷とかあるわけ?」
 「絶対零度よりは下がらんから、最低マイナス237℃」
 「ほら、またわけのわからんことをいう。 氷は無理でもマイナス300℃くらいできるんちゃうん。 だって、ろうそくの炎でも1000℃くらいあるんやろ」
 「そんな気がするのはわからんでもないけど、事実やからねぇ」
 「いや、絶対だまされんで。 化学屋っていうたら昔の錬金術師やからね。 信用ならん」
 「そっちこそ最近はやりのトンデモ科学にひっかかんなよ」
 ああ、事実は日記よりも奇なり。 果して本当はもう少しきわどい会話がなされたのであった。 これが技術立国日本を担う若者なのである。 日本の未来はどうなる? そりゃもちろん、WOW WOW WOW WOW!


2月7日(月)

 インフルエンザが流行っています、みなさん気をつけましょう、と言った私は……。

 学校のあちこちで工事がおこなわれている。 大きなのは新しい5階建て校舎の建設だが、狭い教室の拡張工事、古い建物の耐震化工事、校内バリアフリー化工事、正門前道路拡張工事、などなど。 この上、女子寮をつくろうという話や合宿所を改修しようという話もあり、ヘルメットをかぶったおじさんたちが目につく。 そのうちに床の間ができて掛け軸の裏に抜け穴を作ったり、瞑想用に中二階の隠し部屋ができてグルの部屋と呼ばれたり、机の引出しにタイムマシンが設置されたりするに違いない。
 そんなあるとき、女子更衣室の前で工事が始まった。 更衣室は1階にあり、前は中庭に面した通路になっている。 その庭で、3m四方、深さ1.5mくらいに地面を掘り起こしているのだ。
 学生たちの会話。
 「更衣室の前に穴掘ってるやろ」
 「うん、あれ何つくってるんかねぇ」
 「工事のおいちゃんに訊いたんよ。 そしたら噴水やって」
 「ええっ、なんでそんなもんつくるん」
 「ええやんか。 なごむでぇ。 また溜まり場できるやん」
 「水の溜まり場にはなるけどね」
 「ええのっ! 今は癒し系やからね」
 「そやけど体育館の横にある噴水なんて、水が濁った上に木の葉に覆われて、何が住んでるかわからん状態になってるで」
 「妖怪人間とかおるかもね」
 「溶解人間かもよ」
 「噴水の側を通りかかった人に声をかけるんよね」
 「何て?」
 「なんかようかい」
 「……」
 そこに通りかかった私
 「何か用かい?」
 「……更衣室の前の噴水のことやけど」
 「ちゃうやろっ! あそこ(中略)なん?」
 「噴水なんかできへんよ。 かつがれたんやわ、おいさんに」
 「そんなら何になるん」
 「ふふふ、ぢつはあそこにはざしきろうが……」
 「何言ってるんかわかりませぇーん」
 「だから座敷牢だって」
 「???」
 「ああ、わかったわかった。 こっちが悪かった。 ほんまは女子寮ができるの」
 「びぇっ! 噂には聞いてたけど。 あんなん4畳半一間しかないやん」
 「それも地下やんか。 天井低そうやし。 ♪it's automatic って歌いそうになるわ」
 「踊りながらね、ってあほ。 あれは基礎やからあの上に伸びていくんや」
 「でも狭いでぇ。 10階建てにしても10部屋しかとれんやん」
 「少数精鋭ってことやね」
 「……ほんまに信用してるん?」
 「えっ、嘘?」
 「そんなぁ、教育者が嘘ついたらあかんでしょう」
 「信じる方もどうかと思うけど。 ほんまはエレベータができるんよ」
 「またまたぁ。 あんなとこにエレベータつくってどこへ上がって行くんよ」
 「天国に一番近いエレベータ、とか言わんといてよ」
 「お前、年齢なんぼや? 更衣室の上に教室があるやろ。 そこへつながるんよ」
 「だって3階建てやで。 エレベータなんかもったいないやん」
 「校内をバリアフリーにしようっていわれてるからね。 その手始めやろ」
 「ふーん、どうせだったら歩く歩道つくってくれんかなぁ」
 「それをいうなら動く歩道」
 「で、ほんまは何ができるん?」
 果たして本当は何ができるのか。 狼少年(?)と化した私のいうことは誰も信用しないので何も答えられないのであった。
 「でも、ほんまにエレベータつくってるんよっっ!!」


2月6日(日)

 奥田民生の「マシマロ」はいいね。

 一昨日、卒業研究発表会が開かれた。 1年間の総決算。 これに向けてここ1ヶ月あまり全力を注いでいたのでホッとする。 発表そのものも質疑応答も、思ったよりよく頑張ってくれたのでほぼ満足できるものだった。 その夜は焼肉屋で打ち上げ。 3つの研究室で合同の楽しい会になったが、疲れがたまっていたのでビールだけで不覚にもすっかり酔ってしまった。 焼肉屋を出ると、携帯で他の研究室の連中にも連絡をとってカラオケ屋になだれ込む。 本当はずっとつきあっていたかったのだが、どうも酔いのまわりが早いので一足先に帰らせてもらった。 というより、同僚が気を利かせてくれたのだが。 いかんなあ。 ほんまに弱くなってしまったぞ。 翌日、つまり昨日も二日酔いでふらふらしているし、口内炎までできている。
 このあたりでは口内炎のことを「けんびき」という。 これは「肩癖(けんぺき)」という言葉からきているらしい。 「肩癖」というのは首から肩にかけて筋肉が引きつること。 中国地方では「けんびき」というとリウマチ性背痛症をさし、おそらく肩癖が語源だろうといわれている。 ところが四国に渡ると、肩こり、口内炎、胸痛、ものもらいなど、疲れからくる症状を総じて「けんびき」というのだ。 ただ、このあたりでは口内炎のことしか言わないみたいだが。 ちなみに岡山県の山間部では「けんびきやき」というのがあるらしい。 小麦粉にあんこを入れた団子をミョウガの葉で包み、素焼きの平たい土鍋で焼いたもの。 6月1日にロッカツヒテエーという行事があって、田植えの疲労回復を目的に「けんびきやき」を食べるとか。

 今日の新聞一番のニュースは京都の小学生殺害事件の容疑者が飛び降り自殺である。 もちろん警察の失態ということも含めて大事件である。 しかし、目を引いたのは、その影でひっそりと小さな記事に扱われていた九大薬学研究科からの塩酸モルヒネ盗難事件である。 盗まれた4.9gというのは経口なら70人分、注射なら160人分の致死量に当たるともされる劇物であり、金庫ごと盗まれたのだ。 高さ36cm、幅30cm、奥行21cm、重さ4kgという金庫。 確かにこれでは1人で楽々持ち運べる。 収められていたのは塩酸モルヒネだけということだから、そんな大きな金庫を用意する必要を感じかなったかもしれないが、金庫ごともっていかれてはどうしようもない。 毒物劇物の保管は厳重にすべきではあるが、いろいろな事情があるのも事実。 今後もそう簡単になくならないのではないだろうか。 さて、うちは大丈夫か。 自戒したい。

 『遺品』(若竹七海)『奇跡の人』(真保裕一)を買う。 まだ、講談社文庫の1月新刊が見つからないのは何故?
 昨日、『迷宮 Labyrinth』(倉阪鬼一郎)読了。 ちょっと期待はずれ。 今日は『悪意』(東野圭吾)を読了。 相変わらず緻密である。


2月3日(木)

 鬼はどこ? 節分の日だ。

 豆まきなんかとんと縁がないけれど、毎年やってくる節分の日。 本来は、立春、立夏、立秋、立冬それぞれの前日を季節の境目としてすべて節分と呼んだが、やはり春を待ちわびるこの時期の節分が一番印象にあるのだろう。 ふと思いついてきょうは何の日というウェブページを覗いてみた。 これによると節分は2月3日と決まっているわけではない。 立春自体が、天文学的に太陽が黄経315度を通過するときとされ、年によって違う可能性があるからだ。 確かに黄経0度にあたる春分や180度の秋分も毎年同じ日ではない。 しかし、節分がずれたという話はきいたことがない。 閏年に2月を29日にして暦のずれを修正しているが、立春がその直前にあるためなのかもしれない。
 さて、2月3日は節分以外にも記念日が制定されている。 調べてみるものだ。 とても思いもよらない記念日になっている。 ジュディ・オングの日と大岡越前の日がそれだ。
 ジュディ・オングの日とは、彼女が日米の文化の架け橋として活躍したことを記念してアメリカ・ネバダ州が1990年に制定したという。 はて、この日は彼女の誕生日なのか? 初来日の日なのか? 記念日にしようと思いついた日なのか? ネバダ州は彼女の故郷なのか? 彼女のファンはこの日ネバダに集結するのか? 松鶴家千とせが「ネバダディバダディ、イェーイ」と漫談を始めるのか? 考え始めると夜も眠れない。
 もう一方の大岡越前の日とは、1717年に大岡越前守忠相が南町奉行に就任した日のようだ。 この日はきっと加藤剛が大岡ファンとの集いを開いているに違いない。 さあ、どんな行事が行われるのだろう。 2万円落とした、拾ったと裁判所に駆け込んで、裁判官から1万円せしめるための巧妙ないいわけを競うのだろうか。 (1万円といえば、今日は福沢諭吉の命日でもある。 合掌。) 人形の両腕に綱を結んで左右に引っ張る趣味の悪い綱引きを競うのだろうか。 もちろん、早く手を離した方が勝ちである。 水戸黄門ファンとのTBS杯争奪 痴漢でGo!大会というのもありそうだ。

 ああ、なんだかよくわからないことを書いてしまっているなあ。 あまり推敲していないから読みにくかったらごめんなさい。 でも、今日は特別に許してほしいのだ。 だって、拙文の日なのだから。


2月1日(火)

 藤村甲子園……じゃなくて、藤村一家親子3代甲子園出場決定。

 相変わらず夜の研究室のハイテンションは続いている。 今日は気晴らしにといってお絵描きしりとりがはじまった。 何の絵を描いたか言わずに想像しつつしりとりをしていくやつだ。 紙に隙間が亡くなった時点で終了、答え合わせをするという。 エンピツとかラッパとか書いているうちはわかりやすいのだが……。
 「絵、下手やねぇ。 この"きつつき"、木より大きいやん」
 「でも、ちゃんと突ついてるからわかるやろ」
 「足がどこにもついてないから、宙に浮いてるみたいやん」
 「浮いてへんよ。 枝にとまってるんやって」
 「そうやろね、こんな小さい羽根やったら飛べへんもん」
 「えっ、"きつつき"って飛べるん? 木に穴あけてるだけちゃうん」
 「えーっ、そりゃ飛べるよ。 見たことはないけど……。 だって、どうやってあんな木の上にあがるんよ」
 「どこへも行かへんよ。 木の穴に出たり入ったりしてるだけやろ」
 「そんなら落ちたらどうするんよ」
 「…… 幹をつたって這い上がっていくとか」
 いかんなあ、恥ずかしい会話をしとる。 これではちょっと足らんやつみたいやんか。 ギャグとかユーモアというのとは違うなあ。 天然? いや、単なる無知としか思えん。 もうちょっとインテリジェンスあふれる会話を。
 「うわ、この絵はえげつないなあ」
 「そんなことないよ」
 「だって、手首切って血ふきだしてるんやで。 "自殺"やん」
 「いいや、違うよ」
 「えっ、でも"じ"から始まるんやろ」
 「そうや」
 「ほんなら誰が見ても"自殺"やんか」
 「違うって。 よう見てみ、片目開いてるやろ」
 「そやから気持ち悪いんやんか」
 「そやのうて、目が開いてるってことはまだ生きてるってことやで」
 「はあ?」
 「な、だから正解は"自殺未遂"」
 「…… んなもん、わかるかぁー!!」
 ほら、なかなかエスプリの効いた会話になったじゃないか。 ん?だめかなあ。 これも現場ではウケとったんやけど。 おもろない? 素材は悪くないけど、語り口がいかん? ネタそのものもダサダサ? そもそも何がおもしろいか理解できん? 笑いをとろうと思ってること自体が間違ってる? 一言しょーもない? …… おとなしく聞いとったら好き勝手いいやがって。 いいんだって、その場ではおもしろかったんだからぁ。 文句いう奴にはこうだ!
 「笑いは会議室で起きてるんじゃない。 現場で起きてるんだっ!!」

 『QED ベーカー街の問題』(高田崇史)を読了。 久々に時間をかけて本を読めた。 感想はしばし待たれよ。



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