魅 館 果 汁
<00年2月下旬>
2月29日(火)
竜頭って時計のつまみ以外にも、釣り鐘をつるすための部分もいうらしい。
今日は400年に一度の閏日である。
今年もうひとつのY2K問題ということでご存知の方も多いだろう。
地球の自転時間と公転時間の比が整数でないために生じる誤差を埋め合わせるのが閏日である。
春分点を基準にして太陽が黄道を1周する平均周期を1太陽年といい、365.2422日に相当している。
ユリウス暦では、4年に1度閏日を作って1年を366日としていた。
つまり、1年を365.25日と考えるわけだ。
この方法では128年で誤差が1日に達する。
これを改定したグレゴリオ暦では西暦が100で割り切れる年は365日とし、400で割り切れる年は366日とする。
これだと1年は365.2425日となり、1日の誤差が約3000年立たないと現れない。
そのため、現在はこのグレゴリオ暦が世界的に用いられているわけで、今年は400年に一度の閏年というわけだ。
下2桁で年号を表わそうとしていたくらいだから400年に1度のことまで頭になかったのは当然で、右往左往するのも当然だろう。
気象庁やら郵政省やらでY2K問題が発生したようだが、私にとっての2月29日問題はアナログ腕時計の日付である。
え? それは2月だけじゃない?
閏日が2月29日になるのは、通常2月が28日しかないからだ。
では、なぜ28日になってしまっているのだろう。
カエサル以前の暦は、1年は春分から始まる10ヶ月だった。
つまり、今の3月が年初だったのだ。
9月から12月の英語名がラテン語の7から10に対応しているのはこのためである。
カエサルはこれを改革してユリウス暦を作った。
年初は今の1月とし、31日ある大の月と30日の小の月を交互に置く。
ところが、これでは31日×6ヶ月+30日×6ヶ月=366日となり平年では1日余る。
そこで、これまで最後の月であった2月から1日差しひくことにした。
このときカエサルは自分の生まれた7月に自らの名前を読み込んでいる。
次の皇帝アウグストゥスはカエサルにならって自分の生まれた8月の名前を改めたのだが、その際に8月が小の月であることを嫌ってやはり2月から1日まわして31日とした。
ただ、そうしたときに7月から9月まで大の月が続くので、9月以降の大小を入れ替えた結果、現在のような暦になったという。
閏秒というのもある。
もともと1秒とは地球の自転周期を24時間=86,400秒として決められていたが、潮汐の影響などで自転時間が年々長くなっていることから基準を変える必要に迫られた。
そう、自転速度はだんだん遅くなってきているのだ。
そのうちコマのようにふらつきはじめて、いつかこけるかもしれない……。
ともかく、そんなわけで「セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期の継続時間」を1秒と定義したのが原子時計である。
一方で1日は地球の自転周期に基づくのでやはり誤差が生じるのだ。
そのために閏秒を……59秒、60秒、0秒、1秒……として年に1回程度盛り込んでいる。
そもそも「閏」とはあまりという意味の言葉で正統じゃないということをさす。
「潤」は水があまった状態であり「うるおう」わけだ。
そういえば最近とても正統とは思えない、あんた余り者やで、っていう奴が増えている。
閏県警本部長、閏警察局長、閏暴言大臣、閏セクハラ知事、閏教祖……。
400年とは言わないが、せめて4年に1度程度にならないもんかなあ。
2月28日(月)
100円が129万円になるのだから競馬は止められない、らしいけど、胴元の暴利を思えば……。
アスキーアートというのをご存知だろうか。
最も単純な (^o^) や (T_T) などの顔文字に始まり、メールの署名欄などに描かれる文字による絵から、もっと大きな、そして精緻な絵文字のことをいう。
文字で絵を描くのだから文字絵が正しいと思うのだが、どうやら絵文字と呼ばれているらしい。
風景、建造物、動植物、さらには人物画まで。
インターネットを始めた頃にはよく見ていたのだが、最近はご無沙汰している。
そんな今日、ネットサーフィンしていて1999年の深津絵里というページを見つけた。
ん? そう、深津絵里は好きなタレントのひとりである。
このページでは彼女の似顔絵をアスキーアートで描いているのだが、かつてのアスキーアートは文字の線を活かして絵にしていたが、ここでは文字による濃淡をうまくつかって写真のように描いている。
うーん、こういうのもいいなあ。
どんどん進化しているわけだ。
というところで今日の話題の主になるのが次のアスキーアート。
画面の幅を下の矢印の範囲まで広げてみてもらいたい。
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さあ、これは何だろうか?
この時点でわかった人は適度にお歳を召しているか、オタッキーである(嘘)。
これは「トムとジェリー」のようなアメリカのTVアニメに出てくる足の早い鳥である。
おや、わかったかな?
鳥というとウッドペッカーしか名前が出てこない人もいるようだが、そうではない。
もちろん、GU-GUガンモでもない。
え? そんなのと間違えへんて。
いや、私の友人はしっかりと間違えてくれた。
「そういえば、「スヌーピー」の作者が亡くなったね」
「ああ、ロッキードさんやろ」
「全然ちゃうわ、シュルツさんや」
「あそう?
なんかピーナッツと関係なかったっけ」
「うわっ、それは古すぎる。
最近の子は誰もわからへん」
「僕はあのキャラクターの中ではトゥイティーが好きやな」
「それは違うアニメやろ。
黄色い生意気なカナリヤやんか」
「でも、黄色い鳥はおるで」
「それはウッドストックや」
「ウッドペッカー?」
「ちゃんと聞けや」
「今日、耳、日曜」
「これも古くさいのを……」
「まあ、どれも似たような小さくて黄色い鳥やんか」
「ウッドペッカーは黄色かったかなあ?
そうそうアニメの鳥といえば、このアスキーアートは何かわかる?」
「ハヒヒヒヒって笑うんかいね」
「何のこっちゃ?」
「ガンセキオープンに乗ってたような気がする」
「それはケンケンやろ。
わかりにくいボケをすな。
それにガンセキオープンは競争相手やんか。
そもそも犬やし」
「でも何か言いよるよな、こいつ」
「BEEP! BEEP!ってしか言わんよ」
「ああ、わかった!
部屋の中でもジョギングができるってやつやんか」
「それはルームランナーやろ」
「そやかて、ヒーヒーゆうて走っとるで」
「ただの運動不足のおばはんちゃうんか」
「それとも爆風スランプの大ヒット曲だったっけ?」
「それはただのランナー!」
「じゃあ、悪いことをしたときに怒られる言葉だ!」
「わはははは、それはもうほとんど死語やな」
というわけで、この鳥の名はケシカランナー……
じゃあなくってロードランナーなのであった。
いやあ、なんとか解決できた。
よかったよかった。
え? GU-GUガンモはどうなったって?
ドキッ!
(中途半端なオチだけど、まだまだおでんのおいしい季節ということで、ご勘弁願いたい)
『太陽黒点』(山田風太郎)読了。
2月27日(日)
阪神オープン戦初日は西武に3-8、吉野は使えるぞ。
『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター』(上遠野浩平)を読み終えた。
次が読みたくなる終わり方だ。
もう1冊、『地下鉄の素』(泉 麻人)も読了。
今は地下鉄どころか、普段は電車やバスにも乗る習慣がないけれども、かつて名古屋に住んでいたときは地下鉄利用者であったので、思わずフンフンと肯いてしまう面白いエッセイだった。
まあ、ところどころ地下鉄とは関係のない話題もあったのもご愛嬌。
名古屋の地下鉄は当時、東山線、名城線、鶴舞線、それに名無しの4号線があって、その後、桜通線ができた。
4号線は名城線の一部という扱いになって、今はその名はないらしい。
どういうわけだか地下鉄路線というのは、計画だけはやたら聞こえてくるし、工事だけはあちこちでやっているのだが、なかなか開通しない。
本山から八事に抜ける山あり谷ありの四谷通〜山手通を自転車で駆け抜けていた私としては、早く地下鉄ができてほしかった。
予定では名城線が環状線となって本山−八事間につながるらしい。
そういえば、今年末に開業予定の都営地下鉄12号線が石原知事の命名で東京環状線から大江戸線とされた。
環状線よりはなんぼかましだし、「ゆめもぐら」というのも定着しそうにないけれど、知事は時代劇が好きなんだろうか?
まあ、東京地方のローカルな話なんだからどうでもいいんだけど、大江戸捜査網を思い出してしまう。
「隠密同心、心得の条。
我が命、我が物と思わず。
武門の儀、あくまで陰にて。
己れの器量を伏し、御下命、如何にても果たすべし。
なお、死して屍、拾う者無し。
死して屍、拾う者無し」
うーん、懐かしい。
大江戸捜査網は主演格の交代で3シリーズあるらしい。
杉良太郎の十文字小弥太、里見浩太郎の伝法寺隼人、松方弘樹の左近寺右京である。
本当はもうちょっとあるらしいのだが、この3シリーズがメインだ。
私は井坂十蔵が好きだったが、彼はたった一人、3シリーズ通してレギュラー出演していたそうだ。
「同じく、井坂十蔵」っていうのがよかったなあ。
閑話休題、『地下鉄の素』では「スムーズに行こう!」「急行待ち合わせ」「ヴェルファーレ4番出口」あたりがツボに来た。
「トランクの中のタコ焼き器」は、大阪出身の某女優が海外旅行にもタコ焼き器を持参するという話。
そこまでいくと執念としか思えないが、関西人の一家に一台タコ焼き器というのはあながち間違いではない。
実家にもある。
家族でタコ焼き器を囲むのもなかなかいいものである。
ところが、今、研究室の引越しをしているのだが、奥の方からタコ焼き用の鉄板が出てきたのには驚いた。
まさか、ここでタコ焼きを作ってたのか。
確かに鍋やフライパンはあるけれど、ちょっと方向性が違うんじゃないのか。
今、これを引っ越し先に持って行こうかどうか、まじめに悩んでいる。
2月26日(土)
書くのに疲れたらブルブル震えてツボを刺激するボールペンがあるんだって。
愛媛県のある町で、特産のオレンジを素材にしたワインを試作したという。
原料のニューサマーオレンジは、柑橘類には珍しく4月から5月にかけて収穫されるのだが、刺があって袋をかける手間もあり、価格面でも他のミカンに押されて伸び悩んでいたらしい。
そこで町の特産品の起爆剤として開発されたのだ。
甘口の白で、初夏のすがすがしさと初恋の甘酸っぱさをイメージした、その名もサマーキッス。
これからボトルのデザインも公募されるという。
地酒はいうに及ばず、地ビール、地ワインと、町や村の活性化のためにおお流行りである。
うちの実家のある町でもワインをつくろうという話が持ち上がっていると聞いた。
別にブドウの産地でも他の果物が有名なわけでもない。
山梨県で採れたブドウを運んできて醸造するだけなのだとか。
不思議な企画である。
ワインは日本の酒税法上では果実酒と呼ばれることからもわかるように、ブドウ以外の果物からも作られる。
オレンジ、リンゴ、モモ、洋ナシ、イチゴなどなど。
それどころか玄米ワインなどという代物まである。
最近の日本酒はフルーティなワイン風のものが増えている。
そりゃあ確かに日本酒もワインも醸造酒だけども、ごっちゃにしたらまずいんでないかい。
日本酒といえば、愛媛の地酒として有名な梅錦の中に「ずーっと好きでいてください」というのがある。
酔ったふりで相手の顔を見つめてラベルを読んで、顔が赤らんでも酒のせいにできるというコンセプトなのだろう。
全国ネットで流れているのかどうかわからないが、CMはちょっと怪しい。
外人の男性二人が浴衣姿でこの酒を手に「Love me forever」と囁きあっているのを、障子越しに若い仲居が頬を赤らめながら聞いてしまうというもの。
さて、私もそんなに強い方ではないが、まったく酒の飲めない人も世の中には多くいる。
これは日本人を含むモンゴロイドの特徴である。
欧米人にはほとんどいなくて、下戸にあたる英語もないと聞く。
これは、一般にアルコールを分解する酵素がないためだといわれているが、正確には少し違う。
「メチルは目散る」というように、同じアルコールでもメチルアルコール(メタノール、CH3OH)は劇物であり、毒性が強い。
酒に含まれているのはエチルアルコール(エタノール、CH3CH2OH)である。
エタノールは肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)やエタノール酸化系(MEOS)によってアセトアルデヒドに酸化され、さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸にまで酸化される。
酢酸はいわゆる酢の主成分なので、酒を飲むということは酢を飲むということと同じといってもよい。
すなわち、身体が柔らかくなるのだ。
酔ったときに身体がいい感じで揺れてきたりするのはそのためである……わけがない。
副成分がかなり異なるから効果も異なるのである。
あ、だからといって酢を飲んだら身体が柔らかくなるというのもどうかと思うのだが。
エタノールそのものには麻酔作用があっていわゆる酩酊状態を起こすもととなる。
エタノールの分解はほとんどがADHによって起こるのだが、これは酒を飲めない人も持っていてきちんと働いている。
MEOSは普段よく酒を飲む人の方が働きが強くて、酒量が多いと強くなるというのはこのせいである。
飲めば飲むほど、友情のために命懸けで走りつづけることができるようになるのも、MEOSのお陰というわけ……それはメロスだって。
ところが、そうやってできるアセトアルデヒドは有害な物質で、顔が赤くなったり心臓がドキドキしたりする原因となる上に、吐き気や頭痛という悪酔い症状を引き起こす。
酢酸まで酸化が進むとこのような不快症状が消えるのだが、人によってその処理能力に差があるのだ。
ALDHには5種類あって、そのうち1型と2型が主にアセトアルデヒドの分解に関与する。
ところが、日本人の約半数がALDH2を持っていないか、その働きが弱いのである。
ALDH2はアセトアルデヒドが少量のときに働くので、これがないということは少し飲んでもアセトアルデヒドが体内に蓄積されて悪酔いすることになる。
したがって、酒を飲めば鍛えられるという以前の問題なのだ。
下戸の人も「飲めないんです」なんて曖昧な断り方ではなく、「ALDH2欠損症なんです」といって相手をびびらせればもう大丈夫。
このALDH2を持っているかいないかは日本民族としての歴史に関係しているそうだ。
すなわち、縄文人(原モンゴロイド)はALDH2を持っていたが、弥生人(新モンゴロイド)はALDH2を持っていなかったという。
酒豪ならば縄文人タイプ、下戸ならば弥生人タイプというわけだ。
これは発掘された骨からDNAを抽出して調べた結果、明らかにされたらしい。
逆にいえば、日本人のルーツ探しにも一役買うことになる。
他にも縄文人と弥生人では顔立ちや生活パターンの違いがある。
縄文度チェックのできるページを見つけたのでやってみると33%と出た。
これは顔立ちから判定したものだが、酒もそれほど強くないし、ぶらぶら出掛けるよりはぐうたら寝転んでいる方が好きだから、弥生人タイプというのは当たっているかもしれない。
さあ、あなたは縄文人?それとも弥生人?
2月25日(金)
「探偵!ナイトスクープ」に出ていた予想を裏切る踏切は、うちの近くにもある。
蜃気楼といえば、空中など本来あるはずのない場所に建造物などが見える現象であり、古来、中国では蜃(ミズチ)という想像上の動物が吐いた息の中に楼閣が現れるのだとされ、この名がついた。
蜃って、大きな貝だったような記憶があるが、確かではない。
ついでに、同じミズチでも蛟と書くのはヘビに4本足をつけた水中に住む妖怪であり、別物であることを書き添えておこう。
それはともかく、実際には大気の温度差による光の屈折が原因であって、大きく3つに分けられる。
1.下方屈折蜃気楼:夏、アスファルトの地面が直射日光で熱せられたときに見える逃げ水とか地鏡とか呼ばれる現象。
空や地上の建造物が地面に映り、上下転倒して見える。
砂漠の蜃気楼もこの範疇に入る。
2.上方屈折蜃気楼:極地の海面や冷たい雪解け水が流れ込む湾などで、地上の建造物が空中に見える現象。
日本では富山湾のものが有名。
オホーツク海沿岸で流氷の時期に見られるものは幻氷と呼ばれる。
3.側方屈折蜃気楼:垂直な崖が日差しを受けて熱せられたり、海岸近くの深浅による水温の違いなどの関係で、光が水平方向に異常屈折して起こる。
有明海や八代海の不知火がこれにあたる。
2番目の上方屈折による蜃気楼は、富山湾で4月から5月にかけて観測され、富山名物となっている。
もちろん、蜃気楼まんじゅうや蜃気楼こけしも土産物として販売されているが、家に持って帰ると煙のように消えてしまうのが欠点である。
この富山湾の蜃気楼は、上で書いたように雪解け水が流れ込んで海面付近が冷やされ、上空に暖かい空気が吹き渡るようなときに起こりやすいとするのが定説であった。
といっても、ミイラになっても生きているという話ではないし、死んだように見えたのは蜃気楼のようなものだ、などと不届きなことをいうつもりもない。
とにかくその定説を覆す新説が発表されたのだ。
といっても、逮捕されたグルに代わって教団を継ごうというわけではないのでご安心を。
新しい説の提案者は富山県の高校教諭。
この方は、TVチャンピオンという番組の親子実験王コンテストで優勝した経験もあるアイデアマンだそうだ。
そもそもは雪解け水のない琵琶湖でも同じような蜃気楼が見られることから疑問を抱いて研究を始められたという。
4年間の成果としてまとめられた新説では、海面上の空気が冷やされるのは雪解け水のせいではなく、早朝の放射冷却現象によって冷えた空気が陸上から地上に流れ込むためだとしている。
自ら蜃気楼発生装置を作って実験し、海水による冷却効果はあまり有効ではないことを突き止め、富山湾の海水温度の測定などによって自説を補強しているとか。
なかなか興味深い結果である。
この新説が立証されれば、蜃は冷たい雪解け水の中に生息しているのではないと推測される。
これまで見つからなかったのは調査団が水温の低い箇所を重点的に捜索していたためだろう。
さあ、これで伝説の大貝 蜃が発見されるの時間の問題だ。
この春は富山湾へレッツゴー!
2月24日(木)
ネタに詰ったときはゆっくり新聞や雑誌を繰ろう。
今日の新聞の全面広告に「永遠のベストセラー ビデオ&カセット・CD」という通販の宣伝が載っていた。
6種類の選集を紹介しているのだが、これが面白い。
「金子みすゞの世界」は童謡詩人の作品の朗読や歌が収められたCD。
「蜷川幸雄傑作選」はその演出劇4作品をビデオにまとめたもの。
「爆笑王横山やすし西川きよし」は言わずと知れた漫才ビデオ。
「藤山寛美」は浪花喜劇の天才の名舞台を集めたビデオ作品。
とまあ、ここまではよしとしよう。
後の二つが曲者なのである。
一つは「よそではめったに聴けないはなし」と題したCD5枚組。
中身は確かによそではめったに聴けない、というか聴いたこともない、大道芸人の口上やら、都都逸やさのさ節やら、文明開化の頃のハイカラソングやら。
聴いたことはないけれど想像のつくものというと「ガマの油売り」や「バナナ売り」くらいしかない。
聴いてみたい気がしなくもないが、CD5枚もあると途中で嫌になりそうだ。
もう一つはさらにこれの上を行く「春風で踊るかくし芸全集」である。
ビデオ2本にカセット1本、歌詞カード付き。
内容はいうと「ソーラン節」や「炭坑節」など有名な民謡16曲。
ところが、すべて替唄になっているというのだ。
しかも、創作替唄じゃなくて現地で密かに唄い継がれた方言豊かな本格派なんて宣伝してあるから、まったくもって怪しい。
ビデオ画像の写真が一部掲載されているのだが、それがまた胡散臭いのなんの。
なぜかその隣にカトちゃんのそっくりさんが、あのハゲヅラでヒゲダンスを踊りながら、ちょっとだけヨと言っている写真もあり、センスの悪さ丸分かりである。
こういうビデオを見ながらこっそり宴会芸の練習をしているオジサンがいるのかと思うと、可哀想にすらなってくる。
毎年、送別会や花見の席で芸をやらされている人が、今度こそはウケるぞ、と気合を入れているのだとすれば、不憫にすら思えるし、好きでやっている人を見ると薄ら寒くなってくる。
ホンマに売れてるんやろか。
いや、この制作会社を心配してるんじゃなくて、日本人の笑いってこの程度なの、という気分になるだけなんだけど。
『東京難民殺人ネット』(村上政彦)を読了。
ちょっと変わったミステリである。
2月22日(火)
引越し作業でチカレタビー、っていつの流行語?
私は周囲から見て機嫌がいいのか悪いのかよくわからないと言われることが多い。
今日は学生がだれも話し掛けてこないなあと思っていたら、機嫌が悪かったでしょ、と後から言われる。
確かに短気なところはあるし、口は悪いし、疲れているとぞんざいな扱いをすることもあるから、機嫌が悪いと見られるのはわかる。
でも、怒っても割と早く醒めるし、自分では機嫌が悪いと自覚していないことの方が多いのだ。
逆に、一目見て機嫌のよしあしが分かる人もいる。
確かにそういう人の方が相手をするにはやりやすいかもしれない。
なんにしろ、人と接するときにはその相手の機嫌とうまく付き合う必要があるので、そこを上手く読めるか読めないかが処世術として大事になるというものだ。
ところが、私は自分の機嫌のよしあしも自覚できないほどに鈍感なので、他の人の気持ちを読み取るなんてことは大の苦手なのである。
ぱっと見で相手の機嫌をはかれるメーターなんてないものだろうか。
ドラえもんに頼めば「機嫌ゲージ」とかいって気分の圧力を測定できる器具を出してくれるかもしれない。
でも、できれば前もって明日の機嫌はどうなのかわかっているともっと対策も立てやすい。
そんな便利なシステムはないものだろうか。
177の後に相手の携帯の番号を打ち込むとその機嫌を予報してくれるというのはどうだろう。
天気予報ならぬ人機予報である。
「ピンポンパンポーン。
こちらは気象庁四国管区人機台です。
明日2月23日の愛媛県○○市△△町在住 金田一小五郎氏の機嫌をお伝えいたします」
「午前中、南の風やや暖かく、晴れ。
通勤中、やや曇ることがあるでしょう。
これは渋滞が原因ですので出勤直後まで続きますが、すぐに落ち着き、概ねよい機嫌で過ごすことでしょう。
ただし、人によって乾燥注意報が出ていますので、摩擦による火災には十分ご注意ください」
「お昼休みにはいつものように社員食堂へ出掛けますが、ここで犬猿の仲の十津川光彦課長との遭遇確率は60%です。
遭遇した場合には波浪警報が出されることがありますので、弁当を持参するか、社外で食事するか、コンパックに出前注文することをお勧めします」
「午後には、北西の風に乗って外回りにでかける移動性低気圧となり、不安定な状態となるでしょう。
相手先に着くたびに一時的に気圧が上がりますが、その後には小型で強い熱帯低気圧に変わる恐れがあります。
半径10メートル以内は暴風域となりますので、お供する場合は傘は役に立ちませんから、せめて耳栓を用意して自衛しましょう」
「定時後の残業確率は0%ですが、赤提灯確率は80%ありますので、巻き添えに十分注意してください。
巻き添えを食った場合、はじめのうち愚痴、のち厭味、時々泣きが入ります。
ここまできたら、あきらめた方がよいでしょう。
最後に自宅まで送るはめに陥るかもしれませんが、奥さんと顔を合わせた瞬間に気温が急激に下がると思われます。
ご出勤の際には暖かな服装をしていかれる方がよいかもしれません」
「続いて週間予報です。
明後日以降、金曜日までこのような機嫌が続くでしょう。
土日は家族サービスに専念するために一時的に気圧は高くなりますが、ゴルフに行けない辛さでストレスも高くなっていますので、来週以降の機嫌の改善は期待できません」
「なお、この間に何らかの被害を受けた場合には、ただちに対策本部にご連絡ください。
何かができるわけではありませんが、話し相手くらいにはなってさしあげます。
また、如何に機嫌を損ねず被害を受けないようにするかをお知りになりたい方のために、ダイヤルQ2による人機予防講座の有料サービスも行っております。
興味のある方は次の番号をプッシュしてください。
料金は1分100円になっております。
番号は……」
『梟の巨なる黄昏』(笠井 潔)と『地下鉄の素』(泉 麻人)を購入。
本当は創元推理文庫の新刊を探しに行ったのだが、例によってまだ店頭に見当たらなかった。
そうそう、貫井徳郎はやはり見つからない。
2月21日(月)
自分らが想像しているより、2倍は眠かった一日。
イサクソウという薬草をご存知だろうか。
世界で唯一、愛媛県石鎚山系にしか繁茂していないという貴重な一年草である。
イサクソウに含まれるラホーギサという成分が人間の神経伝達物質とよく似た化学構造をしており、皮下吸収されてシナプスへ直接働きかけ、脳の情報伝達機能を極限まで高めるという。
そのため、直観力、洞察力、分析能力、記憶力が飛躍的に増大するのだ。
麻薬や覚醒剤はもちろん合法ドラッグとも異なり、容易に分解するために習慣性もなく、禁断症状もない安全な物質であることを強調しておきたい。
それだけでなく、空気中の水分をマイナスイオンに帯電させたり、酸性食品を弱アルカリに変換したり、さらには遠赤外線を発生させる作用もある。
まさに無限の可能性を秘めた物質といえる。
このイサクソウを濃縮してラホーギサ・エキスを染み込ませたブレスレットを身につけると、そのパワーのおかげで奇跡的に幸運が次々とやってくるというのも必然である。
エキスには含まれている副成分によって赤、黄、青、緑の4色があり、それぞれ恋愛、大金、成績、健康に対応している。
理想の相手との結婚、ギャンブルは連戦連勝、突然の成績アップ、不治の病も完治、などなど。
イサクソウが採れる断崖絶壁の地は何度も墜落事故が起きているが、いまだかつてひとりも怪我を負ったこともないのだ。
これもまたイサクソウの驚異の生命エネルギーの証である。
さあ、このイサクソウ・ブレスレット、限定1万本を20000円にて限定発売。
みなさんもこれを機会に是非体験を!
まあ、こんな話が巷に氾濫している。
雑誌の広告などを見ると、体験者は語る!とか、マスコミ騒然!とか、科学的に証明された!とか、有名人もニッコリ!とか眉つばの、JAROに言ったら一発で捕まりそうな大風呂敷きが広がっているのだ。
商品も、幸運のペンダントだ、幸せの指輪だ、開運ピアスだ、明るい未来を開く金の鍵だ、願いの叶う差し歯だ、と様々。
おいしい話には十分気をつけないと、貴重な金を毟り取られるようなものだ。
少し違うが教材シリーズというのもある。
たった1ヶ月で英語がペラペラ、毎日5分で筋肉隆々、1日10分で暗記らくらく、毎週1度で夢がモリモリ……。
利用する人次第だが、宣伝文句に騙されてはいけない。
ともかく、世の中には危険な魅力がいっぱい。
しかし、わかっているけれどもついつい流される人も多いはず。
そんな人も私の著書を読めばもう大丈夫。
「騙されないための八百ヶ条」は3980円。
限定5000部、絶賛発売中、売り切れ注意なのである。
あ、イサクソウをほしい方はこっそり連絡してもらえれば内容がわからないようにして配送可能である。
え? 嘘臭いって?
これも一種の隠れ蓑。
当局の目が厳しいから、他のいかがわしいものと並べてみただけ。
実際にイサクソウ・ブレスレットを身につけた人でないとその効果は体験できないのだ。
なお、くれぐれも逆から読まないようにとだけ、忠告しておこう。