魅 館 果 汁

<00年3月中旬>


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3月20日(月)

 春分の日、安闔日であるが、四門は開いたのだろうか。

 民間業者によるDNA親子鑑定が法規制のないのをいいことに野放し状態でなされていることが明らかにされた。 日本ではDNA親子鑑定はもともと裁判所などの依頼で子供の認知などの証拠とするために大学の法医学研究室で行われてきた。 それが裁判などせずにもっと手軽に悩みを解決したいとの要望から民間鑑定が広がった。 しかし、サンプルとなる口腔粘膜の採取に立ち会うどころか、本人の意思確認もなされないまま郵送で行われているというのだ。 低料金化のために簡素化しているわけだが、倫理はどこへ行ってしまったのか。 究極のプライバシーといわれるDNA情報をいとも簡単にビジネス化してしまうこの国の低モラルには呆れ返る。 また、いつでも問題が発覚してからしか手を打たない行政の対応にも情けなくなる。 ヒトゲノムの完全解読まで秒読みといわれる現在、遺伝子商売がはびこる怖さについてきちんど法整備してほしい。
 そんな近未来のテレホンショッピングを想像してみよう。
 「ハーイ、みなさんお待たせ! ワールドテレショッパーの時間がやってきました。 ナビゲーターのマイク・ベンジャミンです。 早速だけど、今日紹介する商品はこちら『EZゲノムキット』。 どんなものかはバイオメディカル・コンサルタントのケイト・ミラーが説明してくれます。 ハイ、ケイト!」
 「ハイ、マイク」
 「ケイトはもう5年も遺伝子コンサルティングをしてるんだよね」
 「そう。 昔は遺伝子ビジネスといえば親子鑑定くらいだったけれど、最近は精子バンクや卵子バンクでの遺伝子チェックが増えてるわ。 それに遺伝子診断や遺伝子治療が当たり前のように行われるようになって、みんな自分の遺伝子に興味を持ってきてるの」
 「そうだね。 遺伝子操作のお陰でフリーセックスからマルチセックスの時代になって、同性愛者から子供が産まれる時代もそう遠くはないっていわれてるし」
 「クローンだって政府は認可する方向に転換する可能性を仄めかしてるわ。 とにかくこんな時代だから、みんな手軽に正確な遺伝子情報が知りたいと思ってるわけ」
 「でも、本人の確認不足とかデータの捏造の問題で遺産相続詐欺事件が起きてると聞くけど」
 「マイクもこのテレショッパーでたくさん稼いだから気になるでしょ」
 「確かに不安はあるよ」
 「今回の『EZゲノムキット』はその対策もバッチリよ」
 「どうやって使うんだい、ケイト」
 「このキットは備え付けの綿棒にちょっと唾液をしみこませるだけでOK。 今までにない簡単なサンプリングができるの」
 「へえ、つばをつけるだけでいいの。 ぼくもケイトにつばをつけたいんだけど」
 「あらあら、それは後でね、マイク。 でも、驚くのはまだ早いわ。 二人のサンプルをこのキットに入れてこのボタンを押すとDNAの回収、増幅、解析、比較という順で進んでいくの」
 「これ1台で全部やっちゃうの? すごいキットだねぇ」
 「それもたった24時間でできてしまうのよ」
 「え、丸一日もかかるのかい」
 「たった一日よ! そしてここに二人の関係がパーセント表示で出るのよ。 例えば、親子である確率70%、兄弟の確率20%、他人の確率10%って具合」
 「なるほど、これだったら自分の手元で全部できるから捏造もないし、安心だね」
 「実は昨日、マイクに綿棒なめてもらって私のと一緒にキットにいれておいたの」
 「もう結果が出てるのかい」
 「ええ、これよ」
 「えーと、他人の確率1%、兄妹の確率99%……。 まさか、ケイト、君は20年前に生き別れした……」
 「そうよ、マイク。 私たち兄妹だったのよ!」
 「ケイトっ!!」
 「マイクっ!! (これでマイクの財産は私のもの……。 つばをつけたのは私だったわね)」

 『風の海 迷宮の岸』(小野不由美)『気まずい二人』(三谷幸喜)を読了。 後者は妙におかしく、一気に読み干した。 短い対談集であり、ちびちび読むよりその方が楽しめる。


3月19日(日)

 新庄のホームランを喜ぶしかないのか低迷タイガース。

 『ひらけ!勝鬨橋』(島田荘司)『女たちのジハード』(篠田節子)を読了。 前者は久々の島荘、後者は直木賞受賞作である。 いわゆるモダンホラー作家とされる篠田節子だが、これは働く現代女性が男性優位社会の中で人生を切り開いていく姿を描いた作品である。 だが、男の側からもいろいろと考えさせられる。 仕事と結婚。 どちらも大切な問題であるが、男女の立場が違うと見えることも考えることも違ってくる。 いや、個人的なレベルでもバラバラなのだから男女で切り分けられることでもない。 重要なことはどれだけ真剣かということ。 そして自分で切り開くことを考え、行動に移せるかどうかということ。
 2週間ほどに聞いた講演で、子供の頃にどんな環境で育ったかが知らないうちにその人の性格を決めるという話が思い出された。 具体例として、幼児が何か欲しいものがあるときに泣いて親に訴えるときの話があった。 泣けば欲しがっているものを与えてやるというのが基本姿勢だとして、日本の親は泣くより前にきっとこれが欲しいんだろうと先回りしてあてがってあげるという。 本当かどうかはわからないが、要するに過保護ということがいいたいのだろう。 しかし、アメリカでは泣いてこれが欲しいのかと親が思っても目の前に見せるだけで、子供が欲しいという意思表示をするまでは与えないという。 この違いが、大人になった時に大きな差になって現れるというのだ。 5年前の阪神大震災のとき、被害にあった人たちは政府が、行政が助けてくれるものと思って待つ姿勢を見せた。 そしてその対応が遅いといって怒りをぶつけた。 自ら動いて状況を打破しようとする人を凄いと位置づけた。 アメリカ人はそうじゃないという。 自分から道を切り開くのが当たり前なのだと。 そんなに類型的に分けられるものかどうか疑問もあるが、国民性の違いという点では一理ある。 国際化が進むとされる中、日本人に欠けているのはこの姿勢なのかもしれない。
 ともあれ、人生について真剣に悩みじっくり考える時間というのをちゃんと持つことがまずはスタートである。 忙しい忙しいで振り回されている場合ではないのだ。


3月18日(土)

 Jリーグはどこのファンというわけでもないが、福西のゴールは嬉しい。

 昨日は卒業式。 思うことはいろいろあるが、年々学生たちがドライになっていくというのが一番感じたことだった。 逆にこちらはウェットになっているような気さえする。 これは年齢ということなのだろうか。 まあ、あんまりウェットになられても困るのだが……。 そのドライさというのは式の後に学生たちが開いてくれる謝恩会の席で特に実感した。 具体的に書くことはしないが、いいことなのかそうではないのか、あるいはそういう問題ではなくこちらの感傷にすぎないのか、ともあれギャップがあるのだった。 この隙間をそんなものだと割り切るべきなのか、こちらから近づいて埋めていくべきなのか、そもそも埋まるものなのか。 何だか妙なことを考えていてあまり心地よい酔いに漂えなかった夜だった。

 それにしてもタイガースはなんて試合をやってるんだろう。 星野伸は打たれるし、相変わらず守備は乱れるし、坪井は3安打したけれど残塁は多いし……。 その上、今岡と山田は二軍落ち。 ここまで3勝10敗で最下位独走中。 野村監督の発言も「こんなもの」みたいな諦めムードのものが多い。 いやほんまにたのみまっせ。

 『奇跡の人』(真保裕一)を読了し、久々に魅館箱に感想を書く。 この連休はしっかり休みをとるのできっと読書も進むことだろう。


3月16日(木)

 昨日は職場の送別会、明日は卒業式と謝恩会。

 忙しいという字は心を亡くすと書く。 まさにその通りでここ半月ばかりはいろんなことに心を奪われて落ち着きのない日々を送ってきた。 何かが一段落ついたと思ったら別の仕事が待っている。 いくつもの雑用が平行してやってくる。 朝も昼も夜もなく、食事と風呂と睡眠のとき以外は、いやそんな時間でさえ何かに気を取られている。 年度末の忙しさに加えて、職場を引っ越して新しい環境がまだなんとなくしっくりこないというのもあるだろう。 原因は何にせよ、心をどこかに置き忘れたような状態からは早く脱却したいものだ。
 ああ、なんだか一昨日の日記と同じようなことを書いているじゃないか……。

 久しぶりに今日の会話。
 「春休みどっかに遊びに行きたいねぇ」
 「遊園地でパーっと発散したいんよね」
 「あんまり激しいのは苦手なんやけど」
 「レオマワールドなんかどう。 近いし、おとなしい乗り物ばっかりやで」
 「あそこはさすがに子供向け過ぎておもしろくないわ」
 「四国の異国なんやけどなあ」
 「え、それってレオマのキャッチフレーズ? 凄すぎ」
 「そんなんで驚いとったらあかんで。 レオマの由来は突拍子もないんやから」
 「そもそもレオマって何語なん。 英語というよりは、ラテン系の言葉っぽいんやけど」
 「なめとったらあかんでぇ。 実は生粋の日本語なんよ」
 「レはレモンのレ、みたいなん?」
 「そうそう」
 「そしたら、レはレモンとして……」
 「レモンは変やろ」
 「今、そうそうっていうたくせに。 まあええわ、レはレジャーかな」
 「最初からそう言えよ」
 「ふん、そうはいかん。 それで、オはオブにしといたらなんとかなりそうやから、マが何かが問題やな」
 「レジャー・オブ・マ……なんとかってか」
 「マジックでもないし、マウンテンというわけでもないし、マーケットもおかしい」
 「そやから日本語やっていうてるやん」
 「あ、そうか。 じゃあ、松山」
 「それは隣の県や!」
 「マダガスカルか」
 「もっと離れたがな! 大体、レジャー・オブ・マダガスカルって何があるねん」
 「幻のうどん屋?」
 「なんぼ讃岐でもそれはないやろ」
 「あかん、これ以上ボケれん」
 「誰がボケぇいうた。 しゃあない、正解を教えたろ。 その名も「レジャーは俺にまかせろ!」や」
 「はあ、マジで? 誰やねん、俺って」
 「そらそこの社長やろ」
 「社長、センス悪すぎ。 ほな、倉敷チボリ公園は「ちっちゃい僕のリクリエーション」なんか?」
 「意味がわからん」
 「パルケ・エスパーニャは「パパとルンルン、けっぱろう」になるやろ」
 「どこの言葉やねん。 でも、ほんまはディズニーランドへ行きたいんよねぇ」
 「「うちのお父さんは留守番でトホホ」なわけや」
 「ウオルトかい?」
 「そう、家を出ずにぃ」


3月14日(火)

 久しぶりだけれど、ネタはない。

 約1週間ぶりの日記である。 週記じゃないか。 終期の予感っていわれたりして。 それはともかくこの1週間何をしてすごしていたのだろうか。 引っ越しも最後の段階を迎え、業者にダンボール詰めした荷物をどんどん運んでもらう。 そして荷開け、整理、レイアウト変更、再詰め込み。 その間に会議、テスト採点、会議、宿直、会議、事務処理、会議、学生指導、会議……。 気づくと1日が終わりを告げている。 帰宅すると風呂に入ってちらりと本を眺めたかと思うと泥のように眠る。 こんなに体力なかったっけ、いや、ちょっと気力が落ちてるな、という此の頃であった。
 読んだ本は『海神の晩餐』(若竹七海)『リサイクルビン』(米田淳一)のみ。 見たTV番組もびわ湖毎日と名古屋国際の両マラソンくらい。 あ、「トイ・ストーリー」「蒲生邸事件」はビデオに撮って見たなあ。 買った本は『千里眼』(松岡圭祐)『気まずい二人』(三谷幸喜)。 むうう、何やってんだか。 これから少しモードを変えて春を迎えたい。 そうそう、魅館箱はもう少し待っていただきたい。 必ず復活するのでね。



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