魅 館 果 汁

<00年7月上旬>


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7月10日(月)

 最近おこりっぽいのはカルシウム不足のせいかも、そんなことあるはずないよ、でもその可能性は否定できないなぁ。

 大相撲は名古屋場所が昨日から始まった。 今場所も3横綱4大関という頭でっかちの番付が続くくせに、今年に入ってから横綱大関の優勝がないというお粗末さ。 優勝にからむのは大関を狙う関脇あたりが中心で、それも昇進した途端におとなしくなる。 若貴が元気だった頃までは何とか続いていた満員御礼からもほど遠い。 このままでは大相撲人気の凋落は避けられない。 いや、もう十分落ちているという意見もないではない。 そんな現状を打破するため、日本相撲協会が打ち出した人気回復対策とは?
 横綱大関陣の活躍が少ないのは彼らに怪我が多いからである。 怪我をしないために稽古を積むのはもちろんだが、怪我をした時の対策も十分に練らないといけない。 そこで、幕内力士には個人的に整体師をつけて体調コントロールをまかせる。 もちろん、相撲協会が選び出した整体師であるから、マインドコントロールまでされることはない……と信じよう。
 相撲の醍醐味は体重制限なしの無差別級にある。 若乃花や舞の海が人気を誇ったのも小兵力士が大型力士をなぎ倒す様子が痛快だったからである。 そこで、土俵に質量感知器をつけて、制限体重を越える力士が仕切線につくと自動的に土俵が割れて奈落に落ちるようにする。 小型力士時代の到来である。 あれ、小さい関取だけになったら小能く大を制すにならないのか。
 人気回復には強い横綱、それもライバル関係の二人が必要だ。 大鵬と柏戸、北の湖と輪島、曙と貴乃花、馬場と猪木、星と花形、トムとジェリー、祐子と弥生……。 いずれも一世を風靡したライバルである。 そこで、横綱や大関に昇進する時にはライバルを指名することを義務づける。 すなわち、伝達式での口上の文句に、四字熟語とともにライバル力士を宣言すること、との条項を加えるわけだ。 しかも、指名した相手に負ければその場で負け越し決定とでもすれば、否が応にも燃えるだろう。
 女性は土俵に上がれないといった閉鎖的なイメージが現代に合わないのも、人気が出なくなった理由だろう。 そこで、一気に大相撲を女性力士に開放する。 プロ野球でも水原勇気という例があるくらいだから、なんとかなるだろう。 当然、記念すべき第一戦は森山元官房長官と太田大阪府知事の対戦しかない。
 若者からはとにかく地味だといわれる。 そこで、まわしに凝ってみよう。 化粧まわしではない、取組のときのまわしにである。 電飾、スパンコール、レース編み、ヒョウがら、ひもつき、穴あき、Tバック……。 ハッ、もともとTバックだったっけ。
 閉鎖的なイメージと地味な印象を同時に払拭するために、世界に門戸を開く。 今のような外国人力士歓迎などといった生易しいものではなく、世界各国から異種格闘家を集めてショーアップしたイベントを開催するのである。 名づけて、S1グランプリ。 もちろん、ルールはあくまで相撲なのだけれど。
 しかし、なんといっても問題なのが八百長疑惑である。 だいたい冷静になって考えれば、この厳しい勝負の世界にそう簡単に成立するはずがないのだ。 そんなことは素人が見ていてもわかる。 いくら力自慢だといっても、せいぜいジャガイモの詰まった木箱を運ぶくらい。 キュウリやナスなんて軽いものである。 えっ? そうだよ、八百屋の親父が土俵に上がれるわけがないって話をしているのだよ。 何かおかしい?


7月9日(日)

 夏バテというわけではないが、ボーっと過ごした一日。

 雪印乳業の食中毒事件で黄色ブドウ球菌に続いてセレウス菌が検出された。 また、佐賀県の牛乳メーカーが起こした食中毒でもセレウス菌が見つかったという。 食中毒というと、病原性大腸菌とかサルモネラ菌、ボツリヌス菌が有名だが、いろいろと種類があるようだ。 これから暑い季節に向けて食中毒も増えていくことだし、後学のためにちょっと調べてみた。
 ブドウ球菌は自然界に広く分布し、健康な人の皮膚にも存在する。 それに汚染された手でつくられた食品中で菌がつくりだした毒素が食中毒の原因となる。 この毒素は熱や乾燥にも強いため、一度できてしまうと加熱しても毒性が消えない。 手製のおにぎりやサンドイッチに多いらしい。
 病原性大腸菌は腸炎を引き起こす大腸菌で、赤痢に似た腸管組織侵入性、乳幼児に多い腸管病原性、集団例が多い腸管毒素原性、日本ではほとんどみられない腸管凝集性、人から人への二次感染がある腸管出血性の5種類がある。 強力なベロ毒素をつくりだすO157は出血性である。
 サルモネラ菌も自然界に広く分布し、家畜や犬、猫が保有している。 食肉類はもちろん、最近は卵からの感染が増加している。 また、ペットからの感染も注意が必要とされる。
 ボツリヌス菌は土壌中に存在し、長時間煮沸しても死なずに致死性の高い毒素をつくりだす恐ろしい細菌である。 缶詰や真空パック食品など、酵素の含まれない食品中で繁殖する。
 腸炎ビブリオは海水や海中の泥の中に存在し、夏に集中的に発生する。 熱に弱く、また低温ではほとんど繁殖しない。 魚や貝などの海産物やまな板からの二次感染が多い。
 セレウス菌には下痢型と嘔吐型があり、前者は食肉製品やスープ、後者は米飯が感染源となる。 熱に強く調理過程ではなかなか死滅しない。 一度つくった焼き飯を次の日に再び調理した場合などが危ないとされる。
 この他にも名前は聞いたことがないが、多くの食中毒菌がある。
 溶解性大腸菌のつくりだすベロ毒素は、オイラへっちゃらだよ、が口癖となる特殊な毒性をもつ。 また、さらに強力で頭がツルツルになるベム毒素やヒステリックに鞭をもって暴れまわるベラ毒素をつくることもある。
 サルマネダ菌は、人間界に広く分布し、テレビ、演芸場、ショーパブなどを通じて容易に感染する。 かかるとついつい似ていない物まねをさらけだしてしまうという恥ずかしい中毒症状を引き起こす。
 ボツニナル菌もまた人間界に広く分布し、出版社、オーディション会場、師匠の部屋などで感染する。 持ち込み返却型や締め切り超過型などの種類があるとされる。 サルマネダ菌との複合感染がもっとも悲惨である。
 紫色ブドウ球菌は、不況のワイン果樹園で緊急に給金として9斤のパンとブドウが現物支給されたことに端を発する。 果樹園の経営者はおれは救世主だから感謝されるはずだと思い込んでいたが、雇われ人からそれはブドウ酒やろとツッコまれて、今ひそかに復活の日を待っている。 あれ、食中毒はどこへ行った?

 映画「M:i-2(ミッションインポッシブル2)」を見た。 トム・クルーズのかっこよさを引き立てるためにすべてが演出されているような映画だった。 でも、一番よかったのはヒロイン ナイア・ホール役のサンディ・ニュートン。 1972年、ザンビア生まれ。 父親はイギリス人、母親はジンバブエの王女。 政治不安からイギリスへ移住し、ダンサーをめざすが、けがのため断念。 91年に映画デビューを果たしたという。 浅黒い肌に流れるような黒髪。 そしてなによりも強い光を放つ大きな瞳が印象的である。 最初のシーンでいっぺんに心を奪われてしまった。 これからの活躍を期待したい。

 昨日、今日で山田正紀のシリーズもの『女囮捜査官C嗅覚』『女囮捜査官D味覚』を続けて読了。


7月7日(金)

 カナダで初めて乗馬に挑戦した藤島親方、馬は可哀想にヒーヒーいってたとか、ヒンヒンいってたとか。

 七夕である。 笹の葉さらさらである。 お星様きらきらである。 織姫と彦星である。 年に一度のデートの日なのである。 陰暦だっちゅう話もあるが……。 なにはともあれ、願い事がかなうのである。 笹竹を飾らないといけないのである。 わがままなパンダにわけあたえている場合ではないのである。
 それにしても、年に一度しか出会えない恋人どうしの逢瀬の日に、どういうわけで星に願いをなどというオプションがついたのだろうか。 わざわざそんな不憫な境遇にある二人にお願いまでするというのは、なんともさもしい根性ではないだろうか。 それとも、そんな二人の出会いを演出したどっかの神におすそわけを願っているのだろうか。 日本は神の国だそうだから、そんな気の利いた神もいたのだろう(また、このネタかい!)。 でも、所詮年一回しか会わせてあげられないような神のことだから、あんまり期待しない方がいいというものである。
 恋人ができますようにという願いをかけても、年一回会えるどころか年数回電話が通じるかどうかという辺境の地に住む言葉も通じない外国人を紹介されるのがオチだろう。 成績がよくなりますようにという願いは、せいぜい一学期の期末試験の国語の漢字の読みがな問題に大好きな十二国記がらみの「黎明」が出題されて3点かせぐのが精一杯。 背が高くなりますようにと願えば、身体測定の日の朝に悪あがきに牛乳を飲もうと覗き込んだ冷蔵庫の縁に頭をぶつけてできたコブの分だけ身長が高めに記録される始末。 空を飛べますようになどという不届きな願いに至っては、どこからともなく「翼をください」のメロディが流れる町並みを歩いていたら暴走車に跳ね飛ばされてフランダースの犬ばりに天使に抱えられて天に召される、という夢を見るくらいで勘弁してほしいわけだ。 いくらビール飲んで、私、誰もしたことがないことがしたいんです、と叫んでもダメなものはダメなのである。

 『パンドラ'S ボックス』(北森 鴻)を読了。


7月6日(木)

 最近のニュースから……。

 金属バットで後輩を殴った岡山の高校生が秋田で見つかった。 約1000kmの自転車による逃亡劇であったという。 報道ではバット殴打少年などと呼ばれている彼だが、外国人からみれば失礼な言い方なのかもしれない。 でも、別所哲也も結局ハムの人で納得されたのだから、仕方ないということにしておこう。

 雪印乳業の食中毒事件で社長が引責辞任した。 バルブが黄色ブドウ球菌で汚染されていたというが、問題はその洗浄作業を本来週1回のペースで行うべきところを3週間に1度しか行っていなかったことにある。 経験則からということだが、発祥の地、北海道での経験を大阪で生かせるとでも勘違いしたんじゃないだろうか。

 大阪で菌といえばセラチア菌。 堺の病院で院内感染により7人が死亡した。 ヒトの腸内などに広く分布する弱毒性の菌ではあるが、手術後の免疫力の低下した患者には死をもたらす可能性があるという。 うちの町内にも普段はおとなしく目立たないのに、祭というと飲んではしゃいで御輿を振り回す世良千秋というおじさんが……。

 三宅島、神津島と地震の続く伊豆諸島に台風3号が接近中である。 明後日には関東地方に上陸するかもしれないということだが、心配なのは地震で地盤の緩んだ各島だろう。 雨降って地固まる、ということわざ通りにはなかなかいかないものだ。 雨降って地下水たまる、なら水不足の地域に朗報かもしれないが。

 今月19日に2000千札、来月1日に新500円硬貨が発行される。 前者は九州沖縄サミットを意識して守礼門をデザインしているとか。 そのサミットは明後日の蔵相会議で事実上幕を開ける。 第2次といいつつ第1次っぽい森内閣が直面する最初にして最大の行事である。 再び失言の人などと呼ばれないようにしっかりしてもらいたいものだ。 またぞろ妙なことを口走って世界のマスコミから突き上げられるくらいなら、日本の風習だといってお中元を手渡してハムの人と呼ばれる方がなんぼかましというものである。 ん? でも、本当はこれもヤバイかも。


7月4日(火)

 いよいよ体験学習にむけて動きだす、もちろん今年も巨大シャボン玉は健在。

 雷が落ちた。 私の仕事場のある建物の2つ隣の校舎にである。 実は昨夜の5時半頃に落ちたらしいのだが、全然気がつかなかった。 今日、出勤して初めて聞いたのだ。 落ちたときには、ドォンという大きな音がして、一瞬、電灯やコンピュータのモニタが消えたらしい。 おかしいなあ、その頃は確かテストの採点をしていたような気がするのだが、まったくわからなかった。 あるいは落雷のショックでその間の記憶がとんでしまったのかもね。 ともかく、みんな驚いたそうだ。 外でテニスをしていた学生たちは、避雷針に向かって走る稲妻を目にして騒いでいたという。 そして次の瞬間に身の危険を感じて屋内に駆け込んだらしい。 賢明な選択である。
 避雷針に落ちたわけだから、その役目をいかんなく発揮していれば屋内の施設は安心なはずだが、事実はさにあらず。 最上階ではコンピュータが2台クラッシュし、その下の階では電話とネットワーク関連がやられ、さらにその下ではハブがいかれた。 あ、もちろん沖縄にしかいないはずの毒蛇が感電死したという話ではない。 上の階ほど被害が大きいようだ。 一部ではエアコンがおかしくなった。 通常の100Vコンセントは大丈夫だったのだが、LANや電話回線、200V電源に関する類に問題が発生したようだ。 ルータやサーバが落ちなかったのが不幸中の幸いか。 よくわからないが、避雷針から地面に電流を逃がすアース線がLAN回線などの近くを通っていて、誘導電流が発生したせいじゃないかというのが同僚の間でのもっぱらの噂である。 LANからやってくる敵はウイルスだけではなかったのだ。 しかし、もしそうだとしたら明らかに設計ミスである。 雷に、ちょっと電圧抑え目にしといて、とは頼めないから、余裕のある設計にしておいてもらわないと。 その建物はこのあたりでは一番高いので、すべての雷を受け入れる可能性もあるしね。
 だが、実は被害を受けたのはその建物にいる人だけではなく、施設係の担当者もなのであった。 その日、ちょうど暑気払いで職場の飲み会に出かけていたのだ。 落雷が5時半頃。 乾杯も終わって、さあ今からというときに携帯で呼び出されたのはいうまでもない。 しかも、電気関係専門の一番若い人だけ……。 雷に、今日は飲み会だから待っといて、と頼みたかっただろうなあ。 ただし、そのときはヘソを担保に取られるかもしれないけど。

 今日の読了本は『彼は残業だったので』(松尾詩朗)


7月3日(月)

 結局、倉木麻衣の「delicious way」を買ってしまった。

 今日の似非会話。 もちろん、フィクションである。 何もかもフィクションだからね。 妙に深読みしないように。
 「ヘアチェックが電話でできるらしいよ」
 「いや、私は大丈夫やから」
 「案外、気づかんうちにヤバクなってたりするんやで」
 「うちの家系は白髪はおっても禿はおらんし」
 「それは父方も母方も?」
 「えっ、母方のじいさんは早くに亡くなったからなあ、どうなんやろ」
 「ほら、心配になってきたやろ。 いっぺん、やってもろたら?」
 「そやなあ。 どんなことされるんやろ」
 「そんなこと電話してみなわからへんやん。 ほらほらっ」
 「しゃあないなあ……」
 ピッポッパッ、トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥル、プッ
 「はい、ヘアチェックセンターです」
 「もしもし、あの、えーと……」
 「心配いりませんよ。 電話ですからどんなことでもお気軽にご相談ください。 決して怪しい団体ではありませんし、逆探知もしていませんよ」
 「あたりまえやん!」
 「その調子です。 一度深呼吸しましょうか。 はいっ」
 「すぅーー、はぁーー」
 「どうです。 落ち着いたでしょう」
 「ええ、少しは」
 「じゃあ、よおく私の言うことを聞いてください。 目を閉じて、肩の力を抜いて、ゆったりした気持ちになってください。 さあ、あなたはだんだん打ち明けたくなる」
 「おまえは催眠術師か!」
 「でも、リラックスできたでしょ。 さあ、何にお悩みですか」
 「べつに悩んでるわけちゃうけど、このままで髪の毛が大丈夫かなと思って」
 「そういうのを悩みっていうんですよ。 じゃあ、こちらから質問しますから答えてくださいね」
 「ああ、髪の毛の状態についてきかれるわけやね」
 「まず第1問。 あなたの住んでいる部屋の広さを教えてください」
 「えっ? 6畳が2部屋の2DKやけど、そんなんに何の意味があるん?」
 「窓はどちらの方角を向いてますか」
 「南向きやけど…… ははーん、生活環境が頭髪に影響するってことか」
 「次に第7問」
 「まだ3問目やろっ!」
 「ちゃんと数えてますねえ。 几帳面な性格ということですね」
 「あらら、これもチェック項目やったんか」
 「最寄りの駅から歩いて何分かかりますか」
 「10分くらい。 あれっ、また質問の意図がわからんようになったぞ」
 「だいたい、状況がわかりました。 で、家賃はいくらですか」
 「共益費込みで○万△千円。 なあ、これって毛髪と何の関係があるの?」
 「なるほど、適正価格よりもちょっと高めに払ってますね」
 「お前、それは部屋チェックちゃうんかい!」
 「あらら、ばれました」
 「真面目にしてくれや」
 「じゃあ、ちょっと見てみましょうか」
 「何をやの?」
 「もちろん頭髪を」
 「どないして?」
 「受話器を髪の毛に当ててみてください」
 「受話器を?」
 「はい」
 「髪の毛に?」
 「もちろんですよ、ヘアチェックなんですから」
 「あ、そうお? ほな……。 もしもぉし、何か見えまっかあ」
 「はい、オッケーです。 大体わかりました」
 「すごいなあ、最近の電話は。 で、どないやった?」
 「非常に危険ですから、絶対にまねをしないでください」
 「へっ、なんのこと? 何が危険なん?」
 「では、結果は後日お知らせしますので」
 「後日って、いつ? いや、それより危険ってなんやの?」
 「ですから、後日、お電話でご連絡します。 では、ごきげんよお」
 ブチッ、ツー、ツー、ツー
 「そやから危険って……。 切れてもうた」
 「どないしたん?」
 「いや、なんかわからんけど、結果を後で連絡してくれるって」
 「結果って何? 目閉じて、受話器を頭に当ててたんと関係するの?」
 「何かわからんけど、ヘアチェックしてくれたんやろ。 そのうち電話がかかってくるからわかるよ」
 「えっ、いつのまに電話番号教えたん?」
 「あれ? おかしいなあ。 さては、逆探知してたな」
 「もう、わけわからんわ」
 「それに危険が迫ってるからモノマネすなって言われたんよ」
 「それって、受話器、頭に乗せてサルみたいなまねしてたんをからかわれたんよ」
 「そんなに変やった?」
 「かなり危険な状態やったねぇ」
 「ものすごいブルーになるわあ……。 あ、抜け毛がっ!」
 「――なるほど、こうやって神経性の脱毛患者を増やしとるわけやね」

 『ターン』(北村薫)『ゴサインタン』(篠田節子)『ナイフ』(重松清)を購入。


7月2日(日)

 EURO2000の決勝がいよいよあと数時間で始まるのだけれど、見れない……。

 究極のミステリMLのオフ会に行ってきた。 単にミステリが好きなだけではなく、ミステリの真髄を追求するミステリ愛に燃えた人たちだけが参加できるMLである。 実際に会うのは初めての人ばかりなので、ものすごい不安とわずかな期待を胸に会場へと向かう。 待ち合わせ場所の私鉄駅改札に集まったのは5人。 先に会場で準備をしている2人を合わせて7人の会となる。 早速、会場に場所を移し、乾杯を合図に開会する。
 「今日の幹事を務めさせていただきます、MLの第28代管理人のRです。 まずは、順番に自己紹介などを」
 「はじめまして、銀田一です」
 「あの横溝フリークの?」
 「違いますよ、金田一フリークです。 私は金田一耕助もの以外の横溝作品は認めてませんから」
 「そういえば『蝶々殺人事件』はお好きじゃないんでしたね」
 「ええ、もちろんです。 ところであなたは?」
 「私は密室卿です」
 「ああ、清涼院流水がデビューしてHNを変更された方ですよね」
 「このMLってそんな前からあるんですか? あ、紹介が遅れました。 私、最近入会したキャプテン・シャーロックです」
 「海外ミステリ専門のシャーロックさんですね。 そうです。 パソ通時代からありましたからねぇ、意外と歴史は長いんですよ」
 「その頃はMiss執事と名乗ってました」
 「ほう、昔から密室トリックに興味があったんですね」
 「それに暗号と性別誤認トリックにもね」
 「えーと、威龍光です。 よろしくお願いします」
 「あんまりMLに投稿されてませんよね。 どんなミステリがお好きなんですか」
 「えっ、まあ、それはおいおいお話するということで」
 「ゆう子です。 ひとりだけの女性なんですが、お手柔らかに」
 「今回のオフ会の会場予約や準備をほとんどひとりでやってくださったんですよ。 この場を借りてお礼をいいたいと思います。 そして最後は」
 「……士郎です」
 「はいはい、時々ものすごく攻撃的な投稿をされる方ですね。 でも、一本筋が通ってるから爽快ですらありますよ」
 「その後、決まったようにゆう子さんのフォローが入るんですよね」
 「これがきっかけでお二人はネット恋愛の上、結婚までされたんですから、わからないものです」
 「あら、Rさん。 それは言わない約束じゃなかったですか」
 「まあ、いいじゃないですか。 それよりさっきの話の続きですけど、威龍光さん」
 「は、はい? 何ですか、密室卿さん」
 「銀田一さんは『蝶々』を認めないとおっしゃってるんですけど、どう思いますか」
 「え、なんで私に?」
 「だって、シャーロックさんは海外専門だし……。 それとも読んだことないんですか」
 「いや読んでますよ、もちろん」
 「ですよね。 海外専門の私は読んだことないけど、有名だから何人かの友人に勧められたことがありますよ」
 「とにかく、私は『蝶々』だけじゃなくて金田一の出てこないのは許せないんです」
 「……偏狭だなあ」
 「え、今なにかいいました?」
 「どうも最近、こだわりと偏狭とを勘違いしている輩が多いんだよなあ」
 「士郎さん!」
 「何が言いたいんです」
 「だから、自分の嗜好の本質を理解しないでうわべだけでミステリ作品を判断して批評している奴が増えてるっていうことさ」
 「僕が金田一にこだわって『蝶々』のよさをわかってないっていいたいのか」
 「『蝶々』がいいのか悪いのかなんて関係ないところで勝手に作品の評価を決めてるって言ってるんだ」
 「士郎さん、やめて」
 「なにもそこまで言わなくっても」
 「……シャーロックさんっていったっけ。 あんたも海外専門だなんて自慢そうに言ってないで国内ミステリを読んでみたらどうだい」
 「おい、士郎くん。 もういいだろう」
 「Rさん、こんなことだと至高のミステリMLに勝てないですよ!」
 「至高のミステリ?」
 「Rさん、どういうことですか」
 「実は数あるミステリ系MLの中でもっともミステリを愛し、ミステリに詳しいのはどこかっていうランクがあるんですよ」
 「わたしたちのMLは昔からそのトップを自負してたんですけど、最近、至高のミステリMLというのがうちこそナンバーワンだって言いはじめたんです」
 「今度、遂に究極と至高の対決をすることになって、なんとしても勝利しなければ、と士郎くんに相談したんです」
 「何しろ向こうにはプロの評論家がついているんですよ」
 「それは卑怯じゃないですか」
 「ネット上のことなので匿名性が高くて証拠が挙がらないんですよ。 確信はしてるんですけどね」
 「ところが、どうやら究極の中に至高のスパイがいるという情報が入ってきたんですよ」
 「えっ、まさかこの中に?」
 「士郎さんはそのはずだっていってるんですけど……」
 「なんてことを」
 「いや、みなさんを疑ってすみません。 でも、おかげでスパイがわかりましたよ」
 「誰なんですか?」
 「それは、いっ……グフッ!」
 「どうしたんです、士郎さん」
 「グエッ、ウウウッ!」
 「いかん、毒を盛られたっ!」
 「どうして?」
 「スパイの仕業か?」
 「とにかく救急車を……」
 これが、後にいう「究極vs至高殺人事件」の幕開けだった……。 もちろん、完全なるフィクションなのでね。 それにしても、悲しいかな陳腐だなあ。

 『ウェディング・ドレス』(黒田研二)を読了。


7月1日(土)

 今年も半年過ぎた、ということは20世紀も残すところあと半年ということだ。

 「はい、みなさぁーん。 もうすぐ県知事が視察にいらっしゃいます。 失礼のないようにお出迎えしたいと思いますので、ご協力をお願いしまぁす」
 「なにぃ、今ごろになって何しにくんねん」
 「そやそや。 地震でうちの家が傾いたのはもう3日も前やで」
 「おいこら、町長。 どういうことか説明したりぃな」
 「えー、有感地震も昨夜からほとんどなくなり、安心できる状態になったと……」
 「なんやと、自分が安全やったら、わしらどうでもええんかい」
 「……ということとは関係なく、予算編成の時期を控えてお忙しく時間がなかなか……」
 「県民が危険な目に遭うとんのやから、何をおいてもこなおかしいんちゃうんかい」
 「……とれない中を、そんなことはいうておれんと実はおしのびで一昨日の午後にお見えに……」
 「一昨日はずっと県庁で商工会議所の会長と話をしとったってニュースでいよったぞ」
 「……なりたかったのが、お出かけになる直前に足を痛めてしまわれ、医者に現場行きを止められて……」
 「昨日の朝も日課の散歩はかかさんかったっていう話やけどなあ」
 「……などというデマを野党が流していうから気をつけてくれということで、とにかくもうすぐいらっしゃいますから」
 「ほんまに視察にくるんやろなあ」
 「うちの家もちゃんと見てもろて、災害対策予算を組んでもらわなあかんわ」
 「地割れもできてて危ないし、火山性やからいつまた起こるかわからんし」
 「えー、それでですね。 みなさんのお手元にプリントをお配りしますから、これにしたがってお出迎えしていただきたく思います」
 「なになに、まず町役場に車で乗り付けてくるから役場前の道路に並んで旗をふれ、やと!」
 「知事の車のドアをおつきの人が開けるから、知事が顔を見せた瞬間に万歳三唱をせえ、やて!」
 「そんでもって、町長がタラップの下で待っていて降りてきた知事とかたく握手を交わすって、どんな車に乗ってくんねん」
 「あ、そのタラップというのはミスプリントです。 ちょっとテレビの見過ぎでした」
 「町長、あんた、そんなにあの県知事と仲悪かったんか」
 「この県北部の貧しい町を守りつづけて苦節55年……」
 「あんた年齢なんぼやねん」
 「そんなことええわ。 まず、どこ視察にいくんよ」
 「そら、最初にうちの傾いた家を見てもらわんとなあ」
 「いやいや、まずは遠路のお疲れを癒していただくために昼食会を予定しております」
 「なにのんきなこというとんねん」
 「しかし、腹が減ってはいくさが…」
 「武士はくわねど高楊枝」
 「とにかく、最初の視察先は地割れの起きた地区の麦畑になります」
 「はあ? なんでそんなとこを見る必要があるん」
 「今は収穫も終わって何にも植えてないし、まわり誰も住んでないやん」
 「そんなとこより、傾いた我が家に金を出してほしいぞ」
 「えー、麦は我が町の収入源のひとつであり……」
 「そんなたいしたことないくせに」
 「……その土地の大地主と知事が懇意にされており……」
 「公私混同や。 それにあの辺はひとりの土地やないはずやで」
 「……なにしろ知事みずからそこを最初に視察なされたいと……」
 「なんか隠しとるな」
 「ぎくっ」
 「町長、なにがあったんかいうてみぃ!」
 「いや、その……。 あ、そうそう、地割れで危険な土地を県民の方に管理していただくのは申し訳ないので、県で買い取ろうと暖かいお言葉をかけて下さったわけで」
 「地割れはそこだけやなくて、うちの家の中を縦断してるんやで」
 「そっちの方が大問題やんか。 畑より先に家をみたりぃな」
 「町長、まだ隠し立てするつもりかいな」
 「そ、そんな。 まさか、地割れでできた裂け目の奥の方で温泉が湧いてて、観光名所になる可能性があるなんて、誰にもよう言わんわい」
 「なんやて、温泉が湧いてるやって」
 「そうそう。 名づけて地割れ温泉っていうのはどないや。 町長自らのネーミングなんやけどな、って何で知っとんの!」
 「あんた、今、自分で言うたやん」
 「こわいこわい。 なんぼ通信傍受法が通ったからいうて、これでは迂闊に独り言も言えんわ」
 「でっかい独り言やったなあ」
 「しかし、ばれてしもた。 知事にあわす顔がない」
 「知事なんて関係ないやん。 町おこしするのに妙に口出しされても嫌やし」
 「どうせ、温泉開発調査費を出したるからちょっと県にも潤いを、とかなんとか言われたんやろ。 わしらが協力したるさかい、知事なんかほっとき」
 「そのかわり、温泉がちゃんと出たときの権利はわしらとあんたとで山分けや。 それが嫌やったら、温泉のこと町全体に言いふらしたる」
 「きみら、町長のわしを脅迫する気か。 要求はなんや!」
 「今、全部いうたがな。 さっきからなんかキャラクター違ってきてるし、変やで」
 「もうええわ。 町長ほっといてわしらだけで温泉計画たてよ。 ほなな」
 「なあ、うちの家を直すのもその計画に入れといてや。 何しろ傾いてしもて弱っとるんやから……」

 昨夜、宿直室で『白銀荘の殺人鬼』(彩胡ジュン)を読了。 覆面作家は一体誰と誰だ?



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