魅 館 果 汁

<00年8月上旬>


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8月8日(火)

 北海道から戻ってきたのでざっと、報告しよう。

 4日早朝、貸し切りバスで学校を出発。 松山空港から新千歳までひとっ飛びするとすでに昼前。 短い時間に昼食をとって苫小牧組と別れ、札幌経由で旭川へ向かう。 駅に隣接したホテルに着いたのは3時過ぎ。 私たち陸上部は6日が試合なのでゆっくりするが、明日から始まるバレー部は早速練習に向かう、
 夕食までの間、ちょっと街にでた。 時折小雨のぱらつく空のもと、やけに肌寒い。 あちこちにある電光掲示板の温度計は23℃をさしている。 おいおい、四国と10℃以上ちがうやんか。 前日までは最高気温36、7℃という猛暑が続いていたのだという。 さすがにそれでは北海道まで来た甲斐がないというもの。 きっと私たちを出迎えるために涼しくしてくれたのだろう。 しかし、雨は余計だった。
 夕食は早速名物の旭川ラーメンを食べに出る。 ラーメン村というところがあるらしいが、タクシーで2000円近くかかる場所ということなので諦め、歩いて探す。 雑誌などであたりをつけていた店を目指すが、やはり混んでいる。 9人が入るのは大変だということで、近くに割とすいている店に入った。 こってり系。 ちょっと癖のある匂いが気になる。 チャーシューはボリュームもたっぷりでなかなかいける。 このあとは自由行動。

 5日。 朝、なんと19℃。 どういうこと? ホンマに夏? そんな朝、メンバーは2つに分かれて観光に出掛けた。 1組は列車で美瑛に。 レンタサイクルで北海道らしき景色を堪能したらしい。 もう1組はレンタカーで富良野まで。 ラベンダーは時期を逸していたのが残念だったそうだ。 私はひとり旭川市内の優佳良織工芸館や雪の美術館、アイヌ資料館を訪れる。 特に雪の美術館は地下10メートルほどに零下20℃に保った氷柱の回廊や雪の結晶の顕微鏡写真など、雪国ならではの興味深い世界を楽しめた。
 昼食は迷った末に再びラーメン屋へ。 しかし、今度は行列のできる店で30分待って入った。 うまい。 ボリュームも昨日の店よりたっぷり。 スープもこってりではあるがすっきりしている。 そして腰のしっかりした縮れ麺が違う。 待ってみるもんだ。
 午後2時半に集合し、競技場に出掛けて練習。 午前中の切り上げたチームも多く、残っているのはあまり多くなかった。 もう少し早めに来た方がよかったかとも思ったが、仕方ない。 気になる空模様も練習中はなんとかもってくれた。 その後、代表者会議に出席して夕食。 簡単にミーティングして明日に備えて早めに寝る。

 6日、試合当日。 この日は太陽もでてやや暑かった。 とはいっても最高気温は30℃そこそこ。 試合の方は、四国予選で勝ち上がった400mに2人、800mに1人、そして4×400mリレーに出場する。 ただし、タイムからしてもいずれも決勝に出場できるとは期待していない。 全国大会の雰囲気を味わい、強い選手の練習や走りを間近に見て、これからの参考にするというのが狙いである。
 開会式直後、いきなりリレーの予選である。 直後といっても8時半からの開会式の1時間後、9時半がスタート。 開会式出場も免除してもらってアップをする。 そして、レース。 3組走って、上位2着プラス2チームが決勝進出する。 6チーム走り、2走が一時4位まで挙げたが、結局最下位。 それでもベストタイムを更新。
 続いて400m予選。 リレーから1時間しかあいていないハードスケジュールである。 再び、調整しなおしてレースに挑む。 1組目、予選全員の中で一番タイムの悪い選手が走る。 結果は当然といえば当然のごとく最下位。 しかし、まわりに引っ張られたのか、これまで何度チャレンジしても越えられなかった壁を破ってベストタイムを記録。 2組目、レース次第では決勝に残れるかもしれないとかすかな期待をかける選手である。 ところが、リレーの疲れが残っており、本来なら伸びてくるはずの半分を過ぎたあたりから身体が動かない。 思うような走りができずに、悔しい思いを残してレースを終える。
 そして800m予選。 1年生ながらつかみとった全国の切符。 とにかく何もかもが初めての経験。 緊張もあったろう、フォームも崩れて辛そうだった。 タイムそのものはそれほど悪くなかったが、出来としてはよいとはいえなかった。 だが、走れたこと自体が彼の宝になるだろう。
 これで我が陸上部の全国大会は終わった。 ちょうど昼食時間である。 陸上は個人競技でもありチームスポーツでもある。 しかし、最終判断は個人にまかせる。 というわけで、ここで自由行動に切り替える。 続けて試合を見るもよし、観光に出掛けるもよし。 各自が考えて行動してくれればそれでよいのである。

 最終日、7日。 帰りの飛行機は夕方発なので一日自由行動である。 まず、札幌に移動し、市内観光組と小樽行き組とに分かれる。 私は疲れていたし、札幌も小樽も行ったことがあったので、のんびり市内をぶらつくにとどめる。 ただ、前に来た時に改装中で入れなかった時計台にだけは行くことに。
 それ以外は主に本屋巡りをして過ごす。 大都市に来ると田舎では手に入らない本を探しにまわることが多いのだ。 しかし、あまり大きな書店や古本屋は見つからず、専門書も少なかった。 ミステリではハードカバーがやけに目について、ついつい買ってしまいそうになった。 うう、都会は誘惑が多いぞ。 結局、『亜智一郎の恐慌』(泡坂妻夫)『メドゥサ、鏡をごらん』(井上夢人)『木製の王子』(麻耶雄嵩)を買う。 どれも新刊なので四国で見つからないはずはないのだが、我慢できなかった。 これを買わなかったらきっとハードカバーを手にしていただろう、というのはいいわけか?
 新千歳空港で集合。 バレー部や卓球部などともここで合流。 一路、伊丹空港へ飛ぶ。 ここから貸し切りバスで4時間かけて学校へ戻る。 着いたのは夜中11時20分頃。 ようやく解散である。 合宿所に泊まるもの、家族に迎えてもらうもの、ひとり淋しく帰るものと分かれて散っていった。

 このようなわけで無事4日間を終えた。 なんだかラーメン食べて観光して、ちょっとだけ試合をしたような印象だが、実はその通りである。 違うことといえば、食べたのはラーメンだけじゃなくてカニもシャケもなのでね。 実家にタラバとイクラも送ったし。 北海道に行けば車かバイクで広い大地を突っ走るか、うまいものを食べるかどっちかだもの。 楽しい、でも疲れた4日間であった。

 往路で『崩れる』(貫井徳郎)、復路で『占い師はお昼寝中』(倉知 淳)を読了。


8月3日(木)

 今日のテーマソングはパフィー。

 千葉すずの提訴は棄却されたが、日本スポーツ界、少なくとも水泳界に与えた影響は少なくない。 千葉と日本水泳連盟の会見を聞いていて感じた人も多いと思うが、そこには新旧の世代格差の問題が隠されているのだ。
 「今回の選考で私が落とされた理由がわかりません。 きちんと説明してください」
 「いや、我々は厳正に公平に審査した。 ひとりひとりにその内容を説明する必要は認めない」
 「標準記録を上回ったんですよ」
 「それだけで決まる問題ではない」
 「でも、選考基準をあらかじめ示していなかったじゃないですか」
 「基準に関して君にとやかく言われる筋合いはない」
 「それじゃあ、提訴しますよ」
 「やれるものならやってみればいい。 恥をかくだけだぞ」
 「脅迫するんですか」
 「馬鹿なことを。 悪いことは言わないから、やめておきなさい」
 「懐柔する気ですか」
 「何を言っても無駄なようだ」
 「あなたがたの古い体質が問題だということを明らかにしてみせます」
 「古いのは君の方だろう」
 「そういう意味ではなく考え方が古いと言ってるんです」
 「しかし、いくら自由形だといってもねえ」
 「でも、クロールより速かったんですよ」
 「確かにすごいことだけれども、古式泳法じゃ日本代表にはできんのだよ。 それにしてもなんでクロールに勝っちゃったんだろう……」

 今日の読了本は『防壁』(真保裕一)

 明日から北海道。 もちろん仕事である。 全国高等専門学校体育大会に陸上部を引率するために旭川に向かうのだ。 そういうわけで、しばらく休載。


8月2日(水)

 なぜか最近のテーマ曲はローリングストーンズ。

 昨日と今日は中学生対象の夏季体験学習であった。 9時から12時までの午前の部と1時から4時までの午後の部に分かれ、合計4クールで学科の体験学習をやるのだ。 最初に学科主任から学校の概略説明がなされ、その後、微生物発酵に関する手作りビデオを上映。 微生物の採取から培養、発酵と実際に学生がやったことを録画・編集したものだ。 学校内の土や池の水などを取り、栄養培地に植えて一定温度に保ち、数日後に微生物が繁殖しているのを観察するもの。 牛乳に乳酸菌、大豆に納豆菌、小麦粉に酵母菌を植えてヨーグルトや納豆やパンなどの食品に応用するもの。 これをプロジェクタでスクリーンに映写しながら、学生たちが説明していくわけだ。 これが終わると一旦休憩して5班に分かれ、いろいろな実験を先輩学生と一緒に体験しようというイベントに突入する。

 液体窒素の実験はハズレ知らず。 バナナを凍らせて釘を打つなどというのは定番だと思っていたら、最近の子供たちはあまり知らないらしい。 常温ならよく跳ねるゴムボールも、液体窒素の温度まで冷やして落とすとパリンと割れてしまう。 液体窒素を金属の鍋に入れておくと、空気が冷やされて裏底に液体酸素のしずくができて、ものが燃やせる。 フィルムケースに液体窒素を浸したティッシュを入れてふたをすると、気化・膨張してパンッと音がしてふたが吹っ飛ぶ。 うーん、どれをとっても中学生の心をつかんでしまうのだった。
 ベルヌイの館は謎めいた名前のわりに明るいプレイランドである。 そもそもベルヌイとは空気などが速く流れるとその場所の圧力が小さくなるという法則のこと。 何のことか分かりにくいがそういう難しいことはおいといて、遊び感覚で実感してもらおうとしたわけだ。 9個のドライヤを上向きして3列に並べ、一斉にスイッチを入れる。 その上に風船を投げると、ドライヤの風に風船が捕まってフワフワと浮かぶのだ。 で、1分以内に9個の風船を全部浮かべるのことができるか、というゲーム。 他にも、手製のヨットを浮かべて向かい風でも前に進む実験など、工夫を凝らした面白さを満喫できたようだった。
 指紋を取ろうという実験は、決して鑑識課員になろうというわけではない。 アルミ粉か何かを振りまいて梵天でパタパタやる、テレビでおなじみの方法ではないのだ。 ひとつは、紙に指を押し付けると指先のたんぱく質が付着するので、それをニンヒドリン反応で染色して青い指紋を浮き上がらせようというもの。 もうひとつは、アルミホイルに指を押し付け、その隣に瞬間接着剤をつけてフィルムケースに密封すると指紋が白く現れるという方法。 これは接着剤のシアノアクリレートという成分が水分と反応することを利用している。 現象そのものは面白いので、もうひと工夫してもよかったかな。
 スーパーボールと炎色反応固形燃料の実験ときくと、全然別個のもののように思えるが、どちらも液体から固体をつくるという点では共通している。 スーパーボールの方は洗濯のりに食塩を入れると塩析といって洗濯のりに含まれているポリビニルアルコールが固まりになるので、これを丸めてつくるのだ。 ラテックス製ほどではないが、結構跳ねる。 固形燃料は酢酸カルシウムにエチルアルコールを混ぜるとゲル化して固体になることを利用する。 これに炎色反応を起こす金属塩を加えておくと、火をつけたときに炎に赤や緑の色がつくのだ。
 粉塵爆発と火山というのもあった。 やはり、爆発は化学のロマンである。 これなしで化学科の体験学習は語れない。 自転車の空気入れの先を漏斗につなぎ、そこに小麦粉を詰め込む。 横にアルコールランプをつけておいてそのまわりをビニル袋で覆っておく。 こうして空気入れを押し込むと小麦粉が粉になって飛び散り、それに火がついてボオッと大きな炎が燃え上がるのが粉塵爆発である。 火山とは、砂糖に濃硫酸を加えると爆発的に燃え上がることを利用したもので、火山型に整えたコンクリートの頂上に埋め込んだ空缶から噴火する。 まさに迫力満点だ。

 そして私が担当したシャボン玉ワールド。 決め手はシャボン液。 洗剤と洗濯のりを水で薄めたものだが、この配合が絶妙……というほどのものでもないが、まあ自信作である。
 まずは、弾むシャボン玉。 シャボン玉といえば触れれば壊れる儚いもののように思われるが、乾いた布の上などでは跳ねる……こともあるのだ。 ストローでつくるときにちょっと厚めのシャボン玉にする。 まあ、これが難しいわけだが、そうすると軍手をはめた手でバレーボールの試合ができるかと思えるほど何度も弾むのである。 意外性があってなかなか面白い。
 続いて、浮かぶシャボン玉。 シャボン玉は浮かんで当たり前というのは風に運ばれるからであって、無風状態ではやっぱり落ちてしまう。 しかし、水槽の底にドライアイスをおいて二酸化炭素を充満させておくと、その上にプカプカ浮かぶのである。 もちろん、空気よりも二酸化炭素の方が重いから起こるわけだ。 シャボン玉が水槽の中に浮かんでいる様はなんとも不思議な世界である。
 そしてメインディッシュ、 人が入れるシャボン玉。 正確には人の周囲を覆うシャボン筒。 だって、玉の中に入るためには人が空中浮遊する必要があるもんね。 ドーナッツ状の液溜めにシャボン液を入れて包帯を巻いたフラフープを浸す。 フラフープに結び付けた紐を滑車を利用して真上に引っ張ると、フラフープが持ち上がると同時にその下に円筒状にシャボン膜ができるのである。 その中に人が立っていても大丈夫。 つまり、高さ2m以上もの膜ができるのだ。

 他にも地球環境問題、例えば地球温暖化、酸性雨、環境ホルモンなどについて調べたパネルや普段の実験で作っている様々な色をした物質を展示するなど、アカデミックな部分も見せる。 そんなこんなで1クールが終わると、アンケートを取って終わるわけだ。 っていうか、そうやって4クールを終えて、今はぐったりである。 さすがに疲れた。 手伝ってくれた学生たちも大変だっただろう。 ご苦労様である。 しかし、今度は8月末に今度は小学生を主対象とするイベントが待っている。 そっちも頑張ろう。 でも、その前に一休み、一休み。



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