魅 館 果 汁

<99年11月上旬>


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11月7日(日)

 学園祭二日目は賑やかに幕を閉じた。

 日曜日ではあるが、市内のいくつかの小学校では文化祭をやっているらしくて子供の姿が少ない。 その代わり昨日授業のあった中高生がたくさんやってきた。 内容は昨日と変わらないので、ここで改めて書くこともない。 体験講座には500人ほどが来場。 狭い会場がいっぱいになって、十分楽しませてあげられなかった人もいたのが心残り。

 ところで、今日の「ザ!鉄腕!DASH!!」で巨大シャボン玉に入れるか?という企画が放送された。 実は夏頃にこの番組を制作しているIVSテレビ制作から電話があって、ホームページをみたのだけれどシャボン玉について教えてもらえないか、と尋ねられたのだ。 ポイントは2つ。 身近なものを使って大きなシャボン玉をつくるコツと球形のシャボン玉に人が入る方法のアイデアである。
 大きなシャボン玉は洗剤と洗濯のり、場合によってはグリセリンを水に溶かせばできあがる。 しかし、番組としては面白い素材を使ってみたいので、粘りをだすのに納豆やとろろ芋はどうかと聞かれた。 私の回答は、不純物が多くて難しいだろうというもの。 粘りのもとの多くは砂糖の仲間、多糖類である。 一方、それ以外のものが混ざっていると逆効果になることが多い。 だからそう簡単にはいかないと思ったのだ。 実際、番組では納豆となめこで比較的大きなシャボン玉をつくることに成功したが、杉山兄弟に不純物が多いのでろ過するようアドバイスされていた。 でも、ろ過くらいでうまくいくようになったのなら成功といってもいいだろう。
 球形のシャボン玉に入るというのはさらに困難である。 最大の難関は空中に浮いている時間が短く、動きもあるという点である。 正直言ってこれに関してはno ideaであった。 だから、今日の放送の最大の楽しみがこれだったのだ。 番組を見て、思わず唸った。 ジャンプが難しいことは明らかなので、ワイヤーで吊り下げるというところまでは考えられそうな話だ。 しかし、ワイヤーの部分を切れ目のはいった輪で通すというアイデアは非常に興味深い。 輪に一瞬だけ切れ目ができても、すぐにつながればシャボン玉は割れない。 うーん、これを何かに応用できないだろうか、と考えてしまうのは一種の職業病か。
 それだけ道具立てを揃えても実現するのはまた別問題である。 何回もの失敗に懲りず、最終的に成功させた熱意と執念に対して素直に賞賛を送りたい。


11月6日(土)

 学園祭一日目は静かに幕を開けた。

 今日から二日間、学園祭である。 学生の祭なのだからあまり係わりないはずなのだが、数年前からPRを兼ねて体験講座という催しをするようになった。 お客さんに科学実験などやってもらい、工学を身近に感じてもらおうというわけだ。 しかし、今日は土曜日で午前中は学校の授業があるため出足は鈍かった。 午後から少しずつ人が増え始めたが、本番は明日だろう。 とはいえ、化学屋敷と銘打って手がけている私たちの体験講座には300人近くの入場者があった。 300人と聞いてたいしたことないなと思われるかもしれないが、この田舎で大した宣伝もせずに300人集めるのは大変なことなのだ。
 場所が野外ステージや出店などがある区域から離れているので、ろうけつ染めの垂れ幕や幟を手作りして道案内とする。 シャボン玉自動生産装置(大袈裟な!)で大量のシャボン玉を飛ばしておいて、とりあえず気をひく。 針金でつくった輪をシャボン液に浸して直径80cmはあろうかというシャボン玉を作ってみせる。 もちろん、お客さんの手でもできる。 ひとしきり遊んでもらったら、人が中に入れるシャボン玉というのにご招待。 これで建物の中に誘導すれば、あとは順路を伝っていけば、何でも凍る液体窒素の世界、赤や緑の炎が燃えるロウソク、スライムを作って遊ぼう、ガラス細工でマドラー作りなどなどを体験できるというしくみ。
 担当のシャボン玉は子供たちに大人気。 リピーターも現われる。 シャボン液で濡れて滑りやすい足下が厄介だが、遊びの天才たる子供たちにかかれば関係ない。 一方の調査研究リサイクルはちょっと調べ方に深みがなかったのが残念だが、大人相手だし反響がなかなかないので調べる方にも気合がはいっていなかったようだ。 しかし、リモネンに発泡スチロールを溶かしたり、それを膜状のスチロール樹脂として回収する実験には興味を示してもらえた。
 一日中、立ちっぱなし、動きっぱなしは結構疲れる。 明日は多分500人くらい来るはず。 でも、楽しませてもらおう。

 今日は久しぶりに早く帰ってきたのでゆっくり読書もできる。 『11枚のとらんぷ』(泡坂妻夫)はこの後、寝床で読了する予定。


11月3日(水)

 休日出勤は学園祭の準備なのであった。

 学園祭まであと3日。 担当の巨大シャボン玉はすでにノウハウをマスターしているのでほぼ問題ない。 リサイクルに関する調査研究も基本的にはできあがった。 今日は現在うまくいっていない実験の準備をした。
 リサイクルではSONYが実用化したリモネンを使った発泡スチロールの回収について報告する予定である。 そこで、うちでも実験をしようということになった。 まず、リモネンという液体に発泡スチロールを溶かす。 リモネンというのはミカンなどに含まれる化合物で、いわゆる柑橘系の匂いのもとである。 発泡スチロールはその98%が空気であり、面白いように溶けていく。 ここまでは簡単だが、リサイクルというのだから溶かした発泡スチロールをもう一度取り出さないといけない。 SONYでは240℃に加熱してリモネンを蒸発させているらしい。 そんな高温にするのは結構大変なので、今日は減圧して沸点を下げて80℃くらいで蒸発させる方法と、アルコールを加えて沈殿させる方法を試してみた。 しかし、減圧してもリモネンを蒸発させることはできず、また沈殿もきれいにはとれなかった。 仕方がないので、明日もう少し高温で蒸発できるように工夫する予定である。
 もう一つ、別の班が試している炎色反応ロウソクがうまくいっていない。 リチウムやバリウムなどの金属塩を燃やしてやると、炎の色が赤や緑になるというのが炎色反応である。 それをロウソクでやってみようというのだ。 初めはロウになんとかいろんな金属を混ぜて燃やしてやろうとしたが、すすの輝く黄色が強すぎてほとんど炎色反応の色が見えない。 そこでロウの代わりに脂肪酸やアルコールを用いることを試してみた。 燃えやすい化合物は基本的に金属塩をよく溶かすし炎の色も見えやすいが、ロウソクのように固まらず、固形燃料のように全体が燃えてしまう。 燃えにくいものにするとロウソクらしくはなるが、すすの色が強くなる上に炎が小さくなる。 これを克服するために燃えやすいアルコールと燃えにくい脂肪酸を混ぜてやることにした。 それも互いに溶け合わないので界面活性剤(洗剤の一種)もぶちこんでやる。 炎色反応の材料としてホウ酸を使ったものはなかなか上手くいき、緑の炎はなんとかできそうになった。 しかし、ストロンチウムの橙色やカリウムの紫色は色がわかりにくいし、バリウムの緑色もうまくいかない。 リチウムの赤色が期待できるのだが、準備が大変なのでまだ実行していない。 今日は、ホウ酸ロウソクを大量に作りあげ、明日から他の色について改良を試してみることにする。
 そんなわけで、あと数日はこれにつきっきりになりそうである。

 昨日『謎物語』(北村 薫)、今日『覆面作家の夢の家』(北村 薫)を読了。 前者は本格ミステリについてのエッセイであり、後者の中にも本格論が語られている。 ちょっと口を出したい気分もあるが、時間がないので覚えていたら後日書いてみたい。



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