99年1月の本のほらあな


「柳生非情剣」1月12日

著者:隆慶一郎、出版社:講談社文庫

戦国時代から江戸初期にかけての柳生一族の著名人を主人公とした短編集です。いわゆる江戸柳生や
尾張柳生の剣の達人たちがそれぞれ視点を変えて描かれてます。やはり撃剣の部分は迫力があって、
一番楽しめます。柳生物は時代小説の題材になることがとても多いけど、これほどさまざまな視点で
描かれた短編集はちょっと珍しいです。剣豪小説の好きな人にはお勧めです。

「山とお化けと自然界」1月12日

著者:西丸震哉、出版社:中公文庫

山の大好きな筆者が山に関するさまざまな楽しみや苦しさなどをおおらかに描いたエッセイです。
3度の飯より山登りが好き、というのがよく伝わってきます。観察力も鋭敏で視点もユニークなの。
でもやっぱりわしが好きなのはお化けの部分です(笑)。リアルでなかなか恐ろしい。摩訶不思議
な能力も持っているのはちょっとうらやましい。わしもほしいな、雨やみの術(笑)。

「死国」1月17日

著者:坂東眞砂子、出版社:角川文庫

見るからに怖そうな題名のオカルトホラー。今度映画化されるくらいだったのでかなり期待したけど
ちょっと期待しすぎました。二十年ぶりに故郷である高知の矢狗村を訪れた比奈子。それは東京の
生活から逃れるためでもあった。偶然あった同窓会の席で幼なじみの莎代理が既に亡くなっているこ
とを知る。そして初恋の人、文也と恋に落ちる。そんな中、周囲で次々と怪異が・・・。四国八十八
ヶ所参りや霊峰石鎚山、古事記なども絡んで物語りはすすんでいきます。あんまり怖くなかったのは
怪異の描写が少なかったせいか?どちらかというと民俗学的興味をそそった作品でした。

「殺す」1月20日

著者:J・G・バラード、訳者:山田順子、出版社:東京創元社

超高級住宅街で突如発生した大量殺人事件と大量誘拐事件。なんと当時地区内にいた32人の大人
全員が殺害され、地区内にいたすべての子供13人が誘拐されたのだ。さまざまな仮説がたてられ
ながらも、事件は迷宮入りかと思われた。そこに登場したのが精神分析医グレヴィル。果たしてこ
の事件にはいかなる秘密が・・・。鬼才バラードの描く現代の闇。すでに映画化も決っているよう
です。映画化された作品で有名なものというと「太陽の帝国」「クラッシュ」などがあげられ、ど
っちも面白かったので楽しみです。ミステリーとしても出来がよかった。ネタバレしても面白さは
それほど落ちないと思われました。主題は現代社会の病にあるので。でも知らないほうがより面白
いでしょう。バラードってこんなに面白かったのか。今まで読んだことなかったけど他のも読みたい。

「御家人斬九郎」1月23日

著者:柴田錬三郎、出版社:新潮文庫

実はTVのシリーズが好きで我慢できず、読んじゃいました。設定はほとんど同じですが、一応説明
します。時は天保、由緒正しい家柄ながら今は最下級の御家人松平家の末っ子斬九郎。ともに住む母
麻佐女は79歳ながら人並みはずれた大食にして美食家で、小鼓と薙刀の達人。最下級の御家人は三
十俵二人扶持と決っているが、それじゃあとても飯が食えないので副業にかたてわざと称する表沙汰
に出来ない罪人の介錯をやっている。さいわいどこで習ったのか、斬九郎は剣の達人であった。そし
また舞い込んでくる依頼には奇妙な事件が絡んでいることも多いのだった。。。カッコイイっす。無頼
の徒ともいえる斬九郎と母のやりとりも面白い。斬九郎の剣の腕の冴えも痛快至極。短編集なので
時代劇嫌いの人も楽しめるかも???

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