99年2月の本のほらあな


「真夜中のサヴァナ」上・下2月14日

著者:ジョン・ベレント、訳者:真野昭裕、出版社:早川書房

事実は小説より奇なり、とはこの本のためにあるのではないかと思わせるほど面白かった。200年
以上前からアメリカ南部に存在する古都サヴァナ。フランスの新聞ル・モンドは「北米で最も美しい
都市」と称した。ニューヨーク在住の作者はその古都にひかれ、1年の半分以上をそこで暮らすよう
になる。そこに住む妖しい人たち。オカマの黒人、豪邸に住む古物商、不渡小切手を乱発するピアニ
スト兼弁護士、毒薬を隠し持つ男、ヴードゥーの魔術を使う女呪術師などなど枚挙にいとまがない。
その登場人物の1人がなんと殺人事件を起こしてしまう。しかもさまざまな疑惑を呼ぶ殺人事件だった。
果たしてその事件の行方は・・・。こんなにユニークが都市がアメリカに存在するとは思いませんでした。
しかも18世紀、19世紀の美しい建造物が保存されているとは一度行ってみたくなります。しかし
現実って下手な小説よりよく出来てるもんだなー、と感心してしまいました。実在の人物が登場して
るのでもちろん多少脚色はしてありますが、著者の技量も素晴らしい。さくさく読めます。

「玩具修理者」2月14日

著者:小林泰三、出版社:角川書店

これはまったくわしの好きなたぐいの本です。2編の作品が含まれてますが、どっちも面白い。1つは
表題作「玩具修理者」。子供の頃に出会ったなんでも直してくれる玩具修理者。壊れた人形から死んだ
人間まで・・・。もう1つは「酔歩する男」。夜中にいったバーで不思議な男に出会う。その男は自分の親
友だともいうがそうでないとも言う。どうにも気になって彼の話を聞くことになった・・・。玩具・・・の方
どうもクトゥルー神話の影響をうかがわせるような呪文ともうめき声ともつかないような言葉が出てき
たりしてマニア心?をくすぐる。描写はなかなかえぐいっす。酔歩・・・の方はちょっとSFちっくな理屈
が登場。読者は迷宮の世界に迷い込むこと間違いなし。そういや「魔法の猫」というアンソロジーにも
「シュレディンガーの猫」ってあったな。

「肉食屋敷」2月15日

著者:小林泰三、出版社:角川書店

小林泰三氏を続けて読んだが、これもなかなか強烈でしかも面白かった。エグエグなのもいいっす。
この本も短編集。それぞれ違うタ4つの話が詰まっています。表題作「肉食屋敷」は文字通り、肉食
屋敷と化した研究所のお話、「ジャンク」は西部劇風ゾンビの話、「妻への三通の告白」は現在から
過去へと溯っていく妻への一途な愛の手紙の話、「獣の記憶」は自分の中のもう一つの人格に脅える
お話・・・。どれもよく出来た話でそれぞれ違ったタイプの恐怖を味合わせてくれます。わしの一番のお
気に入りは最後の「獣の記憶」。信じられないほど汚い部屋に住むおかしな男の話なんですが、ホラー
であると同時によく出来たミステリーだとも感じました。描写の気持ち悪さはなかなか迫力があります。

「御手洗潔のメロディ」2月15日

著者:島田荘司、出版社:講談社

もう随分久しぶりの御手洗潔シリーズです。短編とはいえそこそこ堪能することが出来ました。
やっぱり一番最初の「IgE」というのが一番面白かった。やっぱりこのコンビじゃないとね。
それにしても御手洗ものの長編でないかな?当然ながらこの本は御手洗ものの最初から読んだほ
うがより面白いでしょう。シリーズを読んでる人はそれなりに面白いはず。キャラクターにどれ
くらい思い入れがあるかによっても違うと思うけどわしは大好きでした。

「すべてがFになる」2月19日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

この人噂しか知らなくてはじめて読んだけど、かなりわし好みで面白かったです。孤島の研究施設
で外界との交流を絶っていた天才工学博士、麻賀田四季。その島を訪れた犀川創平と西之園萌絵。
しかしそこで密室殺人事件は起きる。もうもう完全に本格ミステリです。こういうの読んだのはず
いぶん久しぶりの気がする。コンピュータがこれほど題材に使われているフィクションを読むのは
もしかすると初めてか?なかなか楽しめました。キャラクターで気に入ったのはいまんとこ目立っ
てないけど国枝桃子と儀同世津子。犀川創平もなかなかです。萌絵はちょっとわしは(^^;。でも
一番気になったのは全然関係ないけどたった一言出てくるねぷた祭り。ねぷたとねぶたどっちが正
解?それともどっちも正解でただの地域差なのか?他にぱ行が使われてる日本語ってあるの?

「冷たい密室と博士たち」2月22日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

2冊目にしてすっかりこのシリーズにはまりました。わしはやっぱり犀川ファンです。今回はこの
犀川助教授の同僚の喜多助教授に研究所に誘われたことから事件は始まります。そこはN大学から
は離れたところにありました。当然のことながら予定通り、その研究所で密室殺人事件が・・・。犀川
西之園のコンビはいかにこの事件を解くのか?ま、謎を解くのは犀川助教授ではありますが、それ
よりもキャラクターの面白さで読んでしまいました。やっぱり浮世ばなれした犀川助教授がいいす。
今回は舞台が大学というだけあって教授連中のわけのわからない単語が快感でした?知らないことが
いっぱいある世の中って楽しいなー。でももし若くても工学部には入らないな(^^;。

「笑わない数学者」2月22日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

シリーズ3冊目。舞台は三ツ星館。ときはクリスマス。その館は天才数学者、天王寺翔蔵が
住んでいる。そこに招待された犀川と西之園。その館には霧に覆われた館の庭にあるブロン
ズのオリオン像が消える謎があった。犀川と西之園の招待された夜、またしても像が消える。
さらにまたしてもそこで起こった密室殺人事件。消えた像と密室殺人。二つの謎が交錯する。
残念ながらこのネタはすぐに分かってしまったので謎解きよりも事件の展開と登場人物を楽
しみました。ミステリファンならたぶんすぐに分かるネタです。謎解きを楽しみたい人には
不向きかも。わしはそれ以上にキャラを楽しんでるから我慢できたけど。森さん、わしが本格
ミステリファンでなくてよかったね(^^;。基本的には謎解きはしないでただただ驚かされ
るのを楽しむのですがね。分かった理由はわしの読んだ数少ない別のミステリに同じネタがあ
ったからです。もちろんその作品がなにかは内緒です。でも似てただけで同じじゃないっす。
たぶん・・・(うろ覚え)

「詩的私的ジャック」2月23日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

シリーズ4冊目。舞台は私立S女子大と犀川、西之園の通う国立N大学。そこを舞台に起こる
謎の連続殺人事件。例によって密室で起こった事件であるが、その密室はどことなく奇妙であった。
西之園萌絵のキャラが微妙に変わってきました。というか彼女と犀川の距離が変わりつつある
の方が正しいのかな?事件は段々楽しめなくなりつつありますが、なぜか飽きずに読んでます。
事件に飽きてきたのはたぶんあんまり驚かなくなったから。続けて読んでるせいもあるのかな?
飽きずに読めているのはキャラクターの展開を楽しみにしてるせいもあると思います。あんまり
気を持たせないですっきりしてほしいと思う今日このごろ(笑)。それともあっと驚く事件でも
起きないかな?このままじゃあやばいぜ。といいながら当分は読みつづけるでしょう(^^;。
森さん、安心してこのシリーズ書き続けてください。でも手を抜かないでね(エラソーに(^^;)。

たぶん・・・(うろ覚え)

「封印再度」2月24日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

シリーズ5冊目。名古屋が舞台の作品だということにはっきり気がついた作品と申しましょうか。
はじめて名古屋弁らしき言葉が出てきました。愛知にいる従兄弟のことを思い出してしまった。話
は犀川の妹でパズル好きの儀同世津子が出てくるところから始まります。彼女のメールフレンドの
漫画家、香山マリモの実家に古くから「天地の瓢」と「無我の匣」があり、天地の瓢という壷に無我
の匣の鍵が入ってるというのです。しかも鍵は壷の口よりも小さく取り出せない。萌絵はさっそく
香山マリモの実家に向かう。それからしばらく後、その屋敷で謎の密室事件が。この謎に挑む犀川
と萌絵。事件とは関係ないけど萌絵が犀川を驚かして思わぬ方向に展開した事態は子供染みている
けど笑えました。まじめな顔した萌絵の執事の諏訪野や国枝助手がなかなかいい味出してます。

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