99年3月の本のほらあな


「夏のレプリカ」3月4日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

萌絵の親友、簑沢杜萌が実家に戻った時、家族は誰もいなかった。そこにあらわれた仮面の誘拐者。
家族も誘拐されていたのだ。その事件はまもなく解決する。しかし誘拐者二人が殺される。その死に
は不審な疑惑が。しかもいるはずの詩人の兄が消えていた。今回の事件に犀川と萌絵はあまり登場し
ません。もちろんクライマックスの肝腎な部分には登場するけど。違う形式を試みているけど面白さ
はちょっと以前の作品より落ちます。やっぱりお馴染みのキャラクターがもっと出てくれないとつま
らない。すでにストーリーよりレギュラーキャラのやり取りを楽しんでます(^^;。

「今はもうない」3月4日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

これまた新たな設定によって描かれた作品。一応犀川と萌絵のコンビが登場しますが、この作品では
主人公とは言えないかも?ある夏の嵐の夜、西之園家の別荘で起きた密室殺人。双子の姉妹が別々の
密室で死んでいたのだ。果たしてこの事件の行方は?これはちょっと内容を書くとネタバレしそうな
のでこれ以上は書けないけど、犀川と萌絵がほとんど登場しない割りにはよかった。ちょっと以前の
作品とは違う展開も見えたし。ま、シリーズ全体から見れば番外編という感じかな。作者もそろそろ
読者が飽きてきたのを感じたのか、それとも最初からそういう展開の予定だったのか。しかしわしも
そろそろ飽きつつある(^^;。シリーズはあと2冊。最後まで読めるのか?大丈夫か?>わし

「数奇にして模型」3月8日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

M工業大学校内の研究室で起こった女子大学院生の密室殺人事件。時をほぼ同じくして
模型展示会で起こった密室殺人。モデルの首なし死体が発見されたのだ。その現場に
倒れていた寺林高司が両方の事件の容疑者となる。いつものことながら犀川、萌絵の二人
がこの謎に挑む。わしはなかなか面白かったです。大御坊安朋、反町愛など新たなキャラ
も増えて、シリーズはこれから面白くなりそうだと言うのに次の作品でおしまいとは・・・。

「有限と微少のパン」3月8日

著者:森博嗣、出版社:講談社ノベルズ

犀川&萌絵のシリーズ最終作。第1作目に登場した天才プログラマ真賀田四季が再登場する。
ゼミ旅行で訪れた長崎のテーマパーク。そのテーマパークはソフト会社「ナノクラフト」が経営
していた。実は萌絵はナノクラフトの社長の塙理生哉の親同士が決めた許嫁だった。そこで過
去に起こった「シードラゴン事件」の話を聞く萌絵。謎の死体消失があったらしいのだ。その
後、彼女たちの到着を待っていたかのように事件が続発する。ナノクラフトの背後に見え隠れ
する真賀田四季。果たして事件は彼女の演出によるものなのか?わしはこの作品、悪くないと
思う。むしろシリーズの中でも面白い方の部類かも。このシリーズが終わってしまうのは返す
返すも残念だ。それにあまりにも中途半端なシリーズ終了のような気がする。反町愛も気に入
ってきたし、国枝桃子助手が年末の挨拶をしてしまうというエピソードがあっていよいよキャラ
の動向が気になると言うのに。真賀田四季もちょっと気に入ったのになー。ちぇっ(^^;。

「人獣細工」3月10日

著者:小林泰三、出版社:角川書店

やっと森博嗣から開放?されました(笑)。小林泰三は3冊目。これも短編集。相変わらず
おぞましい(笑)。この作品は3編で構成されている。表題作の「人獣細工」は物心ついた
頃から医者であり研究者でもある父からブタ(文字が発見できず)の器官を移植された女性
の話。2話目は「吸血狩り」。夏休み、祖父母の家で従姉弟と遊ぶ少年。昔よく遊んだ従姉
はもうあまり遊んでくれない。その原因に1人の黒ずくめの大男の存在が・・・。そのこと
を知った少年は・・・。3話目は「本」。突然小学校時代の同級生から本が届く。芸術論と
称したその本は奇妙だった。調べたところ他の同級生にも届いているらしい。しかも同級生
たちが次々と失踪したり、死んだり、狂ったりしていた。その本はいったい・・・。今回も
堪能しました。どろどろとした昔の探偵小説を思い起こしそうな描写や多くの知識、狂って
いるような幻想的な感覚がいい。この人の作品にはハズレがないのでしょうか?嬉しいけど(^^;。

「密室・殺人」3月10日

著者:小林泰三、出版社:角川書店

初の長編ということだけどなかなか面白かった。四理川探偵事務所に勤める四ッ谷礼子の元に
息子の嫁殺害容疑を晴らしてほしい、と母親から依頼が。どうやら四理川探偵の知人の谷丸警部
からの紹介らしい。警察が探偵を紹介?変に思ったが、四ッ谷は四理川の指示に従い依頼をひき
うける。現場は雪の中の別荘。しかも密室だった。設定としてはありきたりだけど描写はやっぱ
り彼ならではの気味悪さが出てていい。これもシリーズにしてしまうのだろうか?登場人物が
どことなく気色悪く感じるのは気のせい?(気のせいだな、きっと(^^;)ミステリーとして
はともかく読み物としてはそこそこ面白いです。でも彼のおどろおどろしさはやっぱり短編か?

「死体置場の舞踏会」3月24日

著者:都筑道夫、出版社:光文社文庫

久々に読みました、西連寺剛ものの連作短編。5冊目だとか。過去の作品は全部読んだような
気がするけど定かではない。絶賛するほどではないけど佳品です。いわゆるハードボイルドの
私立探偵物ですが、暴力シーンがまったくない。以前の作品はあったような気がするけど・・・。
5つの作品が入ってます。「海猫千羽」「砂時計」「不等辺三角形」「迷い猫」「いの一番大吉」。
相変わらず登場人物の言葉づかいが、どことなく独特で古風な感じがするけど楽しめました。
ストーリーにもそれぞれの作品に哀歓があるし、何といっても随所に見られるちょっとした博識
さが都筑道夫ファンとしてはたまらないところです。今日本屋に行ったら物部太郎シリーズの
「七十五羽の烏」も復刊されてたのでつい買ってしまいました。一番好きなキャラなのでまた
読んでしまうでしょう。滝沢紅子のシリーズとか雪崩連太郎シリーズとかもまた再開してほしい。

「赤い額縁」3月25日

著者:倉阪鬼一郎、出版社:幻冬社

こ、これは・・・。古典オカルトホラー好きなら絶賛したくなるような逸品と申しましょうか?
わしももちろん絶賛します。オカルトホラーと本格ミステリと幻想小説が合体したような名作と
言っていいでしょう・・・。物語はゲームブックを頼まれた古地留記夫がインターネットで検索
中、偶然にも「THE RED FRAME-THE MOST HORRIBLE TALE IN THE WORLD」(『赤い額縁―世界で
最も怖い話』)という本を発見したところから始まる。彼がホラーゲームブックを作り上げてい
くのと幾つかの話が平行に進むのだが、その中の一つが謎の連続少女誘拐事件。話は複雑に入り
交じる。いったいなにが現実でなにが幻想なのか?押絵旅男という翻訳家だの古典のホラー小説
だの黒魔術の話だの怪しげな話が盛りだくさん。それだけでホラーファンは読む価値あり。一応
ミステリでもあるのでネタは明かせないけど、久々に怖くて面白い小説を読みました。彼の過去
の作品はぜんぜん読んでないけど今後手をつけるのは間違いのない話です。わしとしてはここ半
年に読んだホラーの中ではベスト1に上げたいっす。(つまりこのHPを作ってからベスト1の
ホラー小説ということです。)ちょっとマニアックなところが一般受けしないかもしれないけど。

一つ前に戻ります。


トップへ戻ります。