99年5月の本のほらあな


「不安な童話」5月4日

著者:恩田陸、出版社:祥伝社文庫

恩田陸さんの作品の中ではもっとも本格ミステリに近い作品です。変死した天才画家高槻倫子の
遺作展にいった古橋万由子。生まれる前の作家なのにそこの絵にはすべて見覚えが・・・。その
彼女に高槻倫子の息子から「あなたは母の生まれ変わりだ。」と告げられる。事件の真相に迫る
彼女に奇怪な出来事が襲い掛かる・・・。彼女の作品はどれも独特で恩田ワールドとでもいうべ
きで分類が難しいが、これは本格ミステリに分類出来そうです。わかりやすくて読みやすい佳品です。

「ヴァンパイア・コレクション」5月17日

著者:スティーブン・キング他、ピーターヘイニング編、風間賢二他訳、出版社:角川文庫

今まで読んだ吸血鬼物のアンソロジーの中では一番面白かったです。約150年ほど溯って
さまざまなタイプの吸血鬼物が含まれています。内容は古典的吸血鬼譚、フィルムの中の吸
血鬼たち、現代によみがえる吸血鬼、の3つに別れています。わしの好みとしては古典的な
吸血鬼の話が一番面白かった。もちろんその世界の大御所はドラキュラ。わずかに原作から
漏れてしまったドラキュラ譚も載っています。オカルトファンにも欠かせない逸品といえます。

「クリムゾンの迷宮」5月20日

著者:貴志祐介、出版社:角川文庫

ゲームブックなど今のどきのRPGを小説化したような作品。なかなかわしの好みでした。
突然見たこともない場所で目覚めた藤木芳彦。そこはとても日本とは思えないところだった。
傍らに置いてあった携帯ゲーム機を立ち上げると「火星の迷宮へようこそ。」文字が・・・。
ひさびさに一気に読みました。コンピュータゲームはほとんどやらないし、ゲームブックに
はまったこともないけど、小説としては面白いっすよね。そういえば「赤い額縁」もゲーム
ブックが題材に使われてました。この手の作品って案外面白いかも。でもゲームはしない。
わしのゲームは人生さ。(勘違いしている・・・(^^;)

「ゴースト・ストーリー」上・下5月31日

著者:ピーター・ストラウブ、訳者:若島正、出版社:早川文庫NV

うおおおおっ!なんで今まで読まなかったんだ?と思うほど面白いホラーでした。わしの中では
大ヒットかも。ニューヨーク州の小さな町ミルバーン。その町にチャウダー協会という町の実力
者の集まりがあった。その会員たちは夜な夜な見る悪夢に悩まされていた。その事件の発端は1
年前に溯る。ある女優を招いたパーティで会員の一人が亡くなったのだ。彼らは悩みを解決しよ
うとするが・・・。ホラーのさまざまなパターンが重なり合い、恐怖度が増していきます。これ
を読んでふと感じたことがあります。たいして本読みでもないので一概には言えないけど、現代
の日本の長編と翻訳ものの長編の差は物語の厚みにあるのではないでしょうか?なんだか日本の
大衆小説ってスカスカに感じる作品が多いような気がします。気のせいかも知れんけど(^^;。
特にこの作品にはその深い奥行きを感じたのでした。上下2巻なので本の厚さもあるけど(笑)。

一つ前に戻ります。


トップへ戻ります。